2021年5月17日

スーパーで出会ったおじいさんのカップル

同性婚が法律で認められているオーストラリアでは、同性のカップルを見かけるなんてことはしょっちゅうです。

同性愛に対する偏見が根深い日本の社会で生まれ育った私は、正直言うと、初めて女同士のカップルあるいは男同士のカップルが、抱き合ったりキスしたりしているのを見てギョッとしたり、違和感を感じたりしたものです。

しかし、しょっちゅうそういう人達を見ていると慣れると言いますか、特になんとも思わなくなるものですね。

最近は、同性カップルも男女のカップルも同じに見えます。何も変わりません。愛し合っている二人に、性別の違いとか関係ないんですよ。

先日、とても嬉しくなる出会いがありました。

私がスーパーに入ろうとした時、私の前におじいさんのカップルがいたのです。

お一人は車椅子に座っていて、もうお一人が車椅子を押していました。お二人とも丸坊主にしている頭の毛は白く、70歳代くらいに見えました。

友人とか兄弟とかではなくて、カップルだというのは見れば何となく分かるんですよ。

車椅子に座っていらっしゃる方のおじいさんが、スーパーの入口に積んである買い物かごを取ろうとしたのですが、もう一人のおじいさんがそれに気づかず車椅子を押して中に入って行かれましたので、かごを取りそこねました。

それで、私がかごを取ってお二人の後を追ったのです。

車椅子を押していたおじいさんが買い物かごを取りに戻ろうとしていらっしゃいまして、私がかごを差し出すと「おお、なんとご親切に、ありがとう」とおっしゃって、お二人で買い物を始められました。

同じ果物売り場にいたので、私達は「ミカンが安くなってきましたねえ」とか、少し言葉をかわしました。

ニコニコと笑顔で和やかに買い物を続けていらっしゃるお二人の様子を見て、私はそのお二人のこれまでの人生を想像していました。

ヴィクトリア州では、1981年までは男性同性愛は犯罪でした。法律が改正されて犯罪ではなくなった後も差別は続きましたから、おじいさん達がお若かった頃には苦労もされたことでしょう。

パートナーとして何年くらい一緒に暮らしてこられたのでしょうか。

2017年12月7日に、同性婚を合法化する法案が議会で可決されましてね、翌日の12月8日に合法化されました。

ああ、今思い出しても感動するなあ、あの歴史的瞬間は!

おじいさんカップルは正式に結婚なさったでしょうかね。きっと結婚されたでしょうね。他の数多くの熟年同性カップルのように。

お幸せそうなお二人を見て、オーストラリア社会が「公正で平等で偏見のない国」に変わって来たことを嬉しく思いました。

うちの娘は同性愛者ですけど、いつか人生の伴侶となる人を見つけた時に、ちゃんと結婚することができるんだなあと思うと、しみじみと喜びを感じます。


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