不安障害とかパニック障害を患っている人にとって、医師に会いに行くということはなかなか容易なことではありません。
外出はできるようになっていたうちの娘ですが、それはいつも決まった駅と決まった路線の電車を使った大学までの通学であったり、よく知っているショッピングセンターであったり、限られた場所でした。
そんな娘は、新型コロナのせいで大学がオンラインのみとなり、ストレスの溜まる外出ということをしなくても良くなった今年、ほとんど家から出ない暮らしでしたが、ついに出かける必要ができました。
薬の処方箋の新しいのが必要になったのです。
ところが、いつも診てもらっているミッソ医師のいるクリニックは、できるだけ在宅診察というのをやっておりまして、処方箋をもらうだけの診察は電話で行うということで、娘には好都合でした。
ミッソ医師は娘のことを大変よく知っていますから、診察はまるで久しぶりに会う知人とのおしゃべりのようでした。娘は現在取り組んでいる論文のことなども話していました。
さて、新しい処方箋ですが、先日うちの夫が新しい処方箋をもらいに行った時には、家から近いというだけの理由で利用したこともない薬局にファックスしてもらうなどということを手配して帰りまして、いつも薬を買いに行く私には大迷惑だったのですけど、
娘の処方箋は、クリニックまで取りに来てくださいとのことだったのです。
「ということだから、誰かが取りに行かなくちゃあいけないの」
「誰かがって、アンタねえ、それは自分で取りに行かなくちゃあだめよ」
「えっ?」(顔色が変わる娘…)
「クリニックまでは車で送っていってあげるから」
「…」
「それができないんだったら、ただ処方箋をもらうだけじゃあなくて、ちゃんとミッソ先生に今の状況を説明して相談しないと」
この後、娘は喋らなくなり、家の中に緊張感が満ち溢れました。
クリニックまでは息子が送っていくことになりました。私はまだ病気だったので。
行くのは午後3時と決めた娘は、3時に向けて心の準備を整えます。
お昼前にはシャワーを浴びて、洗髪もし、服を着替えました。毎日ドレッシングガウンを着ていますからね、久しぶりに見る普通の服装でした。
3時が近づいてきて、最後の準備におトイレに行きました。
そして、私が使っているハンカチマスクを貸してもらい、無言で出かけたのでございます。お母さんも緊張感マックスでしたよ。
そうしたら、
あっという間に戻ってきた!
もしかして、途中でギブアップしたのかと思ったのですけど、ちゃんと処方箋をもらって帰っていました。
クリニックのスタッフは玄関の外側の扉と内側の扉の間のスペースで対応していたそうで、処方箋をもらうだけだった娘はクリニックの中に入る必要がないから体温チェックもなし、支払いもなしで、ミッソ医師が準備しておいてくれた処方箋が入った封筒をもらってすぐ帰って来たのです。
クリニックは我が家から5分のところにあるのですけど、こんな簡単なことが簡単にはできなくなる人もいるのですよ。
「イージーピージー(Easy Peasy)だったわねえ!よかったじゃん!」
そう私が言いますと、娘は何も言いませんでしたが、私が作っておいたクッキーをむしゃむしゃと頬張って「お茶がいる〜!」と叫びながらミルクティーを作り始めました。
また一つハードルを超えましたね。
本当に些細な簡単なことなんですけど、こうして何かをやり遂げて「自分は大丈夫だ」という経験をする度に自信をつけていくことで、いつかは病気は治ると信じます。
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