暗い玄関を出ると、東の空に明るい金星が見えました。「明けの明星」というやつですね。
金星のすぐ近くに比較的明るい2つの星があって三角形を作っており、金星のすぐ近くには月も出ていました。全体が灰色に丸く見える月の斜め下だけが明るく光っていて、その右側に広がっている薄い雲が月の光で際立って見えていました。
なんてキレイなの!
その空に見とれた私は、後ろからやって来たうちの夫に空を指差しながら言いました。
「見て見て!キレイねえ!」
「ああ、金星」
「金星ともう2つの星と月よ!月は全体が見えているんだけど下のところだけ光ってるでしょ?その光で雲がすごくキレイじゃない?」
「…」
夫が何も言わなかったのは、私に見えているものが夫には見えていなかったからでした。
金星と月の光っている部分しか見えていませんでした。
夫の目は、どんどん見えなくなって来ています。
よく見えていないので、早朝の暗い道を自転車で走りながら道路に落ちていた大きな枝に激突しそうになったりカンガルーに出くわしたりと、事故寸前というアクシデントも起きているようです。
カンガルーとの衝突事故は、自動車ではよくあることですが自転車でもあるんだそうです。
昨日は帰り道で、明るかったのに道路に落ちていた石に気が付かず、石に乗り上げてバランスを崩したそうですが、実はその時に夫は財布を落としたんです。財布はバッグに入れていたそうですが、どうしてバッグに入れていた財布が落ちたんでしょうか。不思議です。
とにかく、財布を落としたのですけど、夫はそれに気が付きませんでした。
夕方、警察署から電話がありました。
ある女性がその財布を拾い、警察に届け出たのです。夫はいつも財布に現金を入れて持ち歩いていますが、警察の話では入っていたはずの現金はそのままで、もちろんカード類も全てそのままでした。
届け出た女性は、名前も連絡先も残しませんでしたので、お礼のしようもありません。
今日は仕事の帰りにバスでその警察署まで受け取りに行って来るそうです。その警察署は、夫が財布を落としたと思われる場所からはかなり遠いのです。どういう理由で、その女性が財布をそんな遠くの警察署に届け出たのか、事情は分かりませんけど。
オーストラリアにも良い人がいます。
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