2016年4月25日

オーストラリア政府の学生支援 HELP

我が家のように日々の生活にも困窮する程ではなくとも、子供に高等教育を受けさせてやりたくても経済的なゆとりがない家庭は多いはずです。そうした場合、どうしたらいいのでしょう。進学する教育機関にもよりますが、勉強したい分野によっては授業料だけでも非常に高額となります。

例えばの話ですが、うちの息子はエンターテイメント業界(主にビデオゲーム)でグラフィックアートに関わる仕事がしたいという希望で、AIE(Academy of Interactive Entertainment)という専門学校のようなところで即戦力となる技術を身につけるべく勉強しておりますが、2年コースの授業料は1年目の年間授業料が約17,000ドルでした。大雑把に言って170万円です。こんな学費を払ってやる能力は私たち夫婦にはありませんでしたし、息子本人もアルバイトに励んで授業料を稼ぐということもしませんでした。

娘も進学先の希望がはっきりしており、メルボルン大学で臨床心理学を勉強したいと希望しておりますが、卒業までに6年もかかるんだそうです。総額いくらの授業料になるのか知りませんけど、私たち夫婦にはその一部すら払ってやることはできません。

この状況で、息子も娘も夢を諦めることなく希望する教育を受けられるのは、それを可能にする制度があるからなんです。政府からお金を借りるという制度 HELP(Higher Education Loan Programme)です。

詳細は Study Assist のウェブサイトで見ていただくとして、進学する教育機関や学生の資格・条件により5つのHELPプログラムがあるようです。息子は VET FEE-HELP を利用しました。娘は、希望通りにメルボルン大学に入れたとすれば、HECS-HELP を利用することになります。

「なんだ、教育ローンか」とお思いの皆さん。オーストラリア政府のこの HELP は、日本学生支援機構の奨学金ローンなどとは少し異なります。私はうちの子供達に関係する VET FEE-HELP と HECS-HELP についてしかよく知りませんけど、どのように違うかおおまかな相違点をあげてみましょう。
  1. まず金利はゼロです。
  2. 学生の成績や家庭の経済状況などにかかわらず、条件資格を満たせば利用できます。
  3. 授業料の一部あるいは全額に利用できます。
  4. 卒業後の返還は、一定額以上の収入があった場合に(現在は年収が54,126ドル以上)その収入に応じて税金として支払います。まあ追加の収入税のような形で払うんですね。収入が多いほど支払い率も高くなります。
  5. 一定額以下の場合の返還額はゼロです。
  6. 卒業後に就いた職業によっては、返還のディスカウントがあります。
  7. 何らかの事情で収入がないなど変換する能力がない場合には、当然その年の返還は免除ということですから大きな負担軽減となります。精神的にもストレス軽減ですね。だって、うちの夫のように「うつ病」で仕事ができない人は、どうするんですか?「返還滞納けしからん!」と言われても、どうすることもできないんですよ。
娘のサチは、毎日勉強に励んでいます。(息抜きもいっぱいしていますけど。)希望通りにメルボルン大学に入るためには、VCE で良い成績を収め ATAR(Australian Tertiary Admissions Rank)で高得点を取る必要があります。また、彼女はスカラーシップ(奨学金)や授業料免除の獲得も狙っています。ヴィクトリア州だけに限っても、優秀な学生は様々な教育機関や団体からスカラーシップを貰える可能性がありますから。アルバイトはしていません。学費を稼ぐためにアルバイトをするよりも勉強する方を選んでいるともいえますけど、彼女はいろいろ精神的に不安定で最近はパニックアタックにも苦しんでいますから、アルバイトをする能力はないのです。

政府のHELPがなければ進学は諦めるしかないわけですから、ありがたい制度です。

ちなみに、こうした制度を悪用して儲けようとする悪徳教育機関も存在しますので要注意です。まともな授業もせず、時には突然廃校となって、生徒は大きな被害を被ります。

また、こうした制度も、政府が変われば今後どうなるか分かりませんから要注意です。現在、HELPを利用した若者たちが卒業後に満足な仕事につけず、年収が一定額に達しないために払い戻しが滞る場合が多く、政府の財政を圧迫していると問題になっています。今後、この制度を利用するための資格がもっと厳しくなる可能性もありますし、限度額が設定される可能性もありますしね。

ただし、多くの国民に影響があるそのような変更をする場合には、絶対に選挙が避けては通れません。不人気な改革をやろうとすると選挙に負ける可能性が大きいので、何事も改革というのは一筋縄ではいかないはずです。

