ABC放送の「Foreign Correspondent」という海外取材番組の「Road to Reunion」というドキュメンタリーです。
米国の前トランプ政権の大罪「不法入国親子の引き離し政策」を取り上げています。
ご存知だと思いますが、簡単に説明するとメキシコ国境から不法に(正式な書類を持たずに)入国した人々から子供達を引き離すという政策です。引き離された子供達が檻に入れられて泣き叫んでいるニュース映像をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
不法入国というのは犯罪なわけですから、その犯罪に対する裁判をおこなうわけですが、裁判中は親と子供を別々に収容するという政策です。乳幼児であっても例外無く親から引き離されました。
不法に入国すれば子供達と離れ離れになるという恐怖が不法入国のブレーキになると考えたわけでしょうが、この政策は国内外からの圧力や強い反発を受けて、後に撤回されました。
しかし、不適切に引き離された親子の多くは、政策が撤回された後で再会させようとしても居場所が分からなかったのです。多くの親は、子供と再会できないまま国外に送り返されました。
現在でも数百人もの子供達が、親と再会できないままになっているそうです。
このドキュメンタリーに登場する親子もそうして離れ離れになったのです。不法に入国しようとしたのは、お母さんのケルビーさんと二人の息子でした。長男であるもう一人の息子は別ルートから入国を試みたそうです。
彼等はホンジュラスから命がけで逃げて来ました。彼等が正式な書類を持たずにやって来たのには理由がありました。
ホンジュラスという国は、中米で最も危険な国とも言われています。ギャングや麻薬組織の犯罪が横行していて治安が悪く、抗争による殺人や一般市民への暴力も深刻な問題となっているそうです。貧困問題は深刻で、ハリケーンの被害がそれを悪化させています。
自分の兄弟を殺した殺し屋達の逮捕に協力したせいで命を狙われたケルビーさんは、米国に移民していた親戚を頼って米国に逃げることを決意したそうですが、正式な書類なしで国境を超えたために不法入国者となり、一緒だった二人の息子は引き離されました。
その後、息子と再会できないまま国外追放となったケルビーさんは、少しでも息子達の近くにいたいと国境近くのメキシコの町で、米国の政策が変更になり息子と再開できる時が来るのを待ちました。
ホンジュラスに帰ると殺されますから帰るわけにはいきませんしね。
息子達は、収容施設で1ヶ月半を過ごした後、別の施設に移され、最終的にはフィラデルフィアに住む親戚に引き取られたそうです。収容施設の部屋には2段ベッドが2つあるだけで毛布もなくて寒く、親から引き離された子供達は皆んな泣くばかりだったと話していました。
非常に悲しく辛く怖い経験は子供達の心に大きな傷を残しています。今もまだ親に再会できていない子供が何百人もいるとは、本当になんという悲劇でしょうか。
ケルビーさんは、親戚の家に引き取られた息子達と連絡を取り続けることは出来たようです。今の時代は、お互いの居場所さえ分かっていてスマートフォンがあれば、顔を見ながら話をすることもできます。
再会の時を待ち続けて4年にもなろうかという時、人々の支援のおかげでケルビーさんはついに息子達に再会できることになり、フィラデルフィアにやって来ます。
別ルートで入国していた長男も含め、親戚の家でBBQをするために集まっていた3人の息子達は、この日ケルビーさんがやって来ることを知りませんでした。サプライズだったんですね。
その場面から、このドキュメンタリーは始まります。
号泣しましたよ、私…
悲しい話ですが、この親子に関してはハッピーエンドになってよかったです。
ケルビーさんには、バイデン政権により今後3年間の滞在許可が与えられたそうです。その間に正式な永住権を獲得できるといいです。彼女には、ホンジュラスに戻って暮らすという選択肢が無いんですから。
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