昨日のオーストラリア連邦議会の大混乱は見ものでした。
ご存じの方も多いと思いますが、オーストラリアでは7月に連邦総選挙がおこなわれたんですが、票数が拮抗するあまりなかなか当選者が確定しない選挙区が続出。投票用紙を繰り返し数え直して数週間後に僅差で当選者がやっと確定なんていうところもいくつかあったのです。
与党の自由党(政権は自由党と国民党の保守連合政権)は予想以上に議席を失いました。まず上院(Senate)の方は過半数を獲得した党はなく、グリーンが9議席、例の極右翼政党ワンネーション党が4議席も獲得したのを始め、ニック・ゼノフォン・チーム(私が一目置く無所属ニック・ゼノフォン議員の仲間たちチーム)が3議席を獲得したりして、もう完全に保守連合政権の思い通りにはいかない状況になっちゃいました。
下院(House of Representatives)の方は、なんと自由党と国民党の保守連合が1議席の差で過半数を獲得しまして、国会初日にスコット・モリソン議員が「オレたちは選挙に買ったんだよ、バディ!」と議場で絶叫する姿をニュースでご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
この「1議席の差で過半数」というところが昨日の大混乱騒ぎの重要ポイント。
さて、オーストラリアには重要問題を調査する公的調査委員会ロイヤルコミッション(王立委員会)という制度があります。昨今、オーストラリア国内の融資の殆どを独占し長年にわたって高利益を上げ続ける四大銀行をはじめとする金融業界の、ロイヤルコミッションによる公的調査を求める動きが高まっているのです。
銀行の倫理に反する商慣行、金利不正操作、汚職との関連など、いろいろ国民の不満が高まってきていますし、労働党を筆頭にロイヤルコミッションによる調査を求める動きは大きくなってきているものの、保守連合政権は拒否し続けているんです。保守連合が過半数を握っているんだからロイヤルコミッションは可決不可能なんです。
強い権限を持つロイヤルコミッションは、銀行幹部に公聴会への出席と宣誓証言を義務付けることも可能だし、調査によって何もかもが明るみに出る可能性があるのだから、四大銀行は「ロイヤルコミッションなんかに税金を使うのは無駄使いである」とこれを批判しますし、何とかこれを回避するために与党自由党へのロビー活動も活発におこなっているわけです。政治献金ももちろんです。
さあて、昨日のことよ。
この「ロイヤルコミッションによる金融業界の公的調査をやろうよ」という議案が労働党により出されて、混沌状態の上院(Senate)を通過しちゃいました!議案は1議席の差で保守連合が過半数を握る下院にやって参りました。普通なら、たとえ1票差であっても保守連合が過半数を握る下院では、これは否決されるのが必至。
ところが、この時、与党自由党の3人の議員(全員が大臣職)が議場にいなかったのよ。何かの都合で早めに家に帰っていたり他州へ向かう飛行機の機上だったり。だから、過半数を握る政権であるはずの保守連合は、この日の投票では負け続けたのです。
このままではロイヤルコミッションが可決されてしまう!
3議員は大急ぎで呼び戻されました。
この時、議場にいなかったのは自由党議員だけではありませんでした。ロイヤルコミッションを支持する無所属議員も帰宅中でした。その議員は、投票がおこなわれる事になり大急ぎで議会に戻りました。
どうなるのか!ハラハラドキドキ!銀行関係者は大汗をかいたことでしょうね。
結局は、自由党の議員が議会に戻ってきて、ロイヤルコミッションの議案は1票差で否決されたんですが、もし間に合っていなかったらどうなっていたんでしょう。無所属議員は間に合わなかったんです。もしも間に合っていたら票数は同数ですよ。
サスペンス満載の国会中継からは、目が離せません!
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