2024年8月30日

見えない火傷痕

月曜日に届いた新しいパスポートに印刷されていた白黒の顔写真が黒っぽくて、目の下のたるみが激しく強調されていたという話を「郵便配達さんとパスポートの写真」という記事に書いたばかりなんですけど。

目の下のたるみも強調されていたけど、顔の火傷痕も強調されていてショックを受けたんですよ。カラー写真ではそれほど気にならなかったんですけど。

昨年のちょうど今頃、白玉団子を油で揚げていたのが破裂して熱い油を顔面に浴びてしまい、病院に運ばれるという事故があったんです。

火傷の痕は薄くなったと自分では思っていたのに、パスポートの白黒写真でははっきりと分かるので少しショックだったのです。

若い頃なら気になって、ファンデーションで隠そうとするかもしれませんが、最近はもうファンデーションなんて塗りませんしね、それほど気にはなりませんけど、顔に火傷痕があるというのは嫌なもんです。

こういう日常のどうでもいいような話をうちの夫とすることが、最近はあまりありません。夫がいつもオーディオブックを聴いているからです。

水曜日に「Touch」というアイスランド映画を観に行った時には、久しぶりにどうでもいいような話をいろいろしたんです。新しいパスポートが届いたことも教えました。

「… そうしたらねえ、白黒の顔写真が印刷してあるページがあるでしょう?その写真がねえ、すごく黒いっぽくて顔の火傷痕が目立つからショックだったわよ」
「火傷痕?」
「ほらあ、団子を油で揚げていて顔に火傷をしたじゃん!あの火傷痕がね、自分では薄くなったと思っていたんだけど」

それを聞くと、夫は首から下げていた眼鏡をかけて私の顔をじっくり見始めました。明るい窓の方に私の顔を向けて真剣に見ています。

「ここのところとか… こことか... まだ少し茶色いけど、このへんのはもうだいぶ薄くなっているでしょ?」

「ホントだ、まだ残っているなあ」と言うと思ったんですけど、

「ぜんぜん見えない!」

と言ったんですよ。

「見えないの?ホントに?ここの茶色いのも?」
「見えない!よかったなあ!見えなくて!」
「ホントよねえ!一番大事な人に見えないんだったら気にすることもないわよねえ、ワハハハハ!」

遺伝性の黄斑変性「スターガルト病」で視野の中心部分では見えなくなっているうちの夫ですが、文字はまだ読めるけど私の顔の火傷痕は見えなくなっているという、どうでもいいような話でございました。


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