2021年5月16日

ヴィーガンの倫理観と食べ物のこと

私達が家族ぐるみで親しくしているエクリーさん一家は、昨年ヴィーガンになりました。以来、彼等を食事に呼ぶ時は献立を考えるだけで一苦労です。

私達もヴィーガンなら、レシピもいろいろ知っているでしょうし、アイデアも出るのでしょう。代替食材も知っているでしょうから、難しいことではないのでしょうが、私達は肉も魚も卵も乳製品も食べる食生活ですから、動物性食品が一切ダメとなると献立が限られると感じてしまうのです。

和食はヴィーガン食にしやすいのですけどね、いつも同じような料理ばかり出すのもアレですし、何か美味しいものを食べさせてあげたいので、献立をあれこれと考えるわけですよ。

エクリーさん家の上のお嬢さんは、ヴィーガンをやめました。今ではもう何でも食べているそうです。

奥さんもヴィーガンをやめました。チーズや卵を食べられないのに耐えられなくなったそうです。今も自分が作るヴィーガン食を食べていますが、卵と鮭は食べているそうです。チーズは乳製品ではないチーズというのがあるそうです。

旦那さんと下のお嬢さんの二人が完全なヴィーガンですから、奥さんは今も毎日ヴィーガン食を作っていますが、はっきり言って嫌気が差しているそうですよ。

お料理に、卵やチーズを使いたいし、時には子羊肉のロースト料理も作りたいし食べたいと言います。家族の健康を考えて必要な栄養素をちゃんと摂れる食事を準備し続けることに疲れてしまったそうなのです。ヴィーガン生活は「食べる楽しみ」のみならず「作る楽しみ」も奪うとも言っています。

気持ちはよく分かります。

実はですね、昨日の土曜日、エクリーさん家族を食事に呼んだのですよ。

旦那さんと下のお嬢さんのために、献立は動物性食品ゼロのヴィーガン料理でした。

野菜だけで美味しいものは作れます。調味料は、塩、こしょう、醤油、味噌、砂糖といった基本的な調味料があれば十分です。

デザートも、バターやクリームや牛乳の代替食材はあります。卵が使えなくても作れるデザートはいろいろあります。奥さんとお嬢さんが果物嫌いなので、そっちのほうが障害です。

おつまみに出したアスパラガスを春巻の皮で巻いて焼いたのと、ロティというパンと一緒に出した手作りピーナッツソースが好評でした。

メインは、手巻きライスペーパーロール。具材は、豆腐を焼いて味付けしたのやアボカドや、たくさんの種類の野菜を準備しました。タレは、ホイシンソースとライムの汁とピーナツバターで作りました。手巻きライスペーパーロールは、やはり楽しかったですよ。

デザートは、うちの娘とエクリーさんのお嬢さんが絹豆腐で作ったチョコレートムースに細かく砕いたチョコレートビスケットをかけた「マッド(泥)」と名付けたのを作って、これと豆乳アイスクリームを一緒に食べました。

一晩だけの食事ですから、私とすれば動物性の食品さえ使わなけれ良いわけですけど、毎日毎日ヴィーガン料理を作り続けている奥さんは、栄養を考えていますから、疲れてしまうというのは分かります。

彼女はね、わけがわからない材料がいろいろ使われているような加工食品は買いたくないし、家族に食べさせたくないのです。それはもっともです。

そうしたヴィーガン加工食品は、近年大変増えてきていますが、製造過程で多くのCO2を排出していますしゴミもたくさん出していますよ。環境に良くない食文化の一つです。

肉もどき食品やチーズもどき食品は特に問題ですよ。あそこまで加工したものを食べたいと思う人がいるんですかねえ。私は、材料を見ただけで食べる気が失せますよ。家畜の虐待云々だけでなく、ああした加工食品の製造工程も取材して報道すればいいのに。

エクリーさん家族がヴィーガンになったきっかけは、あるテレビ番組だったんです。サステイナブル(持続可能)ではなくて倫理的に問題のある現代の工業的畜産の問題点をその番組で改めて考えさせられたのをきっかけに、肉を食べるのをやめたのです。

