2022年12月8日

3回目の手術と医療制度

うちの息子がハイスクールの頃から痔の問題を抱えていたことを知ったのは、状態が悪化してついに医者に相談したというのを息子から聞いた時です。それは新型コロナのパンデミックが始まる前の年の12月ですから、2019年のことですね。

もう3年にもなるんですよ。

私達家族が経済的に苦しかったのと、娘が精神的な病気で苦しんでいて、その治療費の工面にも親が苦労しているのを知っていた息子は、自分の痔の問題は誰にも言わずに我慢していたのですよ。

そのために、重症にまで悪化してしまったのです。

息子が相談したGP(一般開業医)の若きリム医師は、すぐに病院の専門医に診察してもらえるように手配してくださったんですけど、診察してもらえるまで何週間か待たされて、専門医からはクローン病かもしれないから内視鏡検査が必要と言われました。

検査は結局複数回必要だったのですが、オーストラリアの公立の病院というのは待ち時間が大変なことになっていましてね、検査を受けるにも診察を受けるにもとにかく待たされるんです。

公立の病院は数が足りていないし、医者や看護師などのスタッフも足りていないからです。

2〜3週間待って内視鏡検査を受け、また2〜3週間待って結果を聞きに行き、再検査が必要だと言われてまた2〜3週間待ち、という具合に、クローン病ではないと分かるまでに何ヶ月もかかりました。

やっと手術をしてもらえることが決まった時に、新型コロナのために命に関わらない手術は中止になってしまい、その後、息子の痔は大変悪化して、激痛のために寝たきり状態になったんですよ。

その後どうなったのかというのは、このブログを定期的に読んでくださっている皆さんはご存知でしょうけど、手術費用全額負担で民間の病院で手術を受けたのです。民間の病院では、通常通り手術は行われていましたから。

それが一昨年の暮れのことです。

公立の病院で手術をしてもらうと無料なんです。民間の医療保険に入っていれば、民間の病院での手術費用の何割かは保険でカバーされるのでしょうけど、我が家は民間の医療保険に入る経済力はありません。

手術の費用は、うちの夫の家族が援助してくました。

1回の手術では治らない重症でしたので2回目の手術が必要でしたが、2回目は公立病院で受けられると聞いていたのに、新型コロナ患者が激増してメルボルンは世界最長となったロックダウンに突入。

もちろん命に関わらない手術は中止ですよ。

1年以上待っても見通しが立たないことから、結局、再び民間の病院で2回目の手術を受けたのが今年の2月でした。

決めてから手術をしてもらうまで2週間ほどでしたよ。経済力があると、このように迅速に必要な医療サービスを受けることができるわけです。

さて、

昨日のことですが、息子は手術をしてくれた専門医の診察を受けに行きました。この医者は、公立の病院でもパートタイムで仕事をしている人で、3年前からずっとお世話になっている方なんですけど。

やっぱり3回目の手術が必要なんだそうです。そして、3回目の手術は複数の公立病院で順番待ちのリストに入っているそうです。

上手く行けば今年中に手術してもらえるということだったんですが、現在メルボルンの公立病院はどこも患者数に対応できていない状況で、手術が延期になっているというニュースがありました。

公立病院に来る患者が多すぎるのと、病院の医者や看護師が足りていないのが原因です。

もともと公立病院では医者や看護師が足りていないのに、新型コロナを含む様々な病気で休んでいる人が多いので、もっと足りなくなっているそうなんですよ。

そして、患者が多すぎるというのはね、新型コロナのせいではないそうです。

もちろん新型コロナの患者もいますけど、メルボルンでは患者数はずっと横ばいが続いていますし、重症化する人は多くないのですよ。

公立の病院に来る人が急増している理由は、新型コロナ以外の病気や事故なんだそうです。地域のGP(一般開業医)に行けば済むような問題なのに、公立病院の救急外来にやって来る人が多いというのが理由の一つなのです。

地域によってはGP(一般開業医)も足りていないことと、経済的な理由でGPへ行けない人達が、無料で診察を受けられる公立病院にやって来ているということなんです。

物価の上昇で生活が苦しい人が増えていると聞きますが、最近は賃貸住宅の家賃が値上がりし続けていますし、今年に入ってからは、インフレ抑制のためにオーストラリアの準備銀行(中央銀行)が金利を上げ続けているために、住宅ローンの金利も値上がりし続けているんです。

GPで診察を受けると1回の診察で60〜70ドルかかります。支払った診察料の大部分は公的医療制度のメディケアで払い戻されますけど、食べるのにも苦労している人に60〜70ドルは払えませんからね。

公立の病院では、緊急を要する患者から診察するので、緊急ではない人は十何時間も待たされたりするような状況だそうですよ。他の医療機関へ行くことができる人は、病院へ来ないで他へ行ってくださいと病院が声明を出すような状況です。

こんなことでは、

息子の3回目の手術は、今年中はもう無理なのは確実ですけど、一体どれだけ待たされるのか予測もできません。

現在は、ほぼ普通の暮らしができるようになっていますし、運転もできるし、長時間イスに座って絵を描く仕事もできますし、夫が木を切ったり草を切ったりする仕事の手伝いもできているので、3回目の手術は公立の病院で順番が来るのを待つ予定ですけど。

完全に良くなったら、いろいろやりたいことがあるそうなんですよ。でもね、3回目の手術がいつになるかが分からないので計画が立てられないんですって。絵の仕事だけでは収入が安定しないので別の仕事もしたいらしいのですけど。

本当に気の毒な状況です。20代の前半を無駄にしてしまいましたからね。

こんなにひどくなる前に早く治療を受けていればと、悔やまれてなりません。


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