救急外来の治療室で、出血している鼻の中の傷を鼻の中から圧迫して止血するために挿入した筒状の細長い風船みたいなものは、その管から空気を送り込んでパンパンに膨らませてありました。細い管は顔にテープで留めてありました。
鼻の奥や引きちぎれんほどに伸び切っている小鼻のあたりに痛みを感じていたのですが、プレッシャーのせいで頭痛が始まりました。あまりの痛みで顔が歪んでしまうほどで、眠るどころではないので痛み止めをもらうことにしました。
私は薬にいろいろアレルギーがあるので気を付けないといけません。
痛み止めが必要な場合、大抵の場合パラセタモールが主要成分の「パナドール(Panadol)」という薬を服用します。オーストラリアで最も一般的な鎮痛解熱薬です。
この時は「パナドール」を2錠と「エンドン(Endone)」という薬の小さな錠剤を一つ飲みました。「エンドン」はオキシコドンを含むオピオイド系の鎮痛薬だそうです。Wikipediaには、モルヒネ、フェンタニルと並んでがん性疼痛治療第3段階に用いられる強オピオイドで、鎮痛作用は経口投与でモルヒネの1.5倍と書いてあります。
モルヒネはね、キッチン転倒顔面強打事件の時に最少量投与されて全身が麻痺したことがあります。オキシコドンのことは、私は知りませんでした。
薬を服用してしばらくすると頭痛が少しマシになったので、座ったままの状態でウトウトしていました。
ところが、私は異常な暑さで目が覚めたのです。
掛けていたコットンのブランケット2枚を引っ剥がしました。すごい汗をかき始めました。おまけに目まいがしていました。先月入院した時のような回転する目まいではありませんでしたが、フラフラするので怖くなりました。
その後、症状が一気に悪化してこのまま死ぬかもという異常な感覚に襲われました。すぐナースコールのボタンを押しましたが、直後に嘔吐し始めました。看護師の方がやってきた時には、滝のような汗をかき朦朧として嘔吐しているところでした。
「薬の副作用です!」と言うやいなや、看護師の方は私の左腕に取り付けてあった注射針から何やら薬を注入していましたけど、私はゾンビ状態でしたから看護師さんが何をしたのかは分かりません。
「呼吸が速すぎます」「ゆっくり呼吸をしてください」「3秒に1回ずつ息を吸ったり吐いたりするんです」と繰り返し言われたのは覚えています。
すぐに医者もやって来ました。
このまま死ぬかもという症状はすぐに落ち着いてラクになったのですが、頭痛が悪化してしまいました。左の鼻の中に入れた筒のプレッシャーが強すぎて顔面左半分の痛みも耐え難いので、空気を少し抜いてプレッシャーを下げてもらえないかと頼みました。
プレッシャーを下げるとまた出血するかもしれないとのことでしたが、少し空気を抜いてくださいました。空気を抜くとたちまち鼻から血が流れ出ました。
再び出血し始めたのか溜まっていた血が流れ出たのかが分かりませんから様子を見ていましたら、流れ出る血の量は減って行きましたので、プレッシャーは下げたままにしました。随分楽になりました。
眠ったのか眠っていないのか分からないような一晩が明け、朝ご飯は食べる元気もなく、とにかく医者が来て筒を取り出してくれるのを待ちました。
朝のうちに、救急治療室から短期滞在用の病室に移動しました。この時、病院に来て以来初めておトイレに行ったのですけど、自分の顔を見てショックですよ。
髪の毛も酷かったですけど、鼻ですよ、鼻。その巨大化した団子っ鼻というか饅頭鼻は、まるでアンパンマンのそれ。
手で触れて感じていたのと実際の有様を見るのとでは、ショックの度合いが違います。
元に戻るんだろうか…
真剣にそう思いましたよ。
やっと医者が来たのは10時頃でした。医者は管を顔から剥がすと、ゆっくりと筒を取り出しました。長いタンポンみたいでした。
よくもまああんな長い物が鼻の中に入っていたんだと思うような驚くべき大きさでしたが、実際にはあれをパンパンに膨らませていたんですからね。
筒を取り出した後、3時間安静にして出血がないことを確認した後、家に帰っても良いと言われたので退院しました。もちろん支払いは無しでした。
帰っても良いと言われた時に怖いことを言われました。今回のような鼻血が、今後も起きる可能性があるということです。
もしも起きたら、少し前かがみになって小鼻の柔らかい部分を指で強く圧迫するのを15分やってみて、出血が止まらない場合は、直ぐに救急外来に来てくださいということでした。
「救急外来に来て、またあれを鼻の中に入れるんですか?」
「そうです、それしか方法がありません」
「そんな…」
鼻血のほとんどは鼻の入り口に近い部位からの出血です。その部位からの出血はすぐに止まりますから心配はないそうですが、まれに鼻の奥の方にある動脈から出血することがあるんですよ。私はそれでした。
鼻からポタポタと出続ける血が真っ赤な鮮血でしたから、動脈だとは思ったんです。
動脈からの出血は、出血量も多くなかなか止まらないので、すぐに医療機関で治療を受ける必要があるのです。
宝くじには当たらないけど、まれな病気というのに次々に当たります。「お母さんは運が悪いな」と娘が言いましたが、本当にそのとおりです。
仕事から帰ってきたうちの夫に入院してから帰宅するまでの一部始終を話して聞かせました。
吹き出す笑いをこらえながら聞いていました。息子に「お願いだからこの話をアニメにしてくれ」とも言っていました。
鼻の穴の中に入れた筒風船が、入れるのにどれほど痛くて苦しかったか、鼻が変形したかを教えましたらね、
「そうだな、ヒロコの鼻は原住民の鼻のようになったな」と言って、あぐらをかいた鼻の形を手で作って見せました。
マジか…
本当にそうなっていてもそんなこと言うなよ!
ヒロコさん、大変でしたね。めまいもすごかったけど鼻血も血が出るんですから怖いですよね。
返信削除死ぬかもって頭をよぎるなんて、お気持ちお察しします。
ちょうど日本の番組で世界仰天ニュースというもので、鼻毛をぬいていた人が出血が止まらなくなり血圧低下で病院にいって治療されたのがヒロコさんとそっくりなものでした。
https://www.ntv.co.jp/gyoten/articles/324y98ufbgwrk0mhdwn.html
この人は鼻毛をぬいて、傷つけてしまってですが、ヒロコさんはシャワー中に突然でしたよね。謎が残りますね。
お大事にしてくださいね。
コメントありがとうございます。それなんですよ、どうして動脈が切れたのかという点です。花粉症や鼻炎でしょっちゅうくしゃみをして鼻をかむので、粘膜が傷んでいたのか、動脈硬化か、何か悪いものでも出来ているのか。入院中に2回行った血液検査では何も問題はなかったようです。出血が止まった後で内視鏡で見てみるとか、そういう検査を受ける話もされなかったので、あまり気にすることもないのだろうと思っていますけど。同じことが再び起きる可能性があるとか言われると気になります。
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