2024年7月17日

スモールトークとは

「失礼な人達とありがとう」という記事で少し触れた「スモールトーク」(Small Talk)すなわち「小さなおしゃべり」というものですが、辞書を引くと「世間話、雑談」と書いてあります。

お互いをよく知らない人達、あるいは偶然同じ場所に居合わせただけの全くの赤の他人がする軽い会話のことです。

オーストラリア社会では、知らない人と「スモールトーク」をするのは文化の一部なんです。

オーストラリアに住み始めて面食らったことの一つがこれでした。知らない人が話しかけて来るのですよ。スーパーのレジ係の人が話しかけて来たり、エレベーターで一緒になった人がお天気がどうのこうのと話しかけて来たりするんです。

お店の人が話しかけて来るのは、おそらく「スモールトーク」をするようにと指導されているんだと思いますね。若いスタッフが無理して頑張っている感じがすることも多いですから。

話しかけられたら無視するわけにはいきませんので返事をしますけど、慣れていない者には簡単なことではないんですよ。

知らない人との会話だと、どんなことを話せばいいかを知っていることが重要です。お天気のことを話題にされたらどう返したらいいのかを知らないと、話しかけられてもうろたえるだけです。「スモールトーク」は社交スキルの一つだと思います。

オーストラリア暮らしですっかり「スモールトーク」が身についた私は、日本に行った時にもお店の人に「スモールトーク」をしていました。馴れ馴れしいおばさんだと思われたことでしょう。

しかし、この「スモールトーク」がストレスになっていた時もあるんです。私は一時期「うつ病」や「不安障害」で外出するのも苦痛だった時期があるのですよ。15年間も抗うつ薬を服用していたんです。

そういう時には、スーパーのレジ係に話しかけられたくないわけです。何人かいるレジ係の中でも特におしゃべりな人というのを知っていましたから、そういうレジ係は避けていました。あまり話しかけて来なさそうな若者を選んでいたものです。

「スモールトーク」が得意な民族というのがいるように思います。上手なのは白人系です。アジア系やアフリカ系の人達は話しかけて来ませんし、こっちが話しかけると驚かれます。

会社に勤めている人達の間でも、「スモールトーク」は大事なスキルだとされています。仕事上で苦痛であったり不快であったりする会話をする必要がある場合に、「スモールトーク」によって緊張を和らげたりするのにも役立ちます。


おばさんになった今、知らない人と話をするのをためらう気持ちもありませんので、「スモールトーク」は積極的にしています。一日のうちで話をしたのは、家族以外では「スモールトーク」をした他人だけということもありますよ。

高齢の一人暮らしの方は、そういうケースも多いだろうと思います。だから、話しかけられたらちゃんと気の利いたことを返して会話が出来るようにしたいと思います。

昨日、薬を買いに行ったんですけどね、その薬屋にはいつも仏頂面をしている女性スタッフがいるんです。初めて見かけた時は緊張しているのかとも思いましたが、ずっと不機嫌な表情のままです。ニッコリしたことは一度もありません。

薬局のカウンターでその女性が対応しました。処方箋を渡して「いつもと同じブランドの薬でお願いします」などと頼み、彼女が無言で書類に書き込んでいる時、私は彼女の手指のネイルについて話しかけました。

いつも仏頂面で「スモールトーク」などしない人なので、黙って待っている間にいつも彼女のネイルを見ていたんです。見る度に違う、感じの良いきれいなネイルをしていると思っていたんですよ。

この「スモールトーク」で私は初めて彼女の表情がゆるむのを見ました。そんなに頻繁に変えているわけではないけど、ネイルアートが好きなんだそうです。

背の高い別の女性スタッフは、丁寧ではあるけど上から目線で偉そうな人だといつも思っていました。もしかしたらアジア人を見下しているのかとも思っていました。

ある時、その人がレジに対応て「How Are you?」と言いました。

皆んな必ずそう言います。「How Are you?」は「元気ですか」「調子はどうですか」といった意味ですが、型通りのあいさつで大した意味はありません。私は返事をした後で、その人に「How Are you?」と聞き返しました。

聞き返されて驚いたその人は、思わずニッコリしました。その後、レジをしながらお天気の話をしたんですが、いつも偉そうだと思っていたその人が感じの良い人だったのには驚きましたよ。

「スモールトーク」の効果というのを感じる出来事でした。


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