今年の映画賞をほぼ総なめにしている映画と言えば、「Everything Everywhere All at Once」という映画ですね。邦題は、英語のタイトルをそのままカタカナにした「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」です。良い邦題が思いつかなかったからそうなったとしても理解できる内容の映画でした。
この映画のことを「奇想天外キテレツ映画」という記事に書いたのは1月12日のことですが、私がこの映画を見終わって最初に思ったのは、
ミッシェル・ヨーさんに何か賞をあげてください!
そうしたら、同じように感じた人は大勢いたんですよ。
ミッシェル・ヨーさんは、これまでにメジャーな映画賞の主演女優賞をほぼ全て受賞しています。例外は英国アカデミー賞(BAFTA映画賞)くらいなものでしょう。
米アカデミー賞の授賞式が、オーストラリア時間だと今日のお昼前から始まります。もちろんミッシェル・ヨーさんは主演女優賞にノミネートされていますが、アジア人女優が主演女優賞にノミネートされたのは初めてだそうです。受賞して歴史を作って欲しいです。
エンターテインメント業界では、これまでアジア人が活躍するチャンスがあまりなかったわけですが、世の中は変わって来ました。オーストラリアでもそうですよ。映画やテレビに限らず音楽の世界でも、実力のある人が評価され、機会が与えられて活躍できるようになって来ました。
アジア人だというだけで下に見られ、不平等な扱いを受けていた時代は昔のことだと言ってもいいと思います。まだ差別は無いわけじゃありませんけど、より公平な社会に変わって来ました。
現在オーストラリアで暮らしていらっしゃる若い皆さんは、アジア人という理由で差別されたことがないかもしれません。
私がオーストラリアに住み始めたのは30年も前のことですが、当時はまだいろいろありました。私自身、これまでに何度も差別を経験しています。
日本では差別されたり不当な扱いを受けたことが無かったため、こうした経験がトラウマになりましてね、メンタルヘルスに大きな影響がありました。
オーストラリアという国は、白豪主義(ホワイト・オーストラリアン・ポリシー)と呼ばれる白人優先主義とそれに基づく非白人への排除政策がある人種差別の国だったんですよ。
先住民を合法的に殺していた時代もあるのです。入植の邪魔になるという理由だけでなく、スポーツハンティング、つまり娯楽としても殺していたんです。
白人優先主義の政策を転換したのが1975年です。法律的に人種差別を禁止し、多文化多民族主義を国策として掲げるようになったわけですけど、白人至上主義的な人種差別意識は根強く残っていました。今でもそれはありますよ。
多文化多民族主義を嫌い、アジアやアフリカからの有色人種の移民が増えることを嫌悪する人はまだ大勢います。
しかし、様々な人種や民族の子供がいる学校の教室で、異なる文化や人種を尊重することの大切さを教育された世代が増えるにつれて、人種差別意識は減って来たと私は感じています。
このように変化して来た社会で、アジア人が活躍するのを見るのはうれしいですし、アジア人が正当に評価されるのは素晴らしいことです。
「奇想天外キテレツ映画」と思った「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が、米国映画界に一つの大きな変化を起こしましたよね。
これからもっと変化していきますよ。
そして、人種や皮膚の色に関係無く、異性愛者だろうが同性愛者だろうがそういうこととも関係無く、人が人として純粋にその人が成し遂げた結果で対等に評価されるのがあたりまえの世の中になって行くでしょう。
映画やテレビの賞では、そのうち演技賞が男優と女優に分けなくなるかもしれませんね。そもそも自分の性別認識が男でも女でもない人もいるんですし、すでに演技賞を男女分けしなくなっている賞もあります。
今日は、ミッシェル・ヨーさんが受賞するのを見たいです。一つの歴史的瞬間になるはずです。
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