HELP 以外に、所得補助や子供がいる学生のための子供手当など他にも学生を援助する制度があります。よく情報収集し、利用できる制度は利用しましょう。

Study Assist
Youth Central
Department of Education and Training in Victoria

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7 件のコメント:

  1. 早速記事をアップしていただき、どうもありがとうございます。なるほど、仕組みがよくわかりました。ご存知のようにオーストラリアでは不動産価格が異常なことからアセットリッチではあっても、ビジネスなどがうまくいかないなどキャッシュプアな家庭も少なくないのではと思っていたので、皆さんどうのようにして大学の学費を支払われているのかなと疑問だったのです。サチさん頑張っていますね。うちの娘もY11なので勉強に追われています。それと、睡眠についてですが、ウォーキングはいかがでしょうか?ご自宅の周辺は紅葉が美しいのではないでしょうか。今の季節おすすめです。

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    1. ウォーキングは多くの人に勧められるんですけど、歩くと以前手術をした右膝が腫れるんです。悪化するんじゃないかと怖いんですよ。障害者手帳が欲しいくらい生活に困りましたから。今はもっぱら家事をこまめにする&ラジオ体操です。このラジオ体操が結構侮れないんですよ!

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  2. はじめまして、こんにちわ。私はゴールドコーストに住んでいます。子供の学費の事で色々と調べているうちに、こちらに飛んでまいりました。 何を調べていたかというと、「2018年より永住権者の大学費用が、インターナショナルと同じ学費になる」とニュースと、政府からのサイトを見て、永住権のままじゃ学費が膨大になる!! じゃ市民権を取るか? でも永住権のままがいいのに・・と、迷っており、色々と調べているうちに、こちらのサイトにお邪魔した次第です。   不思議だったのは、永住権の方たちが何も騒いでいないことです。 永住権保有の大学生や、その家族がもっと騒いでると思ったのですが、何にも騒いでおられないので、皆さん普通に市民権に移行していくのかな? 4年のしばりもクリアなのかな? とおもってしまいました。 我が家は4年もクリアしているので、市民権申請はすぐ可能なのですが、メルボルンの地域の日本人の方は何も問題にされていない感じでしょうか?  市民権になればHECSも使えるので良いのですが、 このまま永住権にするべきか・・・ だけど、金額が~~~~と  頭悩ませてしまいました。  こんな長いコメント失礼致しました。  これからも拝見させて頂きます。  貴重な記事ありがとうございました。

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    1. 大学の授業料が値上げされるというニュースしか気にしていませんでしたが、そうかあ、永住権保持者ということは外国人なのだから、海外からの留学生と同じになるのですね。子供が小学生くらいだと大学の学費など切実な問題として感じないので、こういったニュースに気づかない方も多いのではないでしょうか。

      ところで、私は日本人をやめましたよ。(記事はこちら http://hirokoliston.blogspot.com.au/2015/10/blog-post_21.html)将来日本に戻り納税者として復帰する気もないし、オーストラリアで生きていくと決めたのですから、オーストラリアという国に属すことは正しい選択だと思いました。

      そもそも、このグローバルな時代において、国籍って何なんでしょう?

      私は、どこかの国に所属していたいという希望はないんですけどね、今ではオーストラリアのパスポート保持者です。自分がオーストラリア人だという意識はないですけど。

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  3. まだこちらのブログに出会って、数日目ですので、まだすべて拝見出来ておりませんので、これからもブログ拝見させて頂きます(上記の記事についても)  言われてみれば、永住している外国人ですものね、留学生と一緒・・と言われて、「その通りだ」 とおもいました。  国籍って本当どうなんでしょうね? 二重三重保持者もいれば、 日本のように一国でなければならないもあるし・・。  どんどん世界は変化をしていくものなのかもしれませんね。 ヒロコさんありがとうございました! 

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  4. 初めまして。
    いろいろな情報ありがとうございます。

    ゴールドコースト在住の者ですが、来年から永住権保持者でも、大学の学費が変わると初めて知りました(>_<)

    これは何処かで正式発表されているのでしょうか?

    無知ですいません。

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  5. 連邦の予算案で、大学の授業料のうち学生の負担額が引き上げられる可能性や、卒業後の授業料返済開始も現在より早めること(返済開始となる収入の最低額が下がる)、またローン手数料の変更などの改革案が示されましたが、永住外国人の授業料の見直しも見込まれているのですよね。

    大学授業料の改革に関しては、提案どおりでは野党労働党の賛成は得られないでしょうし、議席数が拮抗しているので政府の予算案が全てそのまま認められるはずもありませんが、市民権を持たない永住外国人の場合は、今後の改革案の行方には注意しておく必要があるでしょう。

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