そして、乳製品も卵も食べなくなったのです。ハチミツも食べませんよ。ハチミツは蜂が労働によって集めた蜂の食べ物なのですから。

でも、奥さんは厳しい制限をすることに疑問を持っています。

卵だけでも食べるようにすれば作れる料理もぐっと増えるし栄養も摂れるのにと、彼女は言っていました。

自分が食べる卵は、地元の小規模農場でフリーレンジ(放し飼い)のニワトリが自由に動き回れる環境で生んだ卵を買っているそうです。


私も卵や鶏肉はフリーレンジのものを選んで買います。狭いケージや小屋に閉じ込められたニワトリや、同様の環境で生産された卵は、食べたくありません。オーストラリアでは、ニワトリに限らず、自由に動き回れる環境で飼育された家畜が人気があります。畜産動物の幸福度に人々の関心があるからですけど。

気持ち的にはですね、恐怖や苦悩のない環境で飼育された家畜の肉を買いたいとは思いますけど、いずれにしても殺して食べているわけですからね、あまり細かいことにこだわるのもどうかと思うのです。

家畜に対する倫理的な感情よりも、私は工業的畜産の環境への影響の方に関心があります。ですから、食肉の消費は減らしたいと思っているんですけど、簡単ではありません。うちの夫は肉を食べたい人ですから。

家畜の幸福度とか福祉(アニマルウェルフェア)というものに関心が高まるにつれて、難しいことをいろいろ言う人が大勢います。動物の肉を食べることや、食べるために家畜を飼育することを犯罪扱いする活動家もいますしね、農場を襲って家畜を助け出すなどというテロまがいの活動を実行する人達もいますよ。

助け出した家畜をどこかの牧場で死ぬまで幸せに暮らせるようにしてやるんでしょうか。まさか野生に放ったりするんじゃあないでしょうね。

オーストラリア国内で飼育した家畜を生きたまま輸出する場合に、輸出先の国での屠殺がむごたらしいとか、アニマルウェルフェアに反する殺し方をしているとかいう理由で糾弾して政治問題化し、畜産業に大きな被害をもたらしたこともありました。

栄養のバランスが充分に考慮されたヴィーガン食には問題はないとも聞きますけど、ヴィーガンの食生活では不足しがちな栄養素があることはよく知られたことです。不適切なヴィーガン食で病気になる人は多いそうですし、親に不適切なヴィーガン食を与えられた子供が栄養失調になったり死亡したりすることもあります。

エクリーさんの場合は、奥さんが頑張って栄養のバランスを考慮した食事を作り続けているので、旦那さんも下のお嬢さんも健康そうですけど、旦那さんは見る度にさらに痩せてガリガリになっていますし、顔なんてシワシワですし、少し心配ではあります。

自然環境や家畜の幸福に配慮して生産される食品なら、食べればいいのにと私は思います。

よく知っている人が安心できる環境で飼育しているニワトリが産んだ卵なら、問題はないんじゃあないですか。蜂が集めたハチミツも、少し分けてもらうくらいは搾取とは言えないでしょう。自然の海で捕れた魚や貝を時々食べることは、残酷な行為ではないと思うんですけど。


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2 件のコメント:

  1. 仏教的な殺生はだめという観念は植物系なら良いという考えに支えられていますが、私は子供のころ
    動物は逃げられるけど、地に根づいた逃げられない植物を取るのはもっとかわいそう、比較できない
    と親に言われてなるほど、と思いました。ヴィーガンを貫くためにどれほどの犠牲をあらゆる資源に課しているのか考える必要がありますね。

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    1. Snowmanさん、コメントありがとうございます。私は、植物も動物もありがたくいただくことにしています。食品を買う時に一番気にしているのは、どれだけのゴミが出るかということです。人々の消費活動が水資源問題や環境汚染、ゴミ問題や温暖化の問題と直結しているわけですから、正しい選択をしなくてはいけないとは自分に言い聞かせてはいますけど、遠い日本からCO2を排出しながら輸入された納豆を買って食べてゴミを出したりもしています。

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