イラン人ご夫婦の山の上の家には、4時半少し前に着きました。
誰もいませんでした。本当に今日この家でBBQパーティーをするのだろうかと疑うほどシーンとしていました。
垣根と道路との間に車を停めましたが、地面にはホウキで掃いた跡がくっきりと残っていて、日本庭園の「砂紋」を思い起こすほどでした。
家の玄関や裏庭へ向かう小道も、落ち葉一つなくホウキできれいに掃いてありました。土と小石の道ですよ。
後で聞いたところでは、年末の大掃除の一環として家の中も外もとにかく片付けて掃除をしたそうです。イランでは、年末の大掃除は欠かすことが出来ないそうです。
家にあるもので洗えるものは全部洗ってきれいにするそうで、絨毯も洗うのだそうです。ですから、絨毯クリーニング屋さんという商売も繁盛しているわけです。
家の外があまりにきれいで、木や花の手入れも行き届いて、私は正直言ってびっくりしましたが、このご夫婦は裏庭のバンガローをAirbnb(エアビーアンドビー)を通じて宿泊施設として貸し出しているのだそうで、そのせいもあって庭もきれいにしているのでしょう。
私達の声が聞こえたのか、旦那さんのSさんが裏庭のゲートから出て来られました。お客さんはまだ誰も来ていなくて、私達が一番乗りでした。
ご夫婦の家は、近年流行りのオープンプランにリフォームした家で、広々としていて素晴らしいインテリアで、どこもかしこもピッカピカで、パーティーの準備は全て整っていました。お正月「ノウルーズ」(Nowrūz)の飾り付けもしてありました。
お菓子も飾ってありました。
私が持っていったお菓子は、奥さんのMさんがすぐに開けました。イランではきっと贈り物はすぐに開けるんですね。そうしたら何と、飾ってあったお菓子とまったく同じものだったんです!
瓶詰めの「サマヌー(小麦とナッツで作る甘いペースト)」は喜んでくださいましたが、お菓子や「サマヌー」をもらったから嬉しいというのではなくて、そうした物を売っている店を探してわざわざ買いに行ってくれたということを大変感謝してくださいましてね、Mさんは次々にやって来るイラン人のお友達に「ヒロコが買って来てくれたのよ」とお菓子や「サマヌー」を見せていらっしゃいましたから、私もそれが嬉しかったです。
美味しそうな料理がたくさん並んでいました。どの料理にも、料理の説明と使った材料が書かれた札が付けてありました。ベジタリアンやヴィーガンの人もいらっしゃるので、料理にこういう説明を付けておくのは良いアイデアですね。私も真似しようと思います。
お酒類もしっかり準備してありましたよ。
イラン人はイスラム教徒だからお酒は飲まないだろうという先入観は吹き飛びました。
次々にお客さんが到着し、家の中も外も人で一杯になりました。お客さんは20人くらいいたと思います。多くはイラン人でしたが、うちの夫のような何世代も前に祖先が移民してきたオーストラリア人もいましたし、トルコ人、インド人、イスラエル人と、大変国際色豊かな集まりでした。アジア人は私だけでしたが、私が日本人と分かると皆さん好意的でね、それも嬉しかったです。
ペルシャのお正月「ノウルーズ」(Nowrūz)は、イランに限らず、ペルシャ人が住んでいる国々でお祝いされます。中央アジアの国々、トルコの東部やアフリカにまでに及ぶ広い地域で祝われる祭日だそうですが、私は知りませんでした。
元日は「春分の日」ですが、「春分の日」の前後に様々な行事を楽しむのだそうです。お祝いは13日間続くそうで、13日目には自然の中でピクニックをするのだとか。
いろいろ教えてもらいましたけど、イランの皆さんにとっては、そうした行事に宗教色はなくて、とにかく楽しむのだとのことでした。
年末の行事で有名なのは、火の上を飛び越える行事です。
火を燃やすことで不幸や不運や不浄を取り除き、幸運や無病息災のためなんだそうですけど、火を燃やせない環境では、例えば新型コロナのロックダウン中にアパートから出られなかった人などは、部屋でろうそくを立てて、ろうそくの炎の上を飛び越えたりもしたそうですよ。とにかく火の上を飛び越えなくては年が越せないということなんです。
オーストラリアに移民して来られてからも、こうした伝統を受け継いで新年の行事を続けているイラン人の皆さんの楽しそうな様子を見て、お正月のお祝いをしなくなった自分のことを少し残念に思ったりもしました。
ただね、これには天候の問題があるんです。真冬のお正月の行事を真夏に、それも下手をすると40度超えのような猛暑の中でするのは、正直無理があるのです。
その点、「春分の日」はオーストラリアでは「秋分の日」なわけでして、天候は似ていますし、秋は春よりも天気が安定していて気持ちがいいですからね、いろいろと行事を楽しみやすいとは思いますよ。
さて、
日が暮れ始めてから、男性陣がBBQを始めました。鶏肉や野菜を串に刺したものを炭火で焼いていました。オーストラリアでよくあるガスタイプのBBQとは違って、炭火で焼くと美味しさが格別です。
お肉や野菜が焼けた頃、家の中ではそれ以外の料理の準備ができていました。
イランのご馳走の中心は米料理だそうです。手前の山盛りの米料理に乗っている黒くて丸いのは干しぶどうです。米と干しぶどうを混ぜたお料理というのは初めて食べました。
サラダの向こうに見えている焦げたお米みたいなのは、まさに焦がしてカリカリにしたご飯です。優しい塩味が付いていますが、これがとても美味しかったです。日本でもご飯の「おこげ」というのがありますよねえ。おこげがお好きな方にはたまらない食べ物ですよ。
黒い小さな丸いのはレンズ豆です。サフロンの風味が付いていました。
どの料理もシンプルな味付けです。塩味は強くありません。
そして、
皆さんが食べ終わった頃、室内ではイランのポップミュージックがガンガンかかり始めました。
それは、
踊るためです!
イランの皆さんは踊ります。踊るのがお好きなようです。
皆さん輪になって踊り始めましたが、結構激しい動きです。男性陣が素早いフットワークを見せます。あっという間に皆さん大汗ですよ。
「一緒に踊ろう」と誘われましたが、うちの夫も私もパーティーで踊ったりするタイプの人間ではありませんからね、輪の外で見ていたんですけど、イランの皆さんはすごいです。
これがイランの本当の姿か!
汗を流しながら踊っていたSさんが、何やら叫びながらやって来て、うちの夫を連れて輪の中に入って行きました。
そうしたら、うちの夫も踊り出したんですよ。
Sさんのフットワークをマネをして、腰を動かし、両腕をヒラヒラ動かしながら踊る踊る!
恥ずかしくて直視できません!
でも、うちの夫は偉いなあとも思いましたよ。輪の中に連れて行かれて「さあ一緒に踊ろう」と言われて「いやあオレはいいです」と場をしらけさせるような真似はしないわけですよ。
大笑いしながら、踊る夫を見ていたら、Sさんが私のところにやって来て、私の手を取って輪の中に連れていきました。
人々の視線は私達に集中です。
もう踊らないわけには行きません!
Sさんに動かされるまま中途半端にウゴウゴしただけの私ですが、どうせ踊るんならちゃんと踊ればよかったと少し後悔したんですけどね、実はあの時、私はおトイレを我慢していてあまり激しく動くと危ない状況だったのでした。
次回チャンスがあったらちゃんと踊りたいと思います。皆んな踊っているんだから恥ずかしがっている方がおかしいってことで。
盛り上がるペルシャの年末BBQパーティー、話はもう少し続きます。
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