2023年10月24日

引っ越し大変記(2)「押しかける人」

引っ越し先の家の鍵を受け取った金曜日、あれほどヘトヘトになりながら一人で荷物を搬入した私のことを、どうしてそこまでする必要があったのかと思われた方もいらっしゃるでしょう。

土曜日には引っ越し業者が来るんだから、業者に任せたらいいだろうにと思われたかもしれません。そりゃあ私もね、経済的の余裕があればそうしたかったですけど。

引っ越し業者の見積もりでは、1時間あたり250ドルだったのですよ。時間がかかればかかるだけ費用が高く付くから、経済的にゆとりがない私達は金曜日に出来るだけたくさんの荷物を搬入しなくてはいけないと、夫からプレッシャーをかけられていたんです。

しかも、その日には家を買いたいという人が見学に来るとも聞いていたんです。だから、私は体力の限界を超えて頑張ったのです。

何度も書きますが、うちの夫は腎臓摘出手術の後は安静にしている必要があって、引っ越し直前は荷造りも片付けもしませんでしたし、重い物を持つことが出来ませんからあまり役に立ちません。

うちの息子は3回目の痔の手術から何ヶ月もかかってやっと良くなっていたのに、引っ越しの準備で家具を動かしたり重い物を持ち上げたりしたせいで再び悪化してしまったんです。

そういうわけで、荷造りも掃除も荷物の搬出入も、全部私一人が頼りだったわけです。

引っ越し業者は、土曜日の朝7時半にやって来ました。思っていたのよりも小さいトラックでした。「このトラックに家具や電気製品が全部入るわけがない!」と私は思いました。

ポルトガル語で会話するブラジル人の2人組が丁寧に家具や電気製品をトラックに乗せている間、私はカローラに荷物を詰めました。夫はこの日、ついにエンジンがかかった車のように突然パワー全開となり、早朝からガレージの片付けをしていました。

いつもこれです。いよいよもう時間が無いという最後の最後の時になって始めるのです。しかしね、今回はちょっと遅過ぎますよ。ガレージに残っている物の量がハンパないですから、空にするには最低でも数日はかかるだろうという状況でした。

ツールショップの同僚のCさんがこの日も再び手伝いに来てくださったので、ガレージを空にするのを手伝ってもらっていました。

うちの息子もガレージの手伝いを始めましたが、2人とも切羽詰まってやるしか選択肢がなくなったもんですから、かなり無理をしているように見えました。夫も息子も本当は重いものを持ったり立ち続けたりする仕事はしてはいけないんですけど、もうやるしかない状況です。

私はカローラに荷物を積み終えてから家の中の掃除をしました。この日、家を買いたいという人が見学に来ると聞いていましたからね、掃除ができるところはやっておこうと思ったんです。本格的な掃除は家具や荷物を全部運び出した後にする予定でした。

ついにトラックがいっぱいになった時、まだ冷凍庫も本棚もトラックに入っていませんでした。引っ越し屋は、その日の午後に別の予定が入っていたため、2回目の搬入を頼むことは出来ませんでした。

家具すら全部積み込めていないんですから、箱なんて1個も入らなかったのですよ。前日の金曜日に私が頑張って荷物を運んでおいて本当に良かったです。

それとね、引っ越し先の家の周囲は狭いので、大きなトラックを依頼していたら困っていたと思います。うちの夫はその問題も考えてこの業者を選んだそうですけど、とにかく家にはたくさんの家具や荷物が残りましたから、引き続きカローラと夫のトラックを使って自分達で搬入するしかないのでした。

うちの息子は、お尻の痛みを我慢すればトラックの運転は出来るんですけど、トラックに荷物を乗せたり下ろしたりが出来ませんから、Cさんが来てくださって本当に助かりましたよ。

引っ越し屋が荷物の搬入を終えて帰って行った後、私がカローラで荷物を取りに家に戻ると、義母(夫の母親)とそのパートナーが来ていました。

義母達は、私がバスルームに残していた個人的なものや掃除用品、居間に残っていた荷物、仕事部屋に置いてあったコンピューターのコードなどが入っていた箱、洗濯室にあった洗剤類や掃除道具など、家の中に残っていたありとあらゆる物を、勝手に全部家から持って出て家を空っぽにしていたんです。

そのせいで、私は何がどこにあるのかが分からなくなってしまいました。私の個人的なものも含め、持って出たものはガレージの汚れたコンクリートの上に直に置いてありました。

私が戻って来たのに気付いた義母が、ガレージにやって来ました。

異常な焦りようで不機嫌になっていました。「2時半までに家をキレイにしないといけないのに、まだこんなにたくさんの物が残っているじゃあないの!」と私を批判しました。

義母が掃除をしに来てくれるとは聞いていましたが、それは私達を手伝うためだと思っていたんですけど、理由は違っていたんです。

この家を買いたいという人が午後2時半に見学に来ることになっているので、2時半までに家の中を空にして掃除をして「見学してもらうのに相応しいレベル」にする必要があるという理由でやって来ていたんです。

ガレージにもこんなにたくさん物が残っていて一体どうする気?2時半までに何とかしないといけないのよ!どうしてこんなにいっぱい残っているの?今日見学に来る人はこの家を買うことにものすごく興味があるんだから、2時半までに家をキレイにしておかないといけないのに!家の中に残っていたものは全部私が出しておいてあげたわ!2階のバスルームも私が簡単に掃除をしておいてあげたから!

もすごいプレッシャーをかけてくるもんですからね、日頃めったに義母には言い返さない私も言い返したんですよ。

ガレージに物がいっぱい残っているのは、すべて夫(彼女の息子)に責任があります。片付けに取り組む余裕は何ヵ月もあったのに何もしなかったんですから。家の中にまだ物が残っているのも仕方がないです。私達は引っ越しをしている最中なんですよ。掃除ができていないのも仕方がないです。見学に来る人は、私達が今日引っ越しをしていることを承知で見に来るんだから、物が残っていても掃除ができていなくても仕方がないと分かっているはずでしょう。

ところが、

私に言い返されたので腹が立ったのか、義母はヒートアップして、うちの夫がガレージの片付けをしなかったことを正当化するようなことを言い、家がキレイでないとこの買い手を逃してしまって家の持ち主である娘(うちの夫の妹)が大損でもするかのようなことを言うのです。

さらにガレージの中を見て回り、10年間手つかずだった日除けシートを見つけて、それは捨てるしかないと言う私に「以前からこの家にあったものならこれも娘(うちの夫の妹)の持ち物よ!娘はこれも売ってお金にできる!」と怒鳴るのでした。


私はもう義母と話をする気になれず、荷物をカローラに詰めて引っ越し先へ行きました。

引っ越し先で荷物の搬入を終え、疲れ果てて途方に暮れていると、聞き慣れた声が聞こえて来ました。

義母がやって来たのです!

Cさんと荷物の搬入をしていたうちの夫が私と入れ替わりで家に戻り、勝手なことをしている義母と衝突したらしいのです。見学人が来たのでそれ以上の掃除も出来ないため、荷物を運んで来てくれたのですけど。

引っ越し先の家を見て回り、あれはどこに置くのか、この部屋はどう使うのかとかあれこれ聞いてから、家の中の片付けを手伝おうとしたので丁寧に断りました。

彼女の行動は、自分の娘のことを考えてのことだったとは分かりますが、2時半までに家を空にして掃除をしておかなければいけないと思い込んで苛立っており、私達にとっては迷惑以外の何物でもなかったです。

家の中に残してあった物がどこにあるのか分からなくなったのも問題です。

(つづく)


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