2024年7月22日

虐待の連鎖と逃げるという選択

うつ病の症状が出始めた頃だったと思いますが、私は母に子供の頃のつらかったことを少しだけ打ち明けたことがあります。父親に大声で怒鳴られることがトラウマになったというような大雑把な話で、詳しい話はしていませんけど。

母は、父親の父親が怖い人だったらしいという話を私にしました。自分が父親に怒鳴られて育ったから、自分の子供にも同じような態度をとってしまうのだろうということで、父親も被害者なのだというような話でした。

それを聞いて、私も理解してあげなくちゃあいけないのかなあと思ったものです。当時はまだ父親との関係を修復しなくてはいけないと思っていましたし。

しかしね、考えてみれば間違っているんですよ。

自分が親に暴力をふるわれて育ったから、自分の子供に暴力をふるうのも仕方がないという論理でしょ?よくある話ですけど、だからといって被害者である子供が親の加害を許すべきだという話にはなりませんよ。

親から何らかの「虐待」を受けて育った人が親になった時に、自分の子供に対して同じような「虐待」を繰り返してしまうことは多いです。

「虐待」というのは身体的な暴力だけではありませんよ。言葉による暴力、侮辱、いやがらせ、ネグレクト、無視するなどの行為を繰り返し日常的に行うことです。

家庭における「虐待」の加害者は様々ですが、子供が成長する過程で受ける「虐待」の加害者は親である場合がほとんどです。

子供の頃にこうした「虐待」によってトラウマを抱えて育った人の多くが、大人になってから身体の不調や精神的な病気で苦労するわけです。そして、そうした人が親になった時に同じような「虐待」を繰り返すことが多いわけですよ。

私自身が、子供達に些細なことでガミガミと言ったり時には怒鳴ったりしていました。それは、日本の実家にいた時にひどかったです。私の父親が言いそうなことを私が言っていたという感じです。

こうした自分の行動には自己嫌悪を感じましたし、子供達にどう対応するのが教育的に最も良いかということは考えるんですけど、いらいらして怒鳴ってしまうこともありました。

でも、「虐待」と呼ばれるようなものではなかったですよ。自分が経験したようなことは絶対に繰り返さないと自分に言い聞かせていましたからね。

ここで、子供さんがいらっしゃる方に私が伝えたいのは、もしも自分が子供に対して自分が受けたのと同じような「虐待」をしているかもしれないと気づいた場合は、「虐待」の連鎖を止めるためにも、あなた自身が抱えるトラウマ(心の傷)の治療が必要だということです。

女性の場合は、ホルモンのバランスが乱れる更年期の頃にうつ病を発症することも多いそうです。

そんな年齢になってから何十年も前の子供の頃のことでうつ病になったりするのかと不思議に思われるかもしれませんが、「更年期うつ病」と呼ばれる病気の原因が子供の頃のトラウマであるケースは多いのです。

その場合もトラウマの治療が必要なわけですが、虐待をおこなった加害者と自分が、虐待が行われた頃と同じような状況で暮らしていては良くならないということを知っておくべきです。

何らかの理由で「逃げる」すなわち「距離を取る」という選択肢をあきらめているのなら、考え直すべきだと思います。

加害者が親の場合、その親が高齢になっている場合は、「逃げる」という選択は難しいかもしれません。扶養義務という問題もあるでしょうし。

加害者が温厚になったとか高齢になって弱くなったとか、もう「虐待」はしなくなったからという理由で自分を納得させて、同じ状況で暮らしている方も多いと思います。

しかしね、不調が悪化してうつ病になっているような方は、トラウマが起きた場所や同じ状況にいたのでは治りませんよ。あなたには安心できる場所が必要なんです。

そして、安心できる場所を見つける方法はいろいろあるはずなんです。

扶養義務の問題がない方や若い方は、「逃げる」という選択肢はさほど難しいことではないはずですが、「育ててくれた親を捨てるような行動は間違っている」と普通の人なら考えるでしょうし、第三者からそう責められることもあるでしょう。罪悪感を感じるのは確実ですから、なかなか出来ないことではあります。

でもね、あなたは自分を一番大事にしてもいいんだと私は言いたいです。自分よりも加害者を大事にする必要は無いんですから。

そして、自分が「虐待」によるトラウマから回復して自分の人生を生きるためには、「逃げる」すなわち「距離を取る」という選択肢を否定する必要はないということを私は伝えたいです。

勇気を出して自分を大事にして下さい。


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