あれは1994年のことですから、もう27年も前のことです。
ある時、私はメルボルンのマイヤーというデパートのCD売り場で、バッハのCDを探していました。バッハのある曲が入っているCDです。ところが、その曲名が思い出せませんでした。
当時はまだインターネットも普及しておりませんで、YouTubeもありませんし、ちょっとグーグルするなんてこともできません。CDのパッケージを読めば思い出すだろうと思って見ていましたら、店員の若い男が近づいてきました。
「何かお探しですか?」
「ええ、バッハのある曲が入っているCDを探しているんです」
「どの曲ですか?」
「それが曲名がよく分からないんですけど、始まりがこういうやつです」
と言って、私は歌ったのですよ。
タララ〜 タラララ ラ〜ラ〜
「あ!知ってます、知ってます!多分これです!」
「あ!知ってます、知ってます!多分これです!」
そう言って店員が見つけてくれたバッハのCDは、オルガンの名曲集で最初の曲が「Toccata and Fugue in D minor」でした。
トッカータ・アンド・フーグェ?
トッカータとフーガ!
それだ!それそれ!
こうして私は探していたCDを手に入れたわけですが、店内で歌った私もアレですけど、店員が直ぐにバッハのどの曲かが分かったのも、私が正確な音程で歌える人だったからでございますよ。音痴の人ではこうは行きません。
先日、うちの夫がですね、「映画音楽でこういうのがあったでしょ?これ何の曲でしたっけ?」と言ってメロディーを歌ったのですが、私にはサッパリ分かりませんでした。
うちの夫は、普通の人の理解を超えるレベルの音痴なのです。
どんな歌を歌っても、何を歌っているのか分かりません。それくらい音が外れています。音程というものが無いに等しいです。家族のお誕生日に歌う「ハッピーバースデー」にしても、出だしの「ハッ」の音からもう完全に外れています。
音痴って遺伝なんですよね。夫の家族には、義母をはじめ音痴が何人もいます。
先日、夫が楽しそうに鼻歌を歌っているのを聞きながら(鼻歌でももちろん外れています)私はある出来事を思い出しました。それは私達家族が日本にしばらく滞在した時、帰国前に家族が集って食事をした時のことです。
ある料理屋の座敷を借りて食事をしたのですが、その部屋にはカラオケセットがあって子供達が歌いたがったので、後半はカラオケ大会みたいになって盛り上がったのですけど。
家族しかいないので緊張することもないですし、歌いたくなった者が次々に小さなステージに上ってマイクを手にしました。
うちの夫も歌ったんです。音痴ですけど歌うのは好きなんです。
そして、私の一番下の妹の夫と二人でビートルズの曲をデュエットしたんですよ。曲名なんて覚えていません。
その笑撃がすごくて!
妹の夫も音痴だとはその時まで知りませんでした。
そして、その二人、音程の外れ方がそれぞれ違うものですから、一緒に歌うと、
ハモるんです!
不協和音ですけど。
ちなみに、私の家族に音痴はいないんです。家族全員が正確な音程で歌えるので、それが当たり前なものですから、この二人のデュエットは抱腹絶倒ものでした。聞いていた私達は涙を流しながら腹がよじれんばかりに笑ったという。
音痴の皆さん、どうもスミマセン、こんな発言をして。
でもね、歌う方も聞く方も楽しかったんですよ。それが一番大事です。
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