2026年3月7日

「スターガルト病」の研究に協力へ

先日、うちの夫にメルボルン大学医学部からメールが届いたそうです。夫は、死んだ後に献体することを登録済みなので、その件かと思ったんですが違いました。メールは先天性の黄斑変性「スターガルト病」(Stargardt Disease)を研究しているチームからでした。

うちの夫が「スターガルト病」で目が見えなくなって来ていることは、このブログでも度々話題にしています。

初めてこの病気があることが分かったのは、今から10年前の2016年でした。眼鏡が必要になって視力検査をした時に偶然見つかったんです。その時に撮ってもらった網膜の写真がこれです。


放射線状の細い血管が集まっている大きな黒い丸は、視神経が集まって束になっている部分です。その横に薄っすらと少し小さめの丸が見えます。それが「黄斑」です。

視細胞が密集していて黄色っぽく見えるので「黄斑」と呼ばれるそうです。目の中に入ってきた像が結ぶところで、視野の中心になる部分です。

黄斑周辺が黒ずんで見えていますが、真っ黒いシミのような点々が見えると思います。それが視細胞が完全に死んでしまっている部分です。この時点では視力の異常は自覚していませんでした。

あれから10年、黒い点々は徐々に増えて、それぞれが広がって隣りの黒い点とつながったりしながら大きくなり、現在は下の写真のように全滅に近づいています。


黄斑変性という病気には、加齢が原因のものもありますが、先天性の「スターガルト病」は、特定の遺伝子に変異が起きて発症します。夫の場合は、母親からその変異が遺伝しました。

「スターガルト病」には、現在のところ治療法も進行を遅らせる方法も見つかっていません。病気が見つかった時には、「出来ることは見えなくなる時に備えることだけだ」と言われたんですよ。失明の宣告です。

この病気だと分かった時に、眼科医からメルボルン大学に連絡が行き、うちの夫は大学に依頼されて研究に協力したんですが、今回新たに協力を依頼されて、先日電話でインタビューを受けたそうです。

メルボルン大学の研究チームが、この遺伝子変異のメカニズムを解明して、どういう変異がどのように病気を引き起こすのか、そして病気がどのように進行していくのかを突き止めようとしていると聞いた夫は言いました。

「2016年に病気が分かってから10年間、毎年1回網膜の写真を撮ってもらって来たんですけど、その写真に興味がありますか?」
「え?10年分の写真?あるんですか!」
「あらゆる検査も毎年受けて来たので、そのデータも10年分あります」
「本当ですか!」

研究者は大興奮だったそうですよ!


「スターガルト病」は、患者数の少ない稀な病気です。そして、毎年検査を受けても、患者にとっては何のメリットも無いんです。治療法が無いんですからね。写真を撮ってもらっても、「1年でこのくらい悪くなったんだな」と分かるだけです。

それに、写真も検査も結構な費用がかかりますから、「スターガルト病」の患者で毎年網膜の写真を撮ってもらって検査を受けている人なんて、まずいないと思いますよ。

10年分の写真は夫も私も持っていますが、検査のデータは眼科医が持っていますので、そのデータをメルボルン大学の研究に役立ててもらうことになりました。また、DNAを提供して遺伝子変異の研究にも協力することになったそうです。

研究に協力するための同意書がメルボルン大学から送られて来たので、夫が署名をして送っていましたよ。10年分の写真と検査データが研究の役に立つことになって、夫は大変喜んでいます。いつかこういうことがあるかもしれないと期待してやって来たんだそうですから。

そして、研究によって「スターガルト病」の遺伝子治療が開発されたら、うちの息子や娘にも恩恵があるかもしれません。この病気の遺伝子変異は遺伝するので、もしかしたら息子や娘にも遺伝しているかもしれないからです。


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2026年3月6日

夫の友人の物忘れ問題

一昨日、舌がんの叔父さんが帰った後、うちの夫の友人Cさんが、仕事を終えた後に我が家に立ち寄りました。夫とは同じツールショップに勤めていますが、働いている部署が違います。何かプライベートで相談したいことがあるということでした。

Cさんは、うちの夫にとって最も信頼している大親友と言ってもいい人です。一緒にどこかに遊びに行ったりすることも多いです。先日、マカロニ・ウエスタン映画音楽のコンサートに一緒に行ったのもCさんでした。

2人が話しているのが隣りの部屋にいた私にも聞こえて来ました。

Cさんは、自分の物忘れを自覚していますが、一緒にいることが多いうちの夫に、それが最近ひどくなって来ていると思うかと聞いていました。そして、どうして自分が物忘れをするのか原因を知りたいとか、過去に経験した脳しんとうについて話していました。

