2016年4月18日

音痴は遺伝する

夫の母は大変な音痴で、こういう人に限って歌うのが大好きと来ていますので、彼女が歌うのを幾度となく聞いてきましたが、正確な音程で歌えるのが当たり前な私には、その「もげっぷり」(岡山弁で音程の外れ具合の意味)は、何故そうなるのか理解し難いものがあります。

その母親の音痴の遺伝子をすっかり受け継いだだけでなく、「もげっぷり」をパワーアップした超人的音痴がうちの夫です。

この夫は、高校生の時に交換留学生として東京で一年を過ごしております。どういう成り行きでそうなったのかは知らないんですが、ある時「百万人の英語」というラジオ番組に出演したことがあるんだそうです。

夫を含め4人の留学生がゲスト出演して番組4回分の録音を行ったと聞きました。3人がオーストラリア人でもう一人がカナダ人だったそうです。まあ、要するにネイティブの英語を聞こうと言う趣旨だったのでしょう。

英語の歌を題材として取り上げて、その歌詞をネイティブの高校生たちが読んで聴かせた後、その歌を歌って聴かせるというようなことをやったんだそうです。

夫は、ロッド・スチュアートの「Some Guys Have All The Luck(サム・ガイズ)」の歌詞を朗読いたしました。そして、歌い始めました。すると、夫が歌っているのに他の人達が何かしゃべっていたんですって。

日本に来たばっかりで日本語が聞き取れない夫には、皆さんが何を言っているのかが分かりません。何か問題があるのかと思い歌うのを止めたところ「ああ、続けて!続けて!」と言われ、再び気持ちよく歌い始めると、やはり他の人達は何やらしゃべり続けていたそうです。

この時の番組は、留学生活の思い出にということで、カセットテープに録音したのをそれぞれがプレゼントとしてもらって帰りました。

さて、日本での1年間の留学生活に続き大学でも日本語を勉強した夫が、ある日その懐かしいカセットを見つけました。

「おお、日本に留学した時にラジオに出た時のカセットだ!」

早速、聴いてみました。

若い自分の声がロッド・スチュアートの「Some Guys Have All The Luck」を朗読します。そして、歌い始めました。

「うわっ、なんだよコレ」
「歌ってるんだよねえ?」
「いやあ、オレこんなすごいの初めて聴いた」
「信じられない!すごすぎる!」
「ああ、続けて!続けて!」
「音痴っていってもさ、ここまで外す?」
「いやあ、なんか外れているっていうかさ、もう音程がないじゃん」

…とまあ、

こういう会話を日本全国の百万人が聞いていたということでございました。


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