2023年7月31日

ガス使用禁止とエネルギー問題

ヴィクトリア州では、来年1月1日から新築の住宅や公共施設でガスが使えなくなるそうです。ガス管に接続することが禁止されるからです。

温室効果ガスの削減目標達成に向けた取り組みだそうですけど、ガス管に接続することを禁止してガスを使いたくても使えなくするというんですから、いずれはガスコンロとかガス式の温水器や暖房器具の販売も禁止して行くのではないでしょうか。

私は、お料理にはガスコンロがいいです。電気コンロやIH(電磁調理器)を使ったことはありますけど、やっぱりガスがいいです。でも、家庭でのガスの使用をやめることで温室効果ガスの排出削減に大きな効果があるのなら、ガスをあきらめるしかないでしょう。

ガスが使えなくなると、今のところ代替品が無いわけですから完全に電気に頼ることになります。電気料金の値上げが続く中で、冬の暖房も温水器も全て電気ということになると電気代が非常に心配です。

物価が上がり続けているメルボルンでは、住宅価格はもう一般人には手が届かないレベルに達していますが、賃貸住宅の家賃も値上がりが続いていて暮らしに困窮する人が激増しているのに、何もかも全部電気にしてやっていけるんですかね。

電気に比べてガスがはるかに安かったのは昔の話で、温水器や暖房をガスにする利点が感じられなくなって来ていますから、電気に変えてもコストは同じということなら大きな影響は無いのかもしれませんけど。

私達もガス料金の請求額が2000ドルを超えてショックを受け、ガス式のセントラルヒーティングを使うのを止めました。エアコンの暖房機能に頼ると電気代が心配なので薪ストーブを使っています。

しかしねえ、こんな田舎環境だから煙を出す薪ストーブが使えるわけですけど、はっきり言って薪ストーブは温室効果ガスを出しまくりでしょ?環境に悪い暖房方法ですよ。そのうち薪ストーブは使用禁止になっても不思議ではありません。

薪ストーブもダメ、ガス暖房もダメとなったら、暖房は電気に頼るしかなくなります。

これまで数日間も続いた停電を何度か経験していますけど、電気がなくてもガスのお陰でシャワーを浴びられたし、お湯を沸かしてお茶を飲んだり料理も出来たんですが、すべて電気に頼るようになってから数日間の停電なんてちょっと考えられません。


ガス使用を止めて、安くてクリーンな電気にシフトするとヴィクトリア州政府は言っていますけど、「クリーン」というのは分かりますが「安い」というのが実現できていませんからね。

それに、ヴィクトリア州は化石燃料に依存する火力発電を廃止していますから、人口が増え続けるメルボルンでは電力の安定した供給ということにも問題があるんですよ。

世界有数の石炭の埋蔵量を誇るオーストラリアですからね、それを使って火力発電すれば安い電気の安定供給は容易なんですが、石炭火力発電は廃止されて来ています。

原子力発電も、オーストラリアでは国民の反対が強いので選択肢となりません。

ご存知でしたか?この国には原子力発電所は一つも無いんですよ。ウランの埋蔵量では世界一なんですけどね。

一時期、連邦政府が原子力発電を推進したことがありました。温室効果ガスの削減のためには原子力発電が最も有効な手段だということでね。使用済み核燃料といった核のごみも、人が住んでいない広大な土地があるから処理するのに問題が無いと言って。

しかし、オーストラリア国民は反対したんです。というか、各州政府が自分の州には原子力発電所なんて作らせないと拒否しましたからね、原子力は選択肢になり得ないんです。

国民の大半は、再生可能エネルギー(Renewable Energy)にシフトすることを支持しています。

再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、海の波力や地熱といった自然界に存在するエネルギーのことですけど、こうしたエネルギーでどうやって「安い」電力を「安定的に供給」していくのか、そこのところが最大の課題ですよ。

それが実現できる見通しも立ってないのにガスの使用を禁止して電気に依存する社会に変えようとしているわけですから、不安を感じる人は少なくないと思います。

経済力のある友人のエクリーさんは、屋根に太陽光発電パネルを設置して電気は自前ですけど、そういうのは誰でもが出来ることではありません。それに太陽光発電パネルには寿命があるので、いずれは粗大ごみになるんです。それも問題でしょう。

地球温暖化による気候変動が大きな社会問題になっていますから、この問題のために自分達が出来ることを、たとえ痛みを伴ってもやって行こうとする政府の方針は指示しますが、将来的に電気だけで暮らすようになるのなら、やはり熱効率の良い小さな家に引っ越さないといけません。

今住んでいる家は大き過ぎるし、隙間風がびゅうびゅう吹き込むし、熱効率は最低の家です。暖めるのも冷やすのも余計にエネルギーが必要です。花粉も入って来るし、掃除も大変だし。

自家発電能力のある集合住宅というのがいいかもしれません。きっとそういう住宅が増えて行くはずです。


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