2021年5月20日

ウソをつく学者

昨日の記事で紹介した「アルビノーニのアダージョ」という曲ですが、私は昨日の記事を書くまでは、アルビノーニという名前の場所か人が関わっている曲なんだろうと思っていました。

Wikipedia の説明を読んでびっくりしましたよ。

アルビノーニという作曲家が残した楽譜の断片を元に編曲されたということから「アルビノーニのアダージョ」と呼ばれるようになったそうですが、

それはウソだったんですって!


トマゾ・アルビノーニという人は、17世紀から18世紀にかけて活躍したヴェネツィアの作曲家で、生前はオペラの作曲で有名だったそうです。

このアルビノーニを研究していた音楽学者でレモ・ジャゾットという人がいました。この方はイタリアでは著名な学者だそうですが、この学者ジャゾットさんがですね、アルビノーニが作曲した未出版の楽譜の断片を元にして編曲したとして発表したのが、この「アダージョ ト短調」という曲なのです。

アルビノーニの残した楽譜や資料はドイツの街ドレスデンにあったザクセン国立図書館に保管されていたそうですが、第二次世界大戦中の大空襲ですべて焼失したと考えられていました。

ところが、このザクセン国立図書館の廃墟から発見された断片があって、それを元にして自分が編曲したと学者ジャゾットさんは主張したのです。この曲の著作権を取得したジャゾットさんが楽譜を出版したのは1958年です。

この曲は人気を得て「アルビノーニのアダージョ」として知られるようになり、学者ジャゾットさんも「アルビノーニのアダージョ」の編曲者として有名になったのですが、アルビノーニが残した楽譜の断片を元にした云々に関する経緯については、ずっと論争が続いたそうなんです。

何故なら、その断片というものが公開されたこともなければ、そのような断片が発見されたという記録も残っていないし、その断片を見たことがある人もいない。

現在では、この曲は学者ジャゾットさんの完全な創作であることが判明しているそうです。

芸術品や工芸品の偽作とか贋作というのは、どの世界にも昔から存在していて、中には偽作がオリジナルに匹敵するどころかオリジナルを超える出来栄えであったという話もあるわけですけどね。

作曲家アルビノーニは、自分が作ったわけではないこの曲で世に知られていると言うんですから残念な話ですよ。自分とは全く関係のない他人の作品が、自分の最も有名な作品だと考えられているというのは、芸術家としては悔しいじゃあないですか。

「アルビノーニのアダージョ」という名前は響きがいいのですけど、やっぱり関係のなかった作曲家の名前をつけるのはアレですよ。この曲は「アダージョ ト短調」(Adagio in G minor)と呼ぶことにするべきでしょう。アルビノーニの名誉のためにもね。


それにしても、素晴らしい名曲なんですから、学者ジャゾットさんも自分が作曲したと言えば良かったのに。アルビノーニの名前を借りてマーケティングしなくても、良い作品はちゃんと受け入れられますよ。

ウソをつく学者というのは結構いますね。

データを改竄していたとか、出土品を捏造していたとか。

権威のある学者や研究者が言うことは、つい鵜呑みにしてしまいますけど、そういう人達がウソをついていたと発覚したスキャンダルをこれまで度々耳にしました。

学者として、ウソをつくというのは一番してはダメなことでしょうに。


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