2024年7月23日

レジリエンスのある人

ここ数日、自分のトラウマ経験に関することを書いて来ました。ブログに書くのがはばかられるようなこともいろいろあったんですけど、さすがにそういうことは書けません。

大人になってからうつ病や不安障害で苦しむことになった原因が、幼い頃から日常的に父親に叱られ、怒鳴られ、時には暴言を浴びせられ、暴力を目撃したり聞いたりすることで受けたトラウマのために、常に不安を感じながら緊張して暮らした家庭にあったということを書いて来たわけです。

毎日このブログを読んでくれている母と妹達に知って欲しくて書きましたけど、書いてスッキリしたかといえば全くいそういうことはありません。

子供の頃のトラウマというのは根深く厄介なものです。

さて、今日はレジリエンスということをテーマに、私の妹のことを書こうと思うんですよ。

私は3人姉妹の長女で妹が2人います。

2歳下の妹は優しい子でした。真ん中っ子の特徴でしょうか周囲を気遣う性格で、家族の間を取り持つピースメーカーでした。

この妹は未熟児として生まれ、赤ちゃんの頃は喘息などの健康問題があったそうです。それなのに、父親は私達家族が住んでいた小さな家の中で鳥をたくさん飼っていたので、鳥を飼うのを止めて欲しいと母が頼んでも止めてくれなかったと聞きました。

この妹の幼い頃のことはほとんど覚えていませんが、記憶にあるのは泣いている妹です。どういう理由か分かりませんけど、よく泣いていたんだろうと思います。

下の妹は私が7歳の時に生まれました。その時のことは良く覚えています。私達姉妹のうち、この妹だけは病院で生まれたんです。

当時まだ木造だった町の病院の部屋で、小さな赤ちゃんが保育器に入っていて元気に手足を動かしていました。父親が「男の子だったら良かったのに」と言ったのを覚えています。

この7歳下の妹は、少し大きくなると生意気な子になりました。私との口げんかでも負けませんでした。7歳上の私のほうが泣かされることもありましたよ。そして何がすごかったって、この妹は父親に怒られても黙って我慢してはいなかったんです。

父親に対しては何も言い返せない子供になっていた私にとって、それは信じがたい状況でした。

言い返されて激昂した父親は、怒りのあまり妹を叩いたりロープで柱に縛り付けたりすることもありました。もちろん、そういう時には妹は泣き叫んでいます。妹自身は幼過ぎて覚えていないかもしれませんが、私には恐ろしい光景でした。

言い返すとあんな目に遭うと分かりますからね、とにかく怒られる原因を作らないようにと、あらゆることに注意を払っていました。それでも些細なことが原因で父親に怒鳴られるわけですが、私は黙って耐えることしか出来ません。

中学生になった頃には沈黙することが唯一の出来ることになっていました。その沈黙が父親を怒らせることにもなったのですけどね。

そんな私でしたから、下の妹が父親に言い返すのを見て「よくそんなことができるものだ」と感心したものです。妹のように言い返せたらどんなにスッキリするだろうかと思っていました。

そして、叩かれたり縛られたりするようなことがあっても、翌日にはケロッとしていたりするんです。この妹は悪戯や悪いこともしましたけど、非常にマイペースでタフでした。今ではとても頼りがいのある人になっています。

「レジリエンス」(Resilience)という言葉があります。

Wikipedia にはこう書いてあります。

心理学におけるレジリエンス(Resilience)とは、社会的ディスアドバンテージや、己に不利な状況において、そういった状況に自身のライフタスクを対応させる個人の能力と定義される。自己に不利な状況、あるいはストレスとは、家族、人間関係、健康問題、職場や金銭的な心配事、その他より起こり得る。

脆弱性(Vulnerability)の反対の概念であり、自発的治癒力の意味である。「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」「再起力」などとも訳されるが、訳語を用いずそのままレジリエンス、またはレジリアンスと表記して用いることが多い。

簡単に言えば、何かつらいことがあった時にポキリと折れてしまうような弱さの反対の性質のことです。耐える力、持ちこたえる力、抵抗できる力、回復して立ち上がる力、そういう強さを持っていることです。

