クライエントは、心の問題を抱えた本当の患者さんです。
「学生がそんなことをしてもいいのか?」と私は思ったんですが、学校の先生になることを目指している学生が教育実習を行うのと同じように、心理カウンセラーになることを目指している学生も実習をしなくてはいけないのだそうです。そりゃそうですね。
大学院の1年目では、カウンセリングルームに指導者が同席して行い、2年目からは学生が一人で行うんだそうです。いずれの場合も、カウンセリングは録画されて評価されるそうです。
患者さんは、もちろんカウンセラーが学生だということは承知しています。料金が破格に安いということで、納得して学生によるカウンセリングを受けるのです。
うちの娘は、小学生の頃から長年カウンセリングを受けて来ましたから、カウンセリングに関しては経験者です。非常に効果があった優れたカウンセラーもいましたが、そうじゃあない人もいましたよ。中には2回目で「この人はダメだ」とあきらめたカウンセラーもいました。
経験があると言ってもそれは患者としての立場。初めてカウンセリングを行う立場になったわけですが、始まる前は大変緊張したそうです。
初めてのクライエントは、若い女性でした。
娘はカウンセリングルームにピンク色のクッションを用意しておいたそうです。不安を抱えている患者さんは、クッションを身体に抱えることで不安を和らげることが出来るからだそうです。
娘自身も、一時期具合が悪かった頃には不安を和らげるためのぬいぐるみを持っていました。
クライエントの女性は、部屋に入って来るなりピンク色のクッションを見つけて、それを抱きかかえたそうです。役に立ったんですね。
初めてのカウンセリングは大変うまく行ったそうです。
女性が希望したので、45分のカウンセリングを2回分の90分に延長したそうです。女性はリラックスしてたくさん話し、これまで気づいていなかったことに気づくことも出来、何度も声を出して笑ったそうです。
初めてのカウンセリングが上手く行って、娘は少し自信がついたようです。
うちの娘は、小学生の頃に髪の毛を抜いてしまう病気になったのを始まりに、様々な不安障害や抑うつで苦労して来ました。
食べ物が食べられなくなってガリガリにやせ細っていた頃もあります。自分を傷つけていた時期もありますし、人に会うことが怖かったりパニック発作が怖かったりして家から出られなくなっていた時期もあります。一時期は毎日暗い部屋に閉じこもっていました。
大学に通学出来るようになるために、娘と私は二人で練習をしたんですよ。認知行動療法という治療法で、苦手だったことに少しずつ挑戦して「考え」や「行動」を変えていくのです。
最初の練習は、玄関を出て近くのバス停まで歩いて行って帰ることでした。バス停まで5分もかかりませんけど、そこまで歩いて行くということが困難だったんです。その時は、玄関を出るだけでも強い決意と準備が必要でした。
3ヶ月近くかけて何とか大学までは行けるようになりました。少しずつ遠くまで行けるようになり、電車とトラム(路面電車)でメルボルン大学まで行けるようになったのですが、一人で行けるようになるまでは毎日私が一緒に行ったんです。
電車の中で苦しむ娘を何日も見続けましたよ。
私も苦しかったのですけど、そういうのは見せちゃあいけませんから頑張りましたが、正直言って大変でした。
あの頃は、娘が今のように強く元気になることなど考えられませんでした。いつかは普通のことが普通にできるようになって欲しいと願っていましたけどね。
こうした娘自身の病歴のために、患者さんに接してカウンセリングを行う臨床の仕事は難しいのではないかと言われていましたし、本人も私もそう思っていたのですけど、心も身体も強くなった今の娘は、自分の経験がカウンセリングの役に立つと信じているようです。
自分がカウンセラーに助けられて病気を克服できたように、今度は自分が誰かを助けたいと思っているんですよ。
親としてとても誇らしく思います。
大学院の勉強は大変でしょうけど、アルバイトも頑張っていますし、クラヴ・マガのトレーニングも続けていますし、住んでいるシェアハウスでは気分転換に野菜作りをしているそうです。
車の運転にだけは気を付けて、目標に向かって頑張って欲しいです。
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ヒロコさん、こんばんは。
返信削除お嬢さんの初めてのカウンセリングうまくいって自信が持てたとのこと、良かったですね!
ご自身が体験されたことから、より良いカウンセリングに生かしておられるのですね。
ヒロコさんご家族のこれまでを拝読しているので、お嬢さんの一つ一つの嬉しい出来事をお知らせいただいて、こちらも嬉しく感じております。
ヒロコさんの投稿のうち2019年10月まで拝読しました。
2016年11月29日の青字部分には、とても励まされ、涙が出てきました。
真ん中の娘の心の病気(落ち着いてきました)に加えて、他の姉弟にも心配事があり、夫、同居の義父母との関係に難しさを感じることもあり、自分の体調も崩しがちで。
「心の病気は脳の不具合、治すことができる、完全にとまでは行かなくても」との言葉に、適切に対応していけばこれからもやっていけるんやなぁ、気持ちを前向きにすることができました。
(ポムポムりんご)
ポムポムりんごさん、コメントありがとうございます。「心の病気は脳みその不具合」の記事を読んで涙が出ましたか。ポムポムりんごさんもおつらいですね。一人でため込まないことですよ。夫さんや義父母さんが話せば理解してくださる方達なら、あなたの気持ちや考えていることをちゃんと言葉で伝えた方がいいです。でも簡単ではないですよね。日記のようなものに自分の気持ちや思いを吐き出すだけでも効果があると私は思います。
返信削除子供にそういうのを吐き出してはいけません。私はそれを娘に対してやっていたんです。不安や不満やストレスを、話せる人が娘しかいなかったんです。まだ子供の娘に話して聞いてもらって発散していたら、全部吸い取った娘は病気になりました。
それからね、どんな病気でもそうですけど、対応するためにはその病気のことを正しく知る事が重要です。最新の医学情報を読んで、どういう脳の不具合が問題を引き起こしているのかを理解してください。心の病気の治療に関する研究は進んでいます。ポムポムりんごさんのお嬢さんもいつか元気になられて「ああこんなしんどい時期もあったなあ」と思い出す時が来ますよ。