カナダのケベック州に拠点を置く「シルク・ドゥ・ソレイユ」(Cirque du Soleil)というエンターテイメント会社があります。「太陽のサーカス」という意味だそうですけど、サーカスと聞いて思い描くものとは一線を画す非常に芸術性の高いショーを上演することで有名です。
新型コロナの影響で経営破綻したと聞いていましたが、復活したんですね。新しいショーの「コルテオ」(Corteo)がオーストラリアにやって来て、メルボルンでも上演されていたそうです。今日が最終日です。
私は「シルク・ドゥ・ソレイユ」の公演のことなど全く知りませんでしたが、昨夜うちの娘から「シルク・ドゥ・ソレイユ」のショーを観に来ているというメッセージが来たんです。全豪オープンテニスが開催されるメルボルン・パークにあるジョン・ケイン・アリーナが会場でした。
思わず「ヴァレカイを思い出すねえ」と返事をしましたよ。
「ヴァレカイ」(Varekai)と言うのは、20年ほど前に「シルク・ドゥ・ソレイユ」が世界を巡回して上演していたショーです。うちの娘にとっては忘れられない思い出とつながっているんです。
娘が小学校の2年生だった2006年のこと。「ヴァレカイ」がメルボルンにもやって来ましてね、大変評判が良かったので私達家族も観に行くことにしたんです。
ところが、遠足とか学校の休みとか発表会とか、何か楽しみにしているイベントがあると必ずと言っていいほど病気になっていたうちの娘は、「ヴァレカイ」を観に行く当日にひどい下痢になり、観に行けなかったんです。
仕方がないから私も娘と一緒に家に残り、夫と息子の2人だけが観に行ったんですよ。だから「シルク・ドゥ・ソレイユ」と聞くと、夫と息子は「ヴァレカイ」の素晴らしいショーを思い出しますが、娘と私は病気で惨めだった一日のことを思い出すわけなんですけど。
後で分かったことですが、あの日のことは悪い思い出ばかりではなかったんです。「ヴァレカイ」を観に行けなくて悲しかった娘に、私が本を読んでやったからです。
娘に本を読んでやったことなど私は覚えていなかったのですが、娘が大人になってから教えてくれたのです。あの日、お母さんが自分のために本を読んでくれたことは、子供の頃の最も幸せな思い出の一つになっていると言うんですよ。
その本の内容が素敵だったので、特に心に残っているそうなんです。どの本を読んでやったんだろうかといろいろ考えて、やっと思い出したその本は、黒柳徹子さんの「窓ぎわのトットちゃん」でした。一日がかりで読んだらしいですが、最後までは読んでいません。
昨夜、娘から「シルク・ドゥ・ソレイユ」のショーを観に来ているとメッセージをもらって、「ヴァレカイ」の日のことを懐かしく思い出しました。「窓ぎわのトットちゃん」をいつか自分で読んでみたいと言っていたことを思い出したので、本を注文しましたよ。残念ながら日本語では読めませんから英語版ですけど。
それにしても、幼い子供にとってどんなことが幸せな思い出として心に残るか分かりませんね。
下痢になって「ヴァレカイ」を観に行けなかった惨めさよりも、お母さんが一日中ずっと自分と一緒にいてくれて素敵な本を読んでくれた幸せの方が強く心に残っていると言うんですから。
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