2021年5月4日

オリンピックと新型コロナ

新型コロナへの対応の違いは、基本的には医療制度の問題だと思うのですが、オーストラリアの医療制度は英国の医療制度 NHS(National Health Service)と同様に税収などの一般財源によって賄われていて、全ての国民に対して原則無料で提供されています。

新型コロナのような深刻な感染症が蔓延する状況でも、公立病院であれば治療費の支払いを心配することもなく、入院が必要になれば必ず病院に搬入されて助けてもらえるという安心感はあります。

しかし、公立病院は財源の問題で数が減らされてきた経緯もありまして、感染者が増えるとたちまち医療制度が破綻してしまうわけです。そのために、どうしても感染者が増えるのを阻止する必要がありました。

だから厳しいロックダウンをおこない、人々の動きを最小限に制限して、ウイルスの根絶を目指す対策が取られたんですよね。

市民に厳しいルールに従わせるためには、罰金制度だけじゃあ足りませんから、警察が見張り、見回りをし、検問を設けてルール違反者を捕まえたりと、大変だったんですよ。

海外からの入国者も厳しく制限したかいもあって、現在オーストラリアは市内感染はほぼゼロの状態が続いています。先月は帰国者の中から見つかる感染者の数が急増し、そのほとんどがインドからの入国だったこともあり、現在インドからの入国は禁止されています。

オーストラリア国民であっても、2週間以内にインドにいた人は入国できません。国民の権利を侵害するのではないかと問題になっていますけど、必要な措置だと思います。

インドからの直行便は運航していませんが、他のルートを駆使すれば帰国できないわけではないそうです。だから、高額な罰金あるいは懲役刑という罰則が発表されたんですよ。何としても、インドからウイルスが入ってくるのを阻止するためです。

オーストラリアのワクチン接種は開始が遅れましたが、感染者がいないということもあってそれほど切実に必要とは思えない状況でした。

医療介護関係スタッフと高齢者からスタートしましたが、今週からは50歳以上の全市民も対象となりました。私もそろそろ接種を受けに行った方が良いかなと思っています。

こういう状況だったメルボルンの一市民として日本を見ると、日本の新型コロナ対応は、あまりに後手後手で、その場しのぎで中途半端に見えるんです。特にここ数週間、感染者が急増しているというのに、毎日何十人も亡くなっているのに、まだ人々が集まって飲食したりイベントをやったりしているし、

オリンピックをやろうとしている!

オリンピックを開催することには、基本的に2つの問題があります。

1つ目は、世界中から何万人もの人を入国させるということ。それは世界中の変異ウイルスが入って来ることを意味します。2つ目は、人が集まるという状況を作ること。人が集まれば感染が広がります。それは否定しようのない事実です。

先日、オリンピック委員会が看護師500人の派遣を看護協会に要請したというのを聞いてあっけにとられた私ですが、今度はスポーツ医として登録している医者を200人募集していると聞きました。看護師も医者もボランティア参加ですから報酬は出ないそうです。

総理大臣が誰かから聞いたという話によると、現在休んでいる人が大勢いるそうなので看護師500人は手配可能だそうですけど、病院などにお勤めのはずの医者が200人もボランティアに応募したりするんでしょうかね。

まあ確かに、感染者がわずかしか見つかっていない県もありますから、そういう県からボランティアに参加を希望する医者がいるのかもしれません。

でも、その500人の看護師と200人の医者が、オリンピックではなくてワクチン接種をおこなえば、どれほど日本国民にとって有益なことか。

それから、オリンピックに参加する選手や関係者は、自分が使うマスクは自分で用意しなくてはいけないと聞きました。そのため、マスクの種類に関するルールも決めたそうです。布製マスクの場合には、使用する布の種類についてもルールを作ったそうですけど。

パンデミックの中で開催されるオリンピックでは、新型コロナの感染予防が最も重要な課題なのですから、医療用レベルの使い捨てマスクを大量に準備しておくくらいのことはできたはずなのに。

