2020年10月21日

その頭痛、原因はトラウマかもしれません

子供の頃にトラウマを経験している女性は、更年期にうつ病を発症するリスクが大きくなるという研究報告があります。その原因はまだよく分かっていません。

でも、更年期になって頭痛や胃腸の不調に悩まされている方や、気分が落ち込んで元気が出ないという方は、子供の頃のトラウマが原因かもしれないということを知るべきです。

必要なのは、更年期のホルモン治療ではなく、トラウマを処理する治療かもしれません。

トラウマは「心の傷」です。原因は様々です。

「心の傷」は「身体の傷」と同じように、消えて無くなるものではありませんし、治りにくい傷もあります。そして、この傷が様々な生きづらさとなってその人を苦しめる場合があります。

以前放送されたというNHKのクローズアップ現代「トラウマからの解放〜うつ病・身体の痛みの知られざる原因」をご覧になると理解の助けになると思います。非常に多くの人が、家庭で家族や身近にいる人から、トラウマになるような出来事を経験していることが分かります。

身体的虐待、心理的虐待、性的虐待などのように大人から子供への直接的な出来事だけでなく、両親の喧嘩や大人同士の不和(嫁いじめとか)を見るといった間接的な出来事もトラウマの原因になります。

家庭でトラウマになるような出来事を経験する子供は、つらい出来事が日常的に繰り返される場合が多いわけですが、安心して過ごせる場所を失うことは、子供の心に大きな影響を及ぼすであろうことは容易に想像できることです。

また、大人にとっては些細なことでも、子供にとっては大きな「心の傷」となって残ることがありますし、年齢が低いほど影響は大きいとも言われています。

私の話をしましょう。

私の夫は、知り合った頃にはパニック障害を患っていました。バスや電車に乗ることが困難で、車を自分で運転すれば外出できても、信号で停まったり道路が渋滞してくると発作を起こしました。

長男が生まれた頃に症状が悪化して、一時期は家から出られないほどになりました。治療とカウンセリングで回復しましたけど、それは幼い頃のトラウマが原因だと分かり、その治療が成功したからです。

治療では、NHKの番組でも取り上げていた EMDR(眼球運動によるトラウマ処理法)が使われました。催眠によりつらい体験を思い出させ、非常に強い不安や恐怖を感じている状態で EMDR が行われたそうです。風船がしぼむように張り詰めていたものが消えてなくなったそうです。

一方、夫が発作を起こすのを日々目撃し、いつ発作が起きるか分からないという不安を繰り返し経験した私は、その不安や恐怖が引き金になり、自分自身が幼い頃に経験した不安や恐怖のトラウマがよみがえってきました。

私は幼い頃の家庭での出来事を何も覚えていなかったのですが、断片的に思い出したのは当時住んでいた小さな家の壁やふすまや畳や電灯でした。そして、そうしたものと結びついた苦しい気持ちや父が怖いという気持ちを思い出したのです。

これがきっかけで、私は自分の幼い頃のことを母にたずねてみたのですけど、母は幼い頃の私のことを覚えていませんでした。分かったのは、とにかくしょっちゅう泣いていたことと、どんなに泣いていても「泣くな!」と父に怒鳴られると声を押し殺して泣くのをやめたということでした。

私は子供の頃に、トラウマとなるような出来事をいくつも経験していました。ここにその詳細を書くことは長くなるので控えますが、私がその後うつ病を発症したことと子供の頃の恐怖や喉に物が詰まるような苦しさの経験とが関係していることは明白でした。

私は、医者から処方されたSSRI 薬で気分が安定した後、心の病気を理解するために様々な書物を読みました。英語でカウンセリングを受けることに懐疑的だったので、自分でできることをやってみることにしました。

トラウマ処理の方法は研究が進んでいますが、自分で取り組めることは限られています。

私がやってみたことの中で効果があったと思うのは、トラウマ経験を書き出すことでした。書き始めてみると、それまで忘れていた別の記憶がよみがえって来たりもしました。

書いた文章は自分で読み返します。声に出して読むことも効果があったと思います。

最初の頃は読みながら泣いていましたけど、次第に子供の頃の自分を客観的に見ることができるようになったと感じます。

また、トラウマの原因になった両親と距離を取ることにしました。母のことは大事に思っていますから距離を取ることに罪悪感を感じましたが、距離を取る必要がありました。

トラウマというのはできれば思い出したくないし触れたくない「心の傷」です。やり方を間違えて悪化させてしまう可能性もありますから、私はここで具体的にこうした方が良いですよと提案はできません。

でも、アドバイスはさせてください。

  1. まず一番に、トラウマが原因になっているかもしれないということを理解しましょう。
  2. トラウマに立ち向かうのには力が要ります。日々の暮らしが普通にできる程度の心のゆとりが必要ですから、薬を服用してメンタルを安定させることをオススメします。オーストラリアにお住まいでしたら、こういうこともGPに相談すれば薬を処方してくれます。最初の診察は、予約する時間を長めに確保した方がゆっくり話し合えます。
  3. 関連書物を読んでこうした問題について理解し、どのような対処方法があるのかを把握しておきましょう。
  4. 身近にいる安心できる人にできる限り理解してもらいましょう。ただし、その人にとって二次的トラウマにならないように注意しなければいけません。
  5. トラウマに立ち向かうのはつらいですから、気分を紛らわすために何か没頭できるものに依存してしまう場合がありますので注意しましょう。
  6. 更年期に限らず、うつ病になりやすい人には、いくつかの特徴があると言われています。「~すべき」と考えたり、妥協できない完璧主義で、几帳面な思考の方はリスクが高く、そうした考え方や思考の傾向を変えていくことも必要です。私はまさにそれでした。

多くの人が成長するにつれて子供の頃のトラウマを忘れてしまいますが、「心の傷」は消えて無くなってはいません。大人になってから経験する生きづらさや、あるいは頭痛や胃腸の不調といった身体的な症状や、うつ病や摂食障害や依存症などの問題が、子供の頃のトラウマとつながっている場合は大変多いのです。

身体の不調の原因がトラウマである場合、トラウマをなんとかしないとその不調は解決しません。

苦しいのを我慢して頑張り続けても、らくにはならないかもしれません。


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