何も言わずに家に入って来て、居間でテレビを観ていたうちの夫に抱きついて泣いていました。何かつらいことが起きたと分かりましたが、夫は「何があったんだ」とも聞かず、ただ抱きしめ続けていました。
私もしばらく黙って一緒に座っていました。
大学院で心理カウンセラーになるための勉強を続けている娘が、今年の7月からは司法精神医療施設で研修をしていることは度々話題にしています。
その施設はヴィクトリア州の「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」(Forensic Disability Services)の一部で、刑事司法制度に関わる事件を起こした人々の中で精神障害や重篤なメンタルヘルスの問題がある人達に治療と社会復帰のためのサポートを提供しているんです。
娘が研修をしている施設に収容されている人達は、ほとんどが知的障害のある性犯罪者です。凶悪な犯罪を犯した人達もいるんですけど、収容されている男に女性のスタッフが襲われて、床に押し倒されて首を絞められるという事件が起きたんだそうです。娘はそれを目撃した一人でした。
一瞬のうちの出来事で、非常に凶暴で、身がすくんだそうです。クラヴ・マガのトレーニングを何年も続けていて護身術には自信があった娘も、女性が襲われる場面を見て現実の恐しさを知ったのです。
娘がさらにストレスを感じたのは、その事件後の管理職の対応だったそうです。日頃から問題が多いと感じていたその管理職の男性が、事件が起きたことについて他のスタッフ達を叱責したんだそうです。事件の直後ですから、その怒鳴り声で娘は余計に動揺しました。
研修中の学生である娘へのサポートは「大丈夫か?」の一言だけだったそうです。
この施設での研修は4ヶ月が経ちましたが、娘は犯罪者にカウンセリングを行って社会復帰させることの困難さをすでに理解していましたし、現実的にそれが可能なのか、やるだけの意味があるのかという疑問も感じ始めていました。
もうあそこには行きたくないと泣きながら話していましたが、しばらく私達と話をした後は、大学院を卒業するためだと割り切って、あと2ヶ月頑張るしか無いと前向きに考えられるようになっていました。
この研修が始まる前は、大学院卒業後の進路として犯罪者を相手にする司法心理カウンセラーの仕事を考えていたのですが、考え直し始めたようです。
こんなことを書くと批判されるでしょうけどね、娘の話を聞いたり新聞の記事を読んだりして、私は知的障害のある犯罪者達への治療や社会復帰へのサポートに莫大な税金を使う現実的な意味があるようには思えませんでした。
その犯罪者達の知的障害や生まれ育った環境についてはお気の毒に思いますが、カウンセリングであの人達が善良な市民に生まれ変わる可能性はほとんどありませんよ。
治療を受けて安全と判断されて社会に出た途端に再犯というケースが多いことが、それを表しているでしょう。居場所を24時間モニターされ続けているのにですよ。
正直なことを言うと、襲われたのがうちの娘ではなくて良かったと思いました。襲われた女性スタッフは大変お気の毒でしたけど、スタッフが襲われることは最初から想定されていることです。いろいろな対策が講じてあるという話だったんですけど、やはりこういうことは起きるのですよ。
襲われてショックを受けているその女性スタッフの目の前で、管理職が他のスタッフ達を叱責し、収容されている他の犯罪者も興奮して恐ろしいことを叫び、誰も彼もが怒鳴り声を上げているという状況は良くないですよ。
娘にはそんな職場で働いて欲しくないですけど、何とかあと2ヶ月頑張って欲しいとも思います。8年間の苦労がこんなことで無駄になっては残念過ぎますから。
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