驚いたことに、マスクは配布しないけどコンドームは何万個も配布することになっているんだそうで、もう開いた口がふさがりません。

それから、新型コロナの検査体制も心配ですよ。

世界中のあらゆる国から何万人もの人がやって来るわけですけど、私はその何万人もの人を毎日検査をする能力が東京都にあるのかどうかを疑問に思っています。

検査だけではないでしょ。それを外国語で通知し、感染者が見つかった場合には外国語で濃厚接触者の追跡をするという大変な仕事が待っていますよ。

現在でも他の先進諸国と比較すると十分な数の検査や追跡調査が行われていないらしいのに、オリンピックで何万人分の検査をやれる能力があるのでしょうか。

また、私が最も心配だと感じているのは、選手への特別待遇です。

何でも、世界中からやって来る何万人は、日本に来る前に検査を受けて陰性でなければならないため、入国後の隔離を免除するんだそうですね。

選手達は、入国後直ぐに練習をすることができるのです。

でも、感染者がいることは確実なんですよ。それはもう絶対にいるんです。

全豪オープンテニスの時だって、検査で陰性が証明されていないと飛行機に乗れなかったわけですが、入国後に感染者が見つかりました。

メルボルンでは、選手も関係者も全員、入国後の2週間の隔離が義務付けられていました。ただし、隔離中でも決められた時間と場所で練習はできるということにはなっていたのですがね、見つかった感染者と同じ便に乗っていた人達は選手も含めて全員濃厚接触者とされ、隔離施設のホテルの部屋から出られませんでした。

不公平だという不満が多くの選手達から噴出しましたが、特別待遇はありませんでした。

オリンピックでは、濃厚接触者であっても、場合によっては競技への出場が認められるそうです。

怖すぎます!

選手達は、滞在する宿泊施設と練習場と競技会場の限られた場所から出ることはできないそうで、これを「バブル」と呼んでいるようですが、この「バブル」から出ないのだから安全だと考えるのは大間違いですよ。

メルボルンで発生した第2波の感染拡大は、隔離施設のホテルが原因でした。入国した人達は、2週間ずっとそのホテルにいたんですからね。これは「バブル」よりもはるかに小さいんです。

そこからなぜウイルスが市内に広がったかと言うと、ホテルと市内の間を移動する人達がいたからです。最初は一人の感染者でした。その感染者が隔離されていたホテルのスタッフが感染し、そのスタッフから第2波の大感染が発生したんです。

考えてみてくださいよ、オリンピックのその「バブル」というのを。

その「バブル」に出入りしなくてはならないスタッフやボランティアが何万人もいるんですよ。ウイルスは、そうした人々によって市内に広がっていくのです。

全然安全じゃあないんです!

選手村に滞在せずに、自己手配ホテルに滞在して食事も自己手配する人達も多いですけど、彼らがルールに違反して「バブル」から出て来たりしないか、誰がどうやって見張るんですか?

性善説なんてきれいごとですよ。自分の利益のためにルールを破る人が大勢いることは分かりきったことです。

「バブル」から市内にウイルスが持ち出されるだけではなく、市内のウイルスが「バブル」の中に持ち込まれることもあるでしょう。

外国人の感染者が何十人も何百人も発生した場合のシミュレーションはできているんでしょうかね。誰がどうやってお世話をするのでしょうか。

人々の命に関わる感染症が蔓延しているという状況でのオリンピックなのですから、開催計画は状況に応じたいくつかのプランができているものと思いますけど、その計画には当然中止になる状況も想定されているはずなんですが、どうしてそれが発表されないんでしょうか。

各国の選手や関係者だけでなく、何万人ものボランティアの人達をいかに新型コロナから守るのかという計画も、感染したボランティアにはどう対応するか、どう医療を保証するのか、そういうことも何も発表されていませんね。

ボランティアは、感染した場合の医療費も自己負担なんですか。

そういうことを知らされずにボランティアとして参加する人達も心配でしょうね。

2021年の東京オリンピックが、感染超拡大イベントとして歴史に残るようなことに、

なりそうですよ!


今回のオリンピックは、状況次第では無観客で行うことも考慮していると聞きました。

無観客で行うとチケット収入を失うだけでなく、競技会場でのグッズ販売や飲食店の収入も無くなるわけです。すでに販売しているチケット代金の払い戻しも行わなくてはいけませんし、損失が大きいので避けたいはずです。

完全に中止すれば莫大な放送権料やスポンサー料を失いますから、赤字になるでしょう。赤字になった場合、東京都が負担することになっているそうです。

聞いたところでは、IOCの収入の7割以上を支えるのがテレビ放送権料だそうですから、とにかく開催を強行してテレビ放送さえできればなんとかなるということらしいですが。

オリンピックは今や一大商業イベントです。

今回は、このイベントを行うことで失われる命があることは確実なのですけど、これを強行するということは、人の命よりもこっちのほうが大事ということなんですよね。

失われた命に対して誰かが責任を取る覚悟でやるんでしょうか。


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