うちの夫は、Cさんがいろいろなことを忘れやすいことは、数年前に知り合った時から知っているんだそうです。だから、仕事上のことでもプライベートなことでも、約束した予定や時間やあらゆることをCさんが忘れないように、頻繁にテキストメッセージを送って念押ししているそうなんです。

それを聞いて思い出したのが、「シビル・ウォー」という映画を夫と観に行った時のことです。Cさんも一緒に行ったんですが、観た後で分かったことなんですけど、Cさんは前の週にその映画を観ていたんですよ。パートナーの女性と2人で、同じ映画館に観に行っていたんです。

私達とその映画を観ているうちに思い出したと言うので、夫も私もびっくりしたんです。それはちょっと「物忘れ」というレベルではないと思いました。何かもっと深刻な問題が起きているに違いないから、医者に相談した方がいいと夫には言ったんですけど。

さて、つい先日のことなんですが、Cさんは医者の診察を受けたそうです。物忘れのことではありませんでした。「大腸内視鏡検査」を受けたので、その結果を聞くためでした。胸に電極を貼って心臓をモニターしながらの検査だったらしいです。

医者が検査のことを話し始めましたが、Cさんには何のことを話しているのか分からなかったんですって。自分が大腸内視鏡検査を受けたことを覚えていなかったからです。全く記憶になかったのだそうです。

びっくりしたのは医者ですよ!

どういう理由で大腸内視鏡検査を受けたのかは知りませんが、医者はCさんが別の重大な問題を抱えていることに気が付きました。それで、これまでの物忘れについて質問されたそうなんです。

そして、その物忘れが悪化して来てはいないかとも聞かれたそうなんですが、一人暮らしのCさんにはよく分からないし、いろんなことをすぐに忘れてしまいますから、うちの夫に聞きに来たということなんです。


Cさんは、まだ50歳になっていないはずです。

これから専門医の診察を受けるそうですから、どういう病気なのか分かると思いますけど、Cさんのお父さんは認知症で介護施設に入っておられましたので、自分も認知症ではないかと考えているようです。

うちの夫は、こう言ったそうです。

「認知症だとしても脳しんとうの後遺症だとしても、物忘れは治らないだろう。自分が目が見えなくなって来ているのと同じで、Cさんに出来ることは忘れるという事実に備えて、出来る手立てを講じながら暮らしていくことだけだよ」

世の中、本当に不公平と言うか、思うようにならないと言うか。真面目に生きている善良な人が、しかもとても優秀で才能もあったりする人が、健康に恵まれなかったりしますよね。

Cさんが認知症ではないことを祈ります。


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2026年3月5日

舌がんの叔父さんとパンプキンスープ

昨日は、うちの夫の叔父さんが我が家にやって来ました。舌がんになった叔父さんです。夫の父親の歳の離れた弟で、私よりも2歳上なだけなんですよ。

最初に舌がんだと分かった時のことは、「首の腫れはがんだった」に書きましたけど、診断された時には舌のがんが首やリンパ組織にも広がっていて、心配していたよりも深刻な状態でした。叔父さんは切除手術は受けませんでした。放射線治療と抗がん剤治療だけを受けることになりました。

7週間に渡る治療が終わったのは、昨年のお正月頃でした。話すことが出来なくなり、飲食も不可能でしたから胃ろうになり、やせ細って激しく衰弱した叔父さんを、メルボルンからペンズハースト(Penshurst)という小さな町にある家まで、うちの夫と息子が片道4時間以上かけて送って行きました。

私達は、正直言って、叔父さんはもう長くは生きないだろうと覚悟していたんです。

ところが、「進行した舌がんだった叔父さんの近況」にも書いた通り、叔父さんのがんは消えたんです。治療から3ヶ月後の検査では、がんがあった場所にがんは見つからなかったんですよ。

そして、体力が戻った叔父さんは、バスの洗車&クリーニングの仕事にも復帰したんです。その仕事のために、毎週片道6時間かけてペンズハーストからメルボルンに通う暮らしに戻ったんです。そして、昨日は仕事の合間に我が家まで会いに来てくれたというわけなんです。

一時は体重も戻ったと聞いていたんですが、昨日会った叔父さんは随分痩せていました。最近、再び食べ物を飲み込むのが難しくなっているそうです。お腹に痛みを感じるようにもなっていて、消化が上手く行っていないので、検査を受けることになっているそうです。

