夫に先天性の黄斑変性症という目が見えなくなる病気があることが分かったのは、2016年のことです。リーディンググラス(別名:老眼鏡)が壊れてしまって、新しい老眼鏡を作ってもらうために目の検査をしたところ、偶然に分かったのです。
このブログで度々話題にしていますが、黄斑変性という目の病気は、英語では「Macular Degeneration」と呼ばれます。眼の網膜にある黄斑部が変性を起こす疾患で、夫の母親が長年勤めた教師の仕事を辞めざるを得なくなったのはこの病気のせいでした。
黄斑というのは、網膜の神経節細胞が最も高密度で集まっている視野の中心となる部分で、黄色っぽく見えるので黄斑と呼ばれるそうですが、いわゆる「見えるもの」の詳細を知覚する部分です。
この黄斑の変性が広がると正常に機能しなくなる細胞が増えて、ものが歪んで見えたり、全く見えなくなったりするのです。
下の写真は、2016年に撮ったものです。
放射線状の細い血管が集まっている大きな黒い丸い部分は、視神経が集まって束になっている部分です。「視神経乳頭」と呼ばれる部分で、ここには光を感じる細胞が無いので「盲点」とも呼ばれます。
その横に薄っすらと少し小さめの丸が見えますが、それが黄斑です。
黄斑の周囲の黒い斑点は死んだ細胞です。夫の場合は、こうして細胞が徐々に死んでしまうのです。2016年以前にこうした眼底の写真を撮っていれば、もっと早くこの病気のことが分かったでしょうけど、分かったとしても治療法も、細胞が死んでいくのを遅らせる方法も見つかっていません。
この時、メルボルン大学の専門医の研究に協力するために診察を受けましたが、医者からは「将来目が見えなくなる時に備えることが最善のできることだ」と言われました。
細胞が死んだ部分は徐々に増えて、一昨日撮ってもらった写真ではこのようになっています。6年間でここまで進行しました。
まだ見えている右目の黄斑部にも黒い斑点がかかっています。まだ見えているのが不思議なほどなんですけど、右目の視野の中心部が見えなくなり始めるのは、おそらく1〜2年後ではないかと思います。
もっと遅いと助かりますけど。
数年のうちに、両方の目の視野の中心部分は真っ黒になって見えなくなるんですからね、医者が言うように、見えなくなる時に備えなくてはいけません。
夫が元気が無くなっていた原因の一つは、現在聞いている本なんだそうです。本を聞いているというのはどういうことかと言うと、もう本を読むことができませんからね、オーディオブック(本の朗読を録音したもの)を買ってそれを聞いているんですけど、英語圏では大変多くのオーディオブックが売られているんですよ。
現在聞いているのは「The 12 Week Year」という本だそうですが、どういう内容かと言うと、物事を成し遂げるために多くの場合1年というサイクルで目標を設定し、計画し、実行していきますが、これを1年ではなくて12週間サイクルで設定して、他人が12ヶ月で行うことを12週間で成し遂げることで、もっと多くのことを達成できるという話なんだそうです。
何だかストレスが溜まりそうな話ですよ。
12週間という短いサイクルで何かを成し遂げるために、最も重要なことに焦点を当てて明確にし、それを実行することへの切迫感を生み出し、1年という長い期間で計画する場合に陥りやすい低い生産性を回避するんだそうですが。
この本を聞きながら、かつての自分は「あんなこともしたい」「こんなこともやろう」と夢や希望や野心でいっぱいだったのに、今の自分には何も無い。成し遂げたいと思うことも、やってみたいと思う夢も無い。
そういうことを考えて気持ちが沈んでいたところ、クリームブリュレが失敗したのが引き金になって気持ちが落ち込んだんだそうです。
うちの夫は、ここ数年は安定していますが、双極性障害2型なので気分の波があります。つい数週間前までは同じツールショップに勤めるTさんと、会社の問題を解決するプロジェクトに異常なほどのめり込んでいましたけどね。朝の4時から起きて出勤前ミーティングをしたりして。
自転車通勤だって、ちょっと頑張り過ぎていた時期があるんです。
今は、気分の波が沈んでいる時期なんだと思います。
そのうち、また上昇しますよ。
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