2022年7月29日

黄斑変性と視能訓練

昨日の夕方、友人のエクリーさんの奥さんが、仕事関係の話があると言ってうちの夫に電話をかけてきました。

随分興奮している様子で、話したいことがあるから仕事の帰りに寄りたいと言ったそうです。

「どうぞ来てください」と夫が返事をして、間もなく彼女はやって来ました。いつもとは違って、見違えるようなプロフェッショナルな服装でした。

エクリーさんはいつもカジュアルな服装なのですけど、最近新しい仕事を始めたのです。彼女はもうすぐ60歳になるんですが、この歳で求人に応募して雇ってもらえるなんてほとんどあり得ませんけど、近頃いろいろな業種で人手不足が問題になっていますからね。

彼女が始めた仕事は、クリニックの受付の仕事です。希望通りパートタイムです。エクリーさんはいろいろやりたいことがたくさんある忙しい人ですから、働くのは2〜3日だけというのが希望でした。

それはともかく…

どういうクリニックなのか詳しいことは聞いていなかったのですが、視能訓練士のクリニックだったんです。

視能訓練士というのは、視機能の検査や視能矯正(より良い視機能を得るための治療)をおこなう人のことですけど、エクリーさんを雇った方というのは、病気や怪我などで視機能が低下した患者さんの「見えにくさ」を改善するスペシャリストで、大学でも教えている方なのだそうです。

具体的にどういうことをしているのか詳しいことは知らなかったエクリーさんですが、黄斑変性でものが見えにくくなった人が、網膜のまだ見える部分を効果的に使うことで「見えにくさ」を改善するというようなことも行なっていて効果が出ていると知って興奮したんです。

エクリーさんは私達とは家族同然で、うちの夫の目のこともよく知っているからです。

うちの夫は、先天性の黄斑変性である「スターガルト病」という病気で、網膜の中心部分にある黄斑と呼ばれる部分の周囲の視細胞がまだ若いうちから徐々に死んで来ていたんですが、ついに昨年左目が見えなくなりました。

現在は、左目の視野の中心部分は黒くなっていて何も見えていないそうです。

「先天性黄斑変性症の進行」という記事に写真を載せていますが、右目の黄斑も視細胞が死んでいます。まだ見えているのが不思議なほどですから、近いうちに右目も見えなくなるはずです。

視野の中心部分は焦点を合わせて「ものを見る部分」ですからね、ここが真っ黒になると大変困るわけですけど、黄斑変性というのは全く何も見えなくなるわけではないんです。

真っ黒になっている視野の中心以外のまだ視細胞が死んでいない部分を駆使して、ものを見ることはできるのです。ぼんやりとしか見えませんし、とても疲れるそうですけど。

エクリーさんが雇われている視能訓練士の先生は、網膜のどの部分を使うのが最も効果的なのかを検査で調べ、その部分を使ってものを見るトレーニングを行うことで「見えにくさ」を改善するんだそうですよ。

エクリーさんはそれを教えに来たのです。一度診察を受けてみてはどうかと言うんですけど、うちの夫はいずれ見えなくなることが確実なのですからね、助けになるかもしれないことがあるのなら何でもやってみますよ。

黄斑変性にもタイプがいろいろあって、状態を改善するとか進行を遅らせるといった治療法の話も耳にしますが、夫の黄斑変性には治療法は何も無いということが分かっています。

そのトレーニングで「見えにくさ」が少しでも改善するとしたら、やって見る価値があるわけです。


それから、その視能訓練士の先生は、今のうちから「National Disability Insurance Scheme」というオーストラリアの障害者保険制度への申請の準備を始めた方が良いとおっしゃったそうです。

年齢が上がれば申請はより難しくなるんだそうです。

いずれ目が見えなくなることは確実なんですから、実際に目が見えなくなって、仕事を辞めざるを得なくなってから申請するのではなくて、今のうちに始めるようにとおっしゃったそうなんですよ。

夫が働けなくなったら私達夫婦は収入がほぼ無くなります。たちまち生活に困るわけですから、障害者保険は重要です。

夫は今は右目が見えているのでまだ大丈夫と思っていますからね、障害者保険の申請なんて考える気分ではないと思います。それに、何事も最後の最後まで先延ばしにする傾向のある人ですから。

以前私達が経済的に困窮して食べていけなくなった時には、生活保護など受けたくなかった人なので、障害者保険なんてもらいたくないだろうとも思いますけど。

私なんて、もらえるものは何でももらえばいいじゃないかと考えますが、もらいたくないと考える人もいるんですよねえ。

夫は、目が見えなくなってもできる仕事があるはずだと言っているんです。実際に求人を見たりもしているようですが、それは難しいだろうと私は思います。

わずかな貯金とスーパーアニュエーション(老後の生活資金として積み立てていく自分専用の年金)だけで残りの人生を暮らしていけませんから、障害者保険のことは真剣に考えてもらいたいです。


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