お腹のどこかにがんが転移している可能性がありますけど、きっと大丈夫だろうと言っていました。非常に楽観的な叔父さんです。


11時頃にいらっしゃるので、うちの夫が簡単なお昼ご飯を用意することにしていましたが、「叔父さんは普通の食べ物は飲み込めないし消化が上手く行っていないから、スープのようなものでないといけない」と言いまして、母親から叔父さんのお母さんの古いレシピを教えてもらいパンプキンスープを作りました。

これがすごいレシピだったんですよ。インスタントのチキンヌードルカップスープが入るんです。まず最初に玉ねぎとセロリとカボチャを「たっぷりの量」のバターで炒めろということだったので、夫はなんとバターを120グラムくらい鍋に入れました。

それを見て慌てた私は、「これはたっぷりという量を超えている!」と言って、まだ溶けていなかったバターは取り出しましたけど。(ちなみに、私のパンプキンスープにはバターも油も使いません。)

夫は、パンプキンスープの材料以外は、パンすら買って来ていませんでした。叔父さんはパンなんて飲み込めないだろうというのが理由です。ところが、実は何でも食べられたんですよ。ただ、飲み込むためには、お茶や水が不可欠ということだったんです。

せっかく来てもらったのに、お出しするのがパンプキンスープだけという恥ずかしい状況になりかけましたが、実は私はデザートにチョコレートミルクゼリーを作っていました。作っておいて良かったですよ。

そして、もうすぐ叔父さんが来られるという時間になった時、夫が言いました。

「今日は叔父さんの誕生日なんだよ」

なんですってえ!

なんで今頃そんなことを言うの?知っていたらケーキくらい作ったのに!

柔らかいスポンジケーキと泡立てたクリームのケーキなら、叔父さんも食べられたでしょうに。夫が買い物に行った時に、きれいにデコレーションされたケーキを買って来ることも出来たでしょうに。

ところで、夫が作ったパンプキンスープですけど、クローブとオールスパイスとナツメグというスパイスは入れていましたが、塩を全く入れていませんでしたから、味がしませんでした。

食べる人が自分で好きなだけ塩をふりかけて食べるのが、夫流だそうです。

叔父さんはそのパンプキンスープが気にいったようで、大きなボウルいっぱい食べていましたけどね。晩ご飯用に残ったパンプキンスープを持って帰りたいかと聞いたら、嬉しそうにたくさん持って帰りましたよ。自分のお母さんのレシピで作っていますから、懐かしい味だったのでしょう。


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2026年3月4日

ADHDという発達障害

ADHD(注意欠如・多動症)とか自閉スペクトラム症などの発達障害は、今でこそ知られるようになりましたが、私が小学校の先生をしていた頃には、ほとんど知られていませんでした。

今思うと、あの生徒はADHDだったなとか自閉スペクトラム症のアスペルガー症候群だったのだろうと気づかされます。経験の浅い若い教師でしたが、もっと違ったやり方で指導できたのにと思うことがあります。

ADHD(注意欠如・多動症)という障害の特徴は、その名前の通り「注意欠如」(忘れ物をする、物をよく失くす、不注意ミス、気が散りやすい、集中力が長続きしないなど)と、「多動性」(落ち着きがない、じっとしているのが苦手、思いつきてすぐ行動したり発言したりする、待つことが苦手など)ですが、「整理整頓が苦手、片付けられない」という特徴もあるんですよ。

「物」を整理整頓するのが苦手なだけではなくて、仕事や勉強などの「すること」を整理整頓して、期限までに終わらせるために順序立てて取り組むというのも苦手なのです。

程度の差もあるでしょうが、こういう特徴を持っている人は多いと思います。しかし、ADHDと診断される人は、大人になって仕事や人間関係などが複雑になってから適応が困難になります。日常生活に支障をきたすようになれば、治療が必要なわけです。

仕事での失敗が続いたり人間関係でトラブルが生じたりすると気持ちが落ち込み、自信や意欲を失いますから、ADHDの傾向がある人は不安障害やうつ病などの精神的な病気を抱えていることも多いそうですよ。


私はね、前々からうちの夫はADHDの傾向があると思っていたんです。特徴を読んでいくと「当たってる!当たってる!当たってる!」の連続なんですもの。

よく物を失くす子供とかよく忘れ物をする子供というのはいますけどね、もういい歳のおじさんになっているのに、しょっちゅう物を失くして探し物をしていますし、よく忘れ物をします。携帯電話や弁当を忘れて仕事に行きますから、仕事に出かける時には「財布・携帯・鍵・眼鏡・弁当」の決まり文句を言うようにしているわけです。

