今日は私の誕生日なんですけど、朝起きたらうちの夫が言いました。
「ハッピーバースデー!What a horrible day !(なんてひどい日だ!)」
その通りです。ひどい日です。米国の大統領選挙でドナルド・トランプが勝ちましたね。びっくりしましたよ。まさか米国があの男を選ぶとは思いませんでした。
女性の権利を守るため、民主主義を守るためには、トランプを大統領に選ぶわけには行かないだろうと思いましたけどねえ。米国はどんな国に変わって行くんでしょうか。
まあとにかく、私は米国人でなくて本当に良かったと思いました。気が滅入るのでもう考えないようにします。
そんなことより、我が家の心配事は昨日の記事に書いたうちの夫の叔父さんのことなんですよ。
夫の両親の兄弟姉妹の中で最も若いこの叔父さんが舌がんだったという、しかもすでに進行していて全身のリンパ組織にがんが広がっていると分かったことで家族はショックを受けています。
もっと早く検査を受けていたらと悔やんでも悔やみきれないわけですが、実は叔父さんは医者に相談に行っていたんだそうですよ。
住んでいるペンズハースト(Penshurst)という小さな町には医者などいませんが、車で30分のハミルトン(Hamilton)という町には医者もいるし公立病院もあるんです。
しかし、その病院は診療科目が限られているし、GPと呼ばれる一般開業医は数が少ないので診察を受けるには6〜8週間待ちだそうです。
そこで、毎週仕事でメルボルンに来る叔父さんは、仕事場の近くにある病院の救急外来に行ったんだそうですよ。公立病院の救急外来というのは無料で診てもらえるということもあって、待ち時間がすごいんです。
あまりにも長く待たされるので、診察料が払える人は病院ではなくてGPに診てもらいに行くのが普通です。予約制だから待たされないし、GPの診察料はメディケア(公費で医療費の一部を負担する制度)で何割かカバーされますから。
GPが必要と判断すると専門医に紹介状を書いてもらって診察に行くシステムになっていますが、公立病院の専門医だと何日も待たされるのが普通です。
叔父さんは公立病院の救急外来に行ったわけですけど、何時間も待たされてやっと自分の番が来た時には家に帰るバスに乗る時間だったので、医者には会わずに帰ったんですって。その時診てもらっていたら何ヶ月か早くがんが見つかったはずなんですよ。
私達が叔父さんに会ったのは、それからしばらく経って症状も悪化した頃でした。
一日も早く医者に相談して検査を受けるようにとうちの夫に言われて、結局叔父さんはハミルトンの医者に予約を入れたんです。だから何週間も待たされて、やっと診察を受けたら検査が必要だと言われて、検査を受けるまでさらに待たされたそうです。
検査結果を見た病院の医者がメルボルンの病院の医者に紹介状を書いてくれて、すぐに行けと言ったからすぐに行ったらすぐに診察してもらえたんですって。そして舌がんだという診断を聞き、直ちに歯を6本抜くことになって、もうすぐ放射線治療が始まるんですけど。
がんの切除手術は受けないそうですから、相当進行していたということなんでしょうか。
検査の結果が出てからはすごいスピードでいろんなことが進んでいますけどね、首の腫れが気になり始めてから検査を受けるまでに何ヶ月もかかっているのですよ。
医者に相談に行くのを先伸ばしにしていた叔父さん自身に責任がありますが、オーストラリアの地方に住んでいると医療事情がこれほど悪いということに私は驚きました。
公的医療サービスの格差が大き過ぎると政府を批判する人も多いんですけどね、人口密度を比べてみれば分かるでしょうが、メルボルン都市部と同じレベルの公的医療サービスを期待する方が間違っていると思います。
叔父さんが住んでいるヴィクトリア州西南部の中心の町であるハミルトンにしても人口は1万人ほどです。ここにメルボルンと同じレベルの総合病院を経営することは無理な話ですし、医師不足は地方の小さな町ではよくある話です。
どこに住むかは選択の問題だと思うんですよ。私はこれまで度々救急車のお世話になって来ましたし、うちの夫は目が見えなくなって来ていますし、私はしょっちゅう目がまわります。
老後のことを考えると、やはり交通の便が良くて生活必需品の買い物に便利で、良い病院がある所に住みたいと思います。叔父さんのように、大きな家を買って自分が欲しい暮らしを手に入れてもね、医者もいないあんな不便なところには住めません。
叔父さんはメルボルンの病院で治療を受けるので、片道6時間の家から通うことは出来ませんし、飼っている2匹の犬をどうするかという問題もあって、今は6週間の放射線治療中のことが問題になっているそうです。
叔父さん夫婦は、突然いろいろな大きな問題に直面しています。