「お風呂」というのは、浴槽にお湯を溜めてそれに浸かるという意味での「お風呂」です。
数年ぶりでした。
我が家の浴槽は、もちろん寝っ転がらないとお湯に浸かれない細長い西洋式です。キッチンの床が腐って修理をしなくてはならなくなった時に、4ヶ月もお料理をしていた例の洗濯室兼おトイレ兼バスルームにあります。
浴槽のすぐ隣りには便器、反対側には洗濯機があって、ゆっくりお湯に浸かりたくなるような場所ではありません。冬だから超寒いし。
でも、お湯に浸かりたくなったのです。浴槽があるだけラッキーだと思わないと。
お湯は寝っ転がった時に身体が浸かる程度の量だけ入れます。たくさん入れすぎて、少し身体を動かすと浴槽から溢れたりすると掃除が大変ですから。
あら、その黄色いのは何?
あっ、気が付きましたか?(気が付かない人がいるか!)
その黄色いのはね、
うふふふふ…
例の貴重なこれですよ。
冬至だったじゃないですか。
冬至といえば「柚子湯」じゃないですか。
まさかたった3個しか収穫できていない、しかも大きくもない貴重な柚子の一つを風呂に入れるなんて、そんなもったいないことはできないと最初は思ったんですけど。
うちの家族は柚子の香りをありがたがらないし、お吸い物用の皮はもう冷凍したし、残っていたのは一番大きいのですが、どうせ種ばっかりで果汁は小さじ半分も取れないので、自分が好きなように使おうと思ったんです。
半分に切って、種を全部取り出してから入れました。
小型温風ヒーターで極寒のその部屋をしっかり温めて、お湯に浸かりましたら、
ああ…
ああああ…
お風呂ってこんなにいい気持ちがするものだったっけ?
もうね、サイコーでした。
あんな小さな柚子では自然に香りが立ち上ってくるなんてことはありませんから、鼻の所に持っていって匂いをかぎながら、目を閉じて浴槽にたくさん柚子が浮かんでいるのを想像しながら、隣りに便器がないと想像しながら、私は至福の10分ほどを過ごしたのでございます。
どうせもう捨てるしかないんだからと、貴重な柚子を身体に擦りつけて香りを堪能しましたよ。
お湯から出て、身体を拭いて服を着た後、「はあああ」と大きなため息が出たけど、シャワーではああいう事は起きないですね。お風呂に入った後でしかああいうため息は出ません。
本当に気持ちが良かったです。
どうして何年もの間、一度も浴槽に浸かりたいと思わなかったんでしょうか。お湯に浸かるというのがこんなに気持ちの良いことだったと忘れていましたよ。
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