2023年10月19日

捨てられない人の葛藤と小さなオーバーオール

「足が棒のようだ」というのは実に言い得た表現なんですけど、腰とか上半身もそういう状態になっているのを表現するいい言葉はないもんですかねえ。

いやあ、私の身体は、足も腰も上半身も「棒のよう」ですよ。

私は荷造りだけやっているわけには行きません。毎日の家事もあります。昨日は大変良い天気でした。娘の寝室が空になりまして、べッドなどの家具をガレージに持って出ましたので、シーツやマットレスプロテクターなどを洗濯したんです。

ついでなので、イケア(IKEA)の椅子のカバーも外して洗ったりして、大量の洗濯をしました。

しかも、夫の腎臓摘出手術後の検診があったので、夫を病院に連れて行かなくてはいけなかったし、朝から晩まで大忙しの一日でした。

おまけに、近頃は毎日花粉症でくしゃみを連発していますから、余計に疲れます。しかし、疲れたなどと言っていられません。いよいよ明日は、引っ越し先の家に荷物を運び込み始めるんですからね。

そういう状況なんですが、気になっているのは元気が無いうちの夫です。

腎臓摘出手術の傷は良くなっているんですよ。一つだけ残った腎臓はちゃんと機能しているようですし、健康面での心配は無いんですけどね、

元気が無いんです…

引っ越しまで残り時間わずかになって来たのに、いつまでたっても手を付けようとしない本とオーディオブック(本をプロの方が朗読したものを録音したもの)をそろそろ何とかしなくちゃあいけないよと言いましたら、昨日やっと本の整理を始めたんですけど。

ほとんどごみ箱行きなんです。そして、夫は本の整理をすぐに止めてしまいました。オーディオブックには手も付けてもいません。

自分にとって大事だったものを手放し続けていることが、メンタルに影響しているようです。

ごみ屋敷状態になっていたガレージにあった道具や機械と同じように、本は夫にとって大事なもので、本当にたくさん持っていたんですけど、今回の引っ越しを機に捨てたりチャリティーショップに寄付したりして手放しました。

その作業は途中止めになっていたのですけど、やっと昨日再開したのにまたすぐに止めてしまって。

うちの夫は、遺伝性の黄斑変性である「スターガルト病」で目が見えなくなって来ていますから本はもう読めないので処分するしかないんですけど、最後まで処分できずに残していた本を結局捨てるしか無いと判断しながら気持ちが沈んだのでしょうか。

物を捨てられない人が、捨てるしか選択肢がなくて捨て続けているわけですが、悲しみ、虚しさ、不安、そういうネガティブな感情でいっぱいになっているのかもしれません。

割と平気で持ち物を手放せる私にも、そのくらいは想像できますよ。

そんな元気がない夫の横で、昨日、私は戸棚の上から箱を1つ下ろしました。この10年一度も開けていない箱でした。何が入っているのかも忘れていました。

箱を開けてみたら、何とうちの子供達の幼い頃の服が入っていたんです。着なくなった子供服は、知人に譲ったりチャリティーショップに寄付したりして残っていないと思っていたんですが、特に思い出のある服を保存していたのですよ。

その中に、うちの息子が2〜3歳の頃に着ていた大工用のオーバーオールがあったんです。

それを見たとたん、夫は泣きそうになりました。

夫と幼い息子がおそろいのオーバーオールを着て、当時夫が自分で増改築していた家のガレージ前で並んで撮った写真があるんですけどね。その写真を見ると、夫はいつも感情的になるんです。

夫にとってよほど特別な思い出と結びついているのでしょう。

当時は、長年苦しんだパニック障害からやっと回復して、いろいろなことに取り組めるようになった頃でした。当時住んでいた小さな家を自分で増改築したんですけど、そのために独学した知識や使った機械がきっかけで夫の人生が動いて行くことになったんです。

いろいろな出来事の思い出とその小さなオーバーオールが結びついているのでしょうね。

できるだけ持ち物を減らしたいとは思っていますけど、なんでもかんでも処分した方が良いわけではないですね。特別な思い出がある物は、古い服にしても道具にしても食器にしても、場所は取っても残しておく価値がある場合もあります。

そのオーバーオールは、きっと私達が死ぬまで手元に置いておくと思います。


お帰りの前に1クリックを!



0 件のコメント:

コメントを投稿