この性質は育つ環境によって獲得するとも聞きますけど、私は生まれ持った気質というのもあるんじゃあないかと思うんです。下の妹は、生まれつきメンタルの強さを持っていたんじゃあないかと。

私は幼い頃、知らない親戚の人などが家に来ると激しく泣いたそうです。あまりに激しく泣いて泣き止まないので、来客が玄関から上がらずに帰ってしまうこともあったそうなんですけど。

人見知りをして泣いていたということは、不安や恐怖を感じていたということですから、私は生まれつき繊細で怖いことや悲しいことを感知するセンサーが敏感だったのかもしれないと思うんですよ。

7歳も離れた妹と私とでは育った環境は確かに違います。家族の状況も経済状態も違いますけど、何が下の妹をレジリエンスのある人にしたんだろうかと思います。まあ、妹は妹で私が知らない苦しみや悲しみを経験していたのかもしれませんけど。


心理学の研究も進んでいて、子供をレジリエンスのある人に育てるために親はどんなことに気を付けるべきか、どういう言葉かけをすべきかということが書かれた育児書も出ていますし、そういう情報を提供しているウェブサイトもあります。

子育て中の方やこれから親になる方は、勉強されるといいと思いますよ。

私はね、子供を育てる上で一番大事なことは、子供に安心感を与えることだと思います。それがもう基本です。

幼稚園や小学校など家の外の世界では様々な経験をします。嫌な思いをすることがありますよ。外でつらいことがあっても、家に帰ったらお父さんやお母さんが話を聞いてくれて、困ったら助けてくれるという安心感が一番大事だと思うんです。

それなのに、家に帰ったら嫌なことが起きると分かっていてご覧なさい。家の外でつらいことが起きた後、不安と緊張を感じる家に帰って来るとしたら。そして、恐れていたとおりに家でもつらいことが起きて、それが繰り返されたら。

その子供がポキリと折れる枝になってしまうのも無理はないと思いますよ。

若いお父さんお母さん達、子育て経験者である父母や祖父母世代のやり方や考え方は間違っている可能性があることを忘れないでくださいよ。古いやり方は往々にして間違っていますからね。

「男なんだから」「お姉ちゃんなんだから」といった性別や年齢による不公平とか、食べ方から靴の脱ぎ方に至るまでガミガミと厳し過ぎるしつけとか、いい子にしないと鬼だとかオバケだとかが来ると言って恐怖でコントロールしようとするとかね。

子育ての目標は、子供が自立して生きて行けるようにすることです。他者を思いやったり協力出来たり、責任感のある社会の一員として生きて行ってもらいたいですけどね。

社会で生きて行くためには、ポキリと折れる枝よりもしなやかに曲がってまた元に戻る枝の方が生きやすいに決まっています。どうか子供さんをレジリエンスのある人に育てて下さい。


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2 件のコメント:

  1. ここ数日間の投稿は、読んでいてとても胸が苦しくなりました。これを読んでいる母は、もっと苦しくてつらかったと思います。
    当時のことはほとんど覚えていなくて、紐でくくられていた事は多少覚えていますが、やはり末子なので対して怒られなかったんだと思います。
    言い返していたのも覚えていますよ。文句を言って父親に「何~!!(怒)」と追いかけられて、2階に駆け上がった事とか覚えています。
    でもその後、間に入ってくれている人のことなんか、全然考えていませんでしたよ。申し訳ない。
    歳をとっての7歳差は大したことないけど、小さいときのこの差は大きくて、厳しい姉って感じでした。正論を言われると口では敵わないので、つば攻撃やあんなことをしてしまったのでしょう。スミマセン
    「レジリエンス」で書かれていたようなたいそうな人ではないですけどね。
    保育園に入ってから家に帰っても、誰もいない状況で鍵っ子だったので、多少強くなったのかも。
    文武両道で編み物・料理・菓子作り何でもできる自慢の姉ですよ。今も昔も。

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    1. コメントを書いてくれてありがとう。一連の記事を読んでお母ちゃんの心を傷つけることだけが心配でした。でも知っていて欲しいという気持ちがありました。この歳になるまで我慢して来たけど、このままでは残りの人生も苦しみ続けると思いましたからね。お母ちゃんはどうしているでしょうか。よろしく言ってください。

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