うちの娘は、私の60歳の誕生日のお祝いに、このクロカンブッシュを作ることにしたのでございました。
「中に詰めるのはフルーツ系のクリームでお願い!」というお母さんのリクエストに応え、ラズベリークリームを詰めることにしました。
人生初のクロカンブッシュ作りに張り切る娘ですが、前回作ったシュークリームが高さ1センチ以下という大失敗に終わったこともあり、「生地に入れる卵の量に注意しないとダメよ。レシピに書いてある量をそのまま入れると失敗するからね。生地の硬さを見ながら入れなくちゃ」というお母さんのアドバイスに従いました。
固さはこれでいいかと私に見せに来たんですけど、パーフェクトな固さのシュー生地でした。
あれをしてくれ、これを頼むと、アシスタントの兄を犬のように働かせながら(手伝ってもらいながら)生地を2枚のトレーに絞り出し、無事オーブンに入れ終わったようでした。
次に中に詰めるラズベリークリームの準備に取りかかった様子のキッチンから、
パシッ!
という異音が響きました。
「今のは何?何か破裂したような音がしたけど?」
と、娘がアシスタントの兄に尋ねているのが聞こえました。別の部屋でアメリカ大統領選挙のニュースを読んでいた私にも「パシッ」という音は聞こえたんですけど、あの時すぐに様子を見に行っていれば…
その10分後くらいです。
オーノー!
縮んじゃってる!ちゃんと膨らんでいたのに!
ディザスターだ!どうしちゃったんだ!
Shit! Shit! Shit!
と、娘が大騒ぎしているものですから、キッチンに行ってみますと、オーブンの下段に入れた方のシューが縮んでいました。
「これは温度が低すぎるのよ」
「温度は大丈夫なはず!ちゃんと膨らんでいたの!」
「ドアを開けたんじゃあないの?」
「開けてない!」
その時、私はオーブン内が真っ暗なことに気づきました。電源が落ちていました。
「オーブンが消えてるじゃないの」
「ホントだ!このオンボロオーブンめ!」
「さっきパシッて音がしたでしょ?庫内灯の電球が切れたのよ。それで安全ブレーカーが落ちたのよ。ブレーカーを上げたらオーブンはまた付くわよ」
でくのぼうのように突っ立っていた息子が、それを聞いてすぐに走って行きまして、安全ブレーカーを上げましたらオーブンは付きました。
しかし、
すでに手遅れ…(泣)
下段のシューは高さ1センチ以下に縮んでおり、上段のシューも縮みかけておりました。縮んじゃったシューは、温度を上げたってもう膨らみません。
張り切っていた娘は、焼き上がったぺちゃんこのシューをオーブンから取り出した後、しばらく部屋にこもってしまいました。
気持ちは分かる。
よりによってあのタイミングで電球が切れるとは…
気づくのがもっと早かったら…
せっかく作った美味しいラズベリークリームはぺちゃんこのシューにほとんど詰められず、クロカンブッシュは予定していた形にはなりませんでしたけど、味は大変美味しかったです。
ぺちゃんこになったシューをキャラメルでくっつけて円錐形の土台を作り、少しは膨らんだシューにラズベリークリームを詰めたのをそれに貼り付けてから、余ったキャラメルでフロスを作って飾ったそうです。
よく頑張ってくれました。
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