2024年8月18日

アンクル・トムで2日間ほぼ無言

オーディオブックというのは、本の朗読を録音したものです。運転中や手を動かす仕事をしながらでも聴くことが出来るので、皆さんの中にも利用されている方がいらっしゃると思いますが。

うちの夫は目が見えなくなって来ていて本が読めないのでオーディオブックを聴くのです。

このオーディオブックのせいで夫と私の間で会話をすることが激減していることについては、「会話が減っている原因」とか「朝から晩までほぼ無言」とか、いろいろ記事に書いていますけど。

金曜日と土曜日の2日連続で仕事が休みだったうちの夫は、天気が良かったら例の夫の父親が再び売りに出した家のメンテナンスに行くつもりだったようですが、天気が悪かったので家にいたんです。

そして、2日間ほぼ無言でした。オーディオブックを聴いていたからです。

先日から聴き始めたと言っていたのは、ハリエット・ストウ著の「アンクル・トムの小屋」(Uncle Tom's Cabin)でした。私も小学生の頃に読んだことがあります。

黒人奴隷トムの不幸な半生を描いている本で、奴隷解放への世論を喚起したと評価されていますよね。米国は奴隷解放問題を一つの引き金にして南北戦争に突入したわけですから、当時の米国社会に大きな影響を及ぼした本なのです。

金曜日の朝、オーディオブックを聴いている夫に聞きました。

「今は何を聴いているの?」
「ええ?アンクルトムの小屋だよ」
「あら、まだ終わっていなかったの」
「終わっていないよ!ものすごい長編なんだよ!」

調べてみると、本来はトムだけの話ではなく奴隷制度を様々な角度から考察する内容なのだそうです。アマゾンの電子書籍 Kindke 本の場合は600ページくらいあるんです。日本語版は600ページを超えています。私が小学校の頃に読んだのは、児童向けに編集されたものだったのですね。

朝から晩まで聴き続けていましたが、疲れて眠くなるとベッドに行って昼寝をしたり YouTube 動画を見たりしながら、2日間ほぼ無言でした。話しかけると迷惑になると知っているので、私も話しかけられないわけですよ。

同じ部屋にいても黙ったまま。家の中がシーンとしていた2日間は、ちょっとイヤな感じでした。


小学生の頃に読んだと思った「アンクル・トムの小屋」ですが、トムがリンチに遭って死んでしまう場面は覚えていないので、最後まで読まなかったのかもしれません。

映画やテレビドラマなどから知る米国に黒人差別問題があることなど、子供の頃はよく知りませんでした。

初めて詳しく知ることになったのは、小学校の教師を辞めて米国に行くことになった時です。インターンシップ・プログラムで米国の学校に日本語や日本文化を教えに行ったんですけど、派遣先がアラバマ州だと知った時でした。1989年のことです。

調べてみると、公民権運動の勃興のきっかけになった事件が起きたのがアラバマ州のモンゴメリーという街でした。当時の私は公民権運動についても知識が無かったです。

偶然にNHKで公民権運動に関するドキュメンタリーを見て驚愕したことを思い出します。

公民権運動が起きていたのは60年代でした。公民権法の制定が1964年。その後も黒人差別意識は終わらず、黒人への殺人だのリンチだのと言った暴力事件は続き、暴動が頻発し、公民権運動の指導者だったキング牧師が暗殺されたのは1968年。私が子供の頃ですよ。大昔の出来事ではないんです。

今もまだ根強い差別感情が残るという場所にアジア人の私が行って大丈夫なのかと不安になったのを思い出します。

私が派遣された学校のある小さな町は、住民のほとんど全員が白人でした。アラバマ州でそういう町は珍しいと思います。週に3日は教会に行くような人達ばかりで、そうした人達に私はとても親切にされましたけど。

今から思い返すと、様々な偏見や差別があったことを理解できます。

米国大統領選挙が近づいていて政治的な発言を聞くことが増えていますが、2024年の現在もまだ人種差別的発言をする人達が大勢いますね。

人種差別や民族差別感情を持つ人達は、オーストラリアにも日本にもいますよ。しかし、メルボルンではこの30年くらいの間にかなり改善したと感じます。いろんな人種や民族の人達がいるのが当たり前になったからでしょう。

異なる人種や民族の子供達が一緒に遊んでいるのを見ると、とても微笑ましく感じます。ああいう子供達は、自分とは異なる人種や民族に対して差別感情を持つような人にはなりませんよ。

うちの夫が「アンクル・トムの小屋」を聴きながら沈黙している横で、いろいろなことを考えた2日間でした。


お帰りの前に1クリックを!



0 件のコメント:

コメントを投稿