2025年7月26日

見えていない夫

先日パブの「トリビアナイト」というクイズイベントに行った時のことですけど、さあ出かけようという時になって夫が何かを探していました。

整理整頓が出来ないうちの夫はしょっちゅう物を探していますから、良くあることです。

「何探してるの?」
「携帯」

私はこの返事にびっくりしたんですよ。だって夫の iPhone は目の前にあったんですから。

「そこにあるよ」と指さしても分からないので、私はもっとびっくりしました。ベッドの上にあったんですけど、キルトカバーの格子縞の模様のせいで見えにくかったんだろうと、その時は思いました。

うちの夫は、遺伝性の黄斑変性「スターガルト病」で目が見えなくなって来ていまして、両眼とも視野の中心部分では見えなくなっているのです。

視野の中心部分というのは、物を見る時に焦点を合わせる部分ですから、そこが見えなくなっているのに文字が読めるのは不思議なんですけど。焦点を合わせる位置を微妙に変えるとまだ見える部分が見つかるんだそうです。その見える部分を駆使して読んでいるそうなんですけど。

昨日の朝のことです。仕事に出かける前にデスクの前に立ってまた何かを探していました。

「何探してるの?」
「携帯」
「そこにあるよ」

やはり夫の iPhone は目の前にあったんです。ただし、黒い取扱説明書の上にあったんです。黒い iPhone が黒い物の上にあったので夫には見えなかったのですよ。

「そこにあるよ」と指さして教えても見えないらしくて、手探りで見つけましたから私はさらにびっくりしました。夫の目が見えていないことに気づく出来事は増えていますが、さらに悪化したことが分かる出来事でした。

物の色と背景の色が似ていると見えにくいのは知っていましたよ。例えば白いお皿に乗った白っぽいチーズは見えないとかね。でも、先日は飲もうとした薬の錠剤をテーブルに落として、それが見つけられませんでした。もう見えにくいと言うよりも見えなくなっているようです。

夫の iPhone は黒い保護ケースに入れているんですが、もっと目立つ色の保護ケースに入れた方がいいですね。


十分な照明が無い場所ではほとんど何も見えないようですから、朝晩の薄暗い通勤時には懐中電灯を使っています。街灯の明かりは助けになりませんので。

先日、陰謀論の深い穴に落ちた友人宅に晩ご飯を食べに行った時は、暗かったし慣れない場所ですから杖を持って行くように言ったんですけど、夫は杖は要らないと言って持って行きませんでした。

そうしたら案の定、車を降りてから恐る恐る歩いていましたよ。もちろん懐中電灯を使っていたんですが、足元が心配なようでしたから「そこにこれがある」「ここにあれがある」と私は指さして教えたんです。

そうしたら「いちいちうるさい。ちゃんと見えている」と怒りました。あんまり見えない人扱いをするのも良くないようです。

本人は目のことを話題にしません。どのくらい見えなくなっているのか言わないので私には分かりませんが、確実に見えなくなって来ています。

まだ文字が読めるのでツールショップの仕事は出来ていますけど、お店の中には見えていない物がいろいろあるはずですよ。

遺伝性の黄斑変性「スターガルト病」には治療法がありません。視細胞が死んでいくのを止めることが出来ません。徐々に出来ないことが増えて行くのは、イライラするだろうと思います。

10月に息子と娘と私が日本に行っている間、一人で大丈夫なんでしょうか。少し心配です。


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