片付けや整理整頓は、苦手というレベルではありません。出来ないわけじゃあないんですけど、面倒なことを後回しにする傾向が非常に強いですから、本当に最後の最後まで先延ばしにするので、その間にどんどん散らかって自分の力ではどうにもならない状態にまで悪化するのです。

以前住んでいた家の広いガレージは完全なごみ屋敷状態になってしまったんですが、片付けようという意欲も出て来ないらしくて、集中力も忍耐力も足りませんから、結局は他人の助けが必要でした。

怠けているというよりも何か別の問題だと私は思っていたんですが、ADHDのことを知って「これだな」と思ったわけですよ。夫が片付けをしないことに腹を立てるのではなく、障害なんだと考えることで、これまで耐えることが出来たと思います。

腹を立てないためには、散らかっていても気にしないようにしています。散らかっているのが当たり前くらいに考えています。他人に見られたら、うちの夫はこういう人だと言えばいいんです。

でもね、こういう夫もさすがに最後の最後には何とかするのですよ。昨日の定期インスペクションも、朝の出勤直前に片付けてくれたので、不動産屋からは家がきれいだとお褒めの言葉をもらったのでした。

間に合って良かったですけど、間に合わなかったとしても、それは仕方がないと思っていましたよ。

いろいろありますが、何とかなるもんです。何とかならなくても、結局は何とかなりますから、気にし過ぎないことです。


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2026年3月3日

出勤直前ギリギリの片付け

今日は不動産屋が家の状態をチェックしに来る定期インスペクションの日です。チェックするだけでなく、家主へ報告するために写真をたくさん撮って帰ります。

賃借人がたとえ毎月ちゃんと家賃を払っていたとしても、家が汚れていたりカビが生えていたり散らかっていたりすると、家主としては見逃せない問題ですから、インスペクションの結果次第では賃貸契約を更新してもらえなかったり立ち退きを求められたりすることがあります。

掃除は、私がいつもちゃんとやっていますから、いつインスペクションに来られても平気なくらいなんですが、何が問題って、うちの家は散らかっているんですよ。正確に言えば、うちの夫が使う部分が散らかっているんです。

使ったら使ったまま、出したら出したまま、開けたら開けたまま、うちの夫はそういう人ですから。掃除とか整理整頓とか不用品の処分とか、そういうことをしませんし。

30年以上も一緒に暮らして来て、私はもうあきらめました。あきらめた後、私が片付けていたこともありますが、私が片付けると物が見つからなくてトラブルになりますし、私もほとほとウンザリしたので、夫が散らかした物の片付けなんてしないんです。

ですからね、夫の寝室と洗面所の夫が使う半分、夫のデスク、夫がテレビを見るソファ周辺、ダイニングテーブルや玄関のキャビネットなど夫が物を置く場所、そしてガレージが、大散らかりなんですよ。

定期インスペクションが近づき、掃除機をかける必要のある場所は、仕方がないので私が散らかっていた物を動かしましたけど、ごみ屋敷状態のダイニングテーブルには書類やツールがいろいろあって私にはどうすることも出来ません。

これは先日、携帯電話を忘れて行った時のダイニングテーブルの一部ですけど、いつでもこういう状態なんです。


片付けてくれと何度も頼むと怒るので無視しているんですが、インスペクションの前日でも散らかったままでしたから、昨夜はテレビを観ていた夫に一言言ってから寝ました。今朝も散らかったままでしたので、もう一度言いました。

そうしたら、出勤直前の数分間で片付けましたよ。要らない書類はゴミ箱に入れ、出しっぱなしのツールはガレージに持って行きました。数分で出来ることを普段はしないわけです。

これまでどうやって食事をしていたのか?

それは、こういう状態のテーブルにスペースを作って、そこで食べていたんです。それに、夫はテレビを観ながらソファで食べることも多いのです。

そういうことも、もう気にならなくなりました。好きにすればいいです。


今でもまだ一緒に住んでいるのは、夫に「こうして欲しい」という期待をあきらめたからですよ。そうでなかったら、とても一緒に暮らせませんよ。

それからね、夫のパニック障害と自分のうつ病をきっかけに、メンタルヘルスや精神疾患についていろいろ勉強して来たせいで、「普通の人」とは違う特徴ということに理解が生まれたことも影響しています。

「この人はこういう人なんだから、あれこれ言ってもしようがない」ということがあるんですよ。うちの夫が双極性障害2型であることは時々話題にしていますが、ADHDという発達障害の特徴もあると私は思っているんです。

そのことはまた明日。


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