死ぬ日が決まっているというのはどういうことなのかと思ったら、安楽死することになっているんだそうです。
尊厳死の話題はこのブログでも何度か取り上げましたが、ヴィクトリア州では2017年11月に自発的安楽死を合法化する法案が可決されました。その後1年半をかけて組織とシステム作りが行われ、2019年から自発的安楽死が可能になったんです。
現在、オーストラリアでは北部準州と首都のキャンベラを除く全ての州で自発的安楽死が合法化されています。
病院などの医療機関でなくても、自宅で家族や友達に囲まれて最後の時を迎えることが出来るシステムになっているそうです。2種類の液体薬を混ぜて飲むことで静かに永遠の眠りにつくことが出来るそうですから、特別な医療スタッフは不要です。
この薬を飲み込むことが出来ない場合は、別の方法が選択できます。その場合には、第三者の証人の立ち会いのもと医師が援助するそうです。
金曜日に安楽死することになっている夫の同級生は、前立腺がんが見つかったのだそうですが、自覚症状が出て診察を受けた時にはがんはすでに進行していて手遅れの状態だったそうです。
オーストラリアでは大変よく聞く話です。日本のように定期的な健康診断などする人はまずいませんからね、がんの早期発見は難しいのですよ。診察を受けた時には手遅れだったというのはよくあるパターンなんです。
前立腺を全て摘除する手術は行われましたが、がんを全て取り除くことは出来ませんでした。がんがさらに進行して余命が6ヶ月と分かり、自発的安楽死の申請をしたそうです。
この方は、結婚をしたことはなくて子供さんもいらっしゃらないそうです。元々は会計士をされていたそうですが、メンタルヘルスの問題がおありでした。人生を変えるためにと勉強をし直して看護師になり、メルボルンの小児病院の救急病棟に勤めて来られました。
医療の仕事についておられたので、自発的安楽死の申請についてもよくご存知でした。
申請すればすぐに安楽死出来るわけではないんですよ。厳しい条件がいくつもあるのです。安楽死を申請できるのは本人だけですし、審査には時間がかかりますから、安楽死を希望する場合は申請をする時期に注意が必要だそうです。
同級生の方は、申請が認められて死ぬための薬を手に入れてからは、心配が無くなって大変心が穏やかになったそうです。家族と一緒に小旅行に行って楽しい時間を過ごし、自分の持ち物や財産の処理も終えました。
最近自分の力で動くことが出来なくなり寝たきりの状態になったことで、今週の金曜日に死ぬことを決めたそうです。そのための部屋が借りられて必要な介護を受けられる病院に入っておられます。
心安らかに金曜日を待っていたところへ、突然高校時代の同級生が現れたのでびっくりしたそうですよ。
その病院で金曜日を待っていることは誰にも言わなかったし、家族にも言わないようにと頼んでおいたのに、どうやって知ったのかと同級生は夫に尋ねたそうです。
どうやって知ったかと言いますとね、義母(夫の母親)から聞いたのです。同級生のお父さんが親しい友人のHさんにこのことを話しました。Hさんは義母のご近所さんで家族のように親しい仲です。Hさんからこのことを聞いた義母が夫に教えたのです。
うちの夫は、仕事が休みの昨日この同級生に会いに行きました。同級生は、「来てくれてありがとう。ゆっくり話が出来てよかった」とおっしゃったそうです。
すっかり落ち着いてリラックスしている同級生を見て、自分が同じような立場になったら絶対に同じ選択をすると夫は宣言しました。そんなことはもう何十年も前から知っていますよ。
耐え難い痛みや苦しみに直面する終末期患者が、自分の命の終わり方を自分で決めることが出来るようになったことは、本当に良かったと私は思っています。
安楽死に対する考えは人それぞれで、強い薬で意識が無くなった後も命が続く限り生き続けたいとお考えの方もいらっしゃるでしょうが、夫も私も終わりは自分で決めたいと思っています。
同級生の方の家族も同じ考えで、この方の選択を支持しておられるそうです。悲しいことですけど、自分が自分でいるうちに自分が望む通りの終わり方をする、それがオーストラリアでは可能になっていることに私は安心を感じます。
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