日本ではあまり話題になっていないみたいですが、本木雅弘さん、Kōkiさん、中村雅俊さん、奈良橋陽子さんといった日本の俳優さんが出演されているアイスランド映画「Touch」(タッチ)を昨日観に行きました。
若い頃に日本人女性と恋に落ちたアイスランド人男性の話です。私は原作となる本を読んでいました。一人で観に行くつもりでしたけど、うちの夫を誘ったら夫も一緒に行くと言うので、久しぶりに二人で行ったんです。
1960年代のロンドンが舞台です。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で学ぶアイスランド人学生のクリストファー(Kristófer)は、左寄りの思想のために学校当局と対立することになります。
大学を中退すると言って友人達にからかわれたクリストファーは、偶然に通りかかった日本食レストランの皿洗いの求人に衝動的に応募するんですけど、そのレストランを経営している高橋さんという人を演じるのが本木雅弘さんです。
クリストファーは、Kōkiさん演じる高橋さんの娘ミコと恋に落ちるんですが、ある事情で高橋さんとミコは突然姿を消すのです。原作の本ではクリストファーはミコを探しますが、そこは映画では描かれていません。
初めて真剣に愛した女性が突然いなくなって、クリストファーには大きな消失感と悲しみが残されました。その後アイスランドでレストランを経営するようになり、アイスランド人女性と結婚しましたが、ミコのことを忘れることが出来なかったのは明らかです。
70代になったクリストファーは妻に先立たれて一人暮らしになっています。物忘れや今まで出来ていたことが出来なくなるなど認知症の症状が出ています。診察を受けた医者は、クリストファーに時間と能力があるうちに未解決の問題を解決するようにと提案します。
クリストファーにとって未解決の問題というのは、理由も分からずに突然いなくなったミコのことです。
ちょうどその頃、世界は新型コロナのパンデミックで混乱に陥っていました。レストランをたたんだクリストファーは、自分に残された時間が長くないことを知っています。
そこで、ミコに何が起きたのかを知ろうとロンドンへ行くことを決意するのです。そして日本へと旅をすることになるのです。
切ない物語なんですよ。出演する俳優さん達は皆さん素晴らしかったですけど、ミコを演じるKōkiさんはとても魅力的でした。
外国人監督の外国映画に日本語を話す日本人が登場する時には、日本語のセリフが不自然でヘンテコということがよくありますが、この映画は許容範囲というところでした。
私は観ていて何度も涙が出ました。救いのあるエンディングですが、ハッピーエンドではありません。クリストファーはこれからさらに記憶を失くして行くんだと知っていますしね。
二人は幸せな人生を一緒に生きることも出来たのに、そうはならなかったわけです。歳を取って自分の人生をふり返った時に、後悔することや残念に思うことは誰にでもあるでしょう。
とても切ない物語でしたけど、しみじみと心に響く映画でした。
懐かしい日本の風景も出て来ましたしね、日本語を勉強する若いクリストファーには自分の姿を重ねたかもしれないし、うちの夫もきっと心を動かされたに違いないと思って感想を聞きましたらね、「うーん…」と言って首をかしげました。
「だって、大して何も出来事が起きなかったし」と言うんですけど、そんなことはないんですよ。若い二人が恋に落ちていく過程は、とても自然で素敵でした。
「そうか、アナタはこういう映画は楽しめないわけね」と言いましたらね、夫はこう言ったんです。
画面が暗くてよく見えなかったから…
映画を観ている間に、夫は何度も身体を前に乗り出していましたが、あれはねえ、映画に引き込まれていたんじゃあなくて画面が暗くて見えないから思わずスクリーンに近づこうとしていたらしいんです。
でも、あの時は映画が見えなかったとは言いませんでした。
ところが、昨日観た映画では、薄暗い室内とか早朝の街とか夜の場面といった暗い場面が多くて、見えなかったと言うんですよ。
見えないほど場面が暗かったとは、私は全く思いません。早朝の街も夜のレストランの店内もとても自然な感じでした。でも、うちの夫には見えなかったんですね。
登場人物がアイスランド語や日本語を話す場面では英語の字幕がつきましたが、それは読めたそうです。文字は読めても画面で何が起きているのかが分からないんじゃあ、映画を楽しめませんよねえ。
近いうちに、映画を観に行くことは出来なくなるでしょう。見えないんじゃあどうしようもないですからね。お気の毒ですがどうしようもありません。まだ見えるうちに見たいものを見ておくしかないです。
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