先日、早朝4時頃に目が覚めたら、寝る前に切ったはずのセントラル暖房がついていて、キッチンの方からは物音が聞こえました。様子を見に行くと、うちの夫が起きていてデスクで何かしていました。
「ずいぶん早起きね」と私が言いますと、興奮してじっとしていられないという様子で「いろいろしなくちゃいけないことがある」と言い、両腕を上下に振りながらこう言いました。
今は躁モードだから!
そうだろうと私は思っていましたけど、自分で言いましたよ。
今朝は、私がトイレに起きた夜中の3時半には、暖房も電気も全部ついていて、夫はデスクで何かしていました。躁モードも本格的になって来ています。
うちの夫は双極性障害2型(2型は躁状態がそれほどひどくない)なので、薬のおかげで比較的安定していますけど、「躁うつ」の波があるんです。気分が「躁」の方に振れてくると、明るく元気いっぱいになって喋る声が大きくなります。誰でもそういう時はありますよね。でも、双極性障害の「躁状態」の場合は「ちょっと普通ではない特徴」が加わります。
うちの夫が「躁モード」の時には、往々にして何かすごいアイデアを思いついていることが多くて、そのことに夢中になって取り組み始めます。そのことが頭から離れなくなるのでしょう、夜も寝ずに取り組むようになります。
現在取り組んでいるのは、クイーンズランドのモートン島で従弟がやっている牡蠣の養殖場の経営面の改善計画だそうです。大学の先生もやっている従弟は今のままでは養殖場を続けていくことが困難なので、この養殖場を売ろうとしているわけなんですが、なかなか買い手が見つからないのですよ。
従弟の養殖場は、あまりにも人間の労働に頼るやり方なのです。これを改善すれば買い手も見つかるだろうということらしいんですが、改善計画には多くのリサーチと多くの計算が必要です。夫はチャットGPTというAI(人工知能)サービスを使って取り組んでいるそうです。
昨晩は、先月モートン島に一緒に行った友人のエクリーさんがやって来て、夫の相談に乗っていました。エクリーさんは産業エンジニアで、他のエンジニアが作った設計書や計画書を精査して問題がないかを調べる仕事をしていたので、さすがプロと思うような細かい質問を連発していました。
自分がやろうとしている計画を興奮して話していたうちの夫ですが、エクリーさんに鋭い指摘をされ、答えられない質問を連発されて、次第に静かになりました。高額な費用がかかる改善計画のようです。エクリーさんのおかげで改善計画自体が大きく改善されたそうですよ。
牡蠣のことはよく知っているけど経営については能力不足であるらしい従弟を助けるために、うちの夫は夢中で取り組んでいるわけですが、これが時間の無駄になるのか従弟の助けになるのかは分かりません。
偉大な功績を残した歴史上の政治家や科学者、俳優、作家、画家、音楽家など芸術家達の中に、双極性障害だったと分っている人やそうだったのではないかと推測されている人は多いですけど。
双極性障害の夫と暮らしてきた私には、良く分かるんですよ。この病気の人が、時に素晴らしいことを成し遂げる理由が。
うちの夫が躁モードの時に見せる集中力や創造力、次々にアイデアを思いつく発想力、夜眠らなくても働き続けられるほどの行動力には、目を見張らされます。へっちゃらで高額な買い物をするとか、怒りやすくなるという問題はあるんですけどね。
双極性障害の人は、うつモードになると気分の落ち込みとともに深い内省が生まれるので、独自の感受性や洞察力を生み出すこともあるそうです。
かつては躁うつ病と呼ばれていた双極性障害ですが、これは病気なんですからね、本人はもちろん苦しむわけですし、生活上の支障をきたすことは多くて家族も苦しみます。
私もつらいことはいろいろあったし苦労もして来ましたが、人間の脳というのは本当に興味深いとも思います。夫の躁モードは、今のところはヤバいレベルではないので、とりあえず私は見守っています。
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