世界のカトリック教会ナンバー3の地位にあり、ローマ法王庁の高官を務めたオーストラリア人のペル枢機卿が、1996年に起きた教会の聖歌隊メンバーだった13歳の少年二人に対する性的暴行を含む5つの罪で有罪の判決を受けたことは、今年の3月に「ペル枢機卿に有罪判決」という記事に書きました。
ペル氏は、もちろん控訴しました。それまで一貫して潔白を主張しておりましたし、今でもそうです。
これに対して、昨日、控訴裁判所が判事三人のうちの2対1の多数決によりペル氏の控訴を棄却する判断を下したのですが、私はそのニュースを聞いて驚きました。嬉しい驚きでしたけどね。
と言いますのも、
この裁判では、証拠というのが被害者である当時13歳だった男性の証言だけなのです。
もう一人は、直後から人が変わったようになり、素行不良となってヘロインに手を出し、学業成績も不振となって奨学金を取り消され、結局31歳の時にヘロインの過剰摂取で亡くなっているのですから。
その人のお葬式の後、もう一人の元少年が、死んだ友人とその家族のために事件のことを警察に相談したことがきっかけで捜査が進み、ついに有力者であったペル枢機卿が訴追されることになったのです。
控訴審で被告の弁護団は、元少年の証言が真実ではありえないという反証をいくつも提示したそうです。例えば、ミサの直後に誰にも気付かれないまま犯行に及ぶことは不可能だとか、重いローブを着ている枢機卿が性器を露出することは困難だとか。
控訴裁判所は全て却下し、元少年は真実を述べていると判断しました。そして、第一審で提示された証拠に基づいて「合理的な疑いの余地なく有罪」であると控訴を棄却したのです。
よほど元少年の証言が強いのだろうと思いました。
裁判中の証言内容は、2000ページ以上になるそうです。被告の弁護団からは厳しい追求や意地悪な質問があったことでしょう。
証言が真実であると強く信じるに足るものがなければ、陪審員が全員一致で有罪判決は出せないし、今回の控訴棄却というのもありえないわけですよ。
報道関係者で唯一、元少年に会ったことがあり、裁判をずっと見続けてきたABC放送のジャーナリストであるルイーズ・ミリガン(Louise Milligan)のレポートによると、ペル枢機卿を有罪にした唯一の証拠である元少年の証言が、真実のみを述べている人でなければできないものだったということです。
もっと詳しく知りたいなあ。
控訴棄却後に刑務所に戻されたペル氏ですが、最後の手段である最高裁への上告を検討しているそうです。
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