2022年7月20日

闘える女と不審者

このブログを読み返してみると、うちの娘が「クラヴ・マガ」を習いに行くという話を書いた最初の記事は、昨年の2月です。

最初は、女性専門の「Women’s Self-Defence」(自己防衛術)のコースを12週間かけてやるということだったんですけど、すっかり夢中になって正式にスクールのメンバーになって以来、ほぼ毎日のようにトレーニングに行っているのです。

「クラヴ・マガ」のことをご存じない方も多いと思いますが、「クラヴ・マガ」というのは、20世紀前半にイスラエルで考案された近接格闘術です。イスラエルの諜報機関モサドをはじめ様々なイスラエル治安機関に採用されることで洗練され、現在、米国のCIAやFBIなど世界中の軍や警察が導入しています。

本来は「殺人術」も含まれている「クラヴ・マガ」ですが、一般市民向けには防御術に重点を置いたレッスンが提供されており、メルボルンにも学校があります。

スポーツと言うよりも、実際に役立つ格闘術の習得が重視されています。普通の暮らしの中で起こりうる状況を想定して、不利な状況からいかに効果的に反撃して脅威を排除するかというのが目的なんだそうです。

そのためには相手の反射神経を利用したり、ダメージを受けやすい部分(股間とか)を狙ったり、近くにある道具や物も使います。

女性の場合、相手が自分よりも身体が大きくて力も強い男である可能性が大きいです。そういう相手と闘うためには、攻撃方法を学ぶだけではなくて力も付けなくてはいけません。

ですから、娘はウエイトトレーニングもしているそうですし、ボクシングもやっていますし、最近はブラジリアン柔術やミックスマーシャルアーツという格闘技もやっているそうで。

もうね、

強くなることに夢中なのですよ!

柔道や空手に「段」とか「級」があるように、「クラヴ・マガ」にも同様のレベル分けがあって、昇級するためにはテストを受けて合格する必要があるそうです。

現在うちの娘がどのレベルかは知らないのですけど、教えるためのレベルには到達したのでしょう、最近幼児クラスを教え始めたと聞いて驚きました。「クラヴ・マガ」に幼児クラスがあるというのも驚きですけど。

娘の話によると、楽しくゲームをしているだけだそうですが、ゲームとは言っても「クラヴ・マガ」なんですからね、パンチやキックが取り入れられているのでしょう。

メルボルンの「クラヴ・マガ」スクールは生徒が増えて、メルボルン以外にもジーロング(Geelong)やボックスヒル(Box Hill)でも学べるようになっています。

久しぶりにスクールのウェブサイトを見てみましたら、うちの娘が写っている写真がいくつかありました。インスタグラムに載っている写真にも写っていました。

今やこのスクールは、娘にとってのもう一つの「家族」のようになっているのですけど、こんなに夢中になれるものが見つかって本当によかったですね。

来年からは、心理クリニックの受付の仕事に加えて修士課程の勉強が始まるはずですが、「クラヴ・マガ」は気分転換にも心身の健康維持のためにも役立つでしょう。


ところで、一昨日の夜、娘からメセージが届きました。家の外に不審者がいると。

娘が住んでいるシェアハウスの周りを、知らない男が行ったり来たりしていると言うのです。

シェアハウスの住人は全員女性です。

うちの夫が、ドアや窓の鍵をチェックしろとかカーテンを閉めろとか、いろいろアドバイスしていましたが、私はその不審者がシェアハウスに侵入して、うちの娘に大怪我をさせられるんじゃあないかと心配しましたよ。

時々、人通りの少ないところで男が近づいて来る気配があると、「いよいよその時が来たか」と闘う心の準備をするんだそうですが、まだ実戦の経験はありません。

ちなみに、武器を持った相手と闘う方法も学んでいます。日頃のトレーニングは、身体の大きな男性を相手にやっているそうですしね。相手のキックやパンチを食らって、青アザを作ったり脳震盪を起こしたりするのも不思議ではありません。

身体が強くなって自信が付いてくると、恐怖に打ち勝つメンタルの強さも生まれます。娘は身体も心も強くなり、もしもの時には闘える女になって来たというわけなんです。

不特定多数の知らない人達と会話をする心理クリニックの受付の仕事も、娘のメンタルを強くした要因ですけど。

心も身体も弱って家から出られなかった頃が、遠い昔のことのようです。娘は本当に変わりました。


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