2024年9月2日

父の日のご馳走と重たい会話

昨日の日曜日は父の日だったので、うちの娘がご馳走を作りに帰って来ました。

作ったのはラザーニャ。パスタを粉から手作りして、合いびき肉で作ったソースには野菜やレンズ豆もいっぱい入っていて、ベシャメルソースもチーズもたっぷりの10人分くらいありそうなラザーニャを、一日がかりで作りました。


息子はデザートを作りました。私のレシピを使って「ルバーブとイチゴのコブラー」を作りました。



どちらも大変美味しかったです。片付けも洗い物もちゃんとやってくれましたから、お母さんも文句なしでした。


さて、ご馳走を食べながらの会話なんですけど、これがどうしてもうちの娘の仕事関連の話になるんですよ。

大学院で心理学を学んでいるうちの娘は、臨床心理士になるために今年の前半は病院のリハビリテーション科で研修を行い、7月からは「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」(Forensic Disability Services)の司法精神医療施設で研修を行っているんですが。

犯罪事件を起こした人々の中で精神障害や重篤なメンタルヘルスの問題がある人達にサポートと治療を提供する施設ということなんですど、娘が研修している施設に入所している人達というのは知的障害のある性犯罪者なんだそうです。

その施設とは別の施設でも研修していますが、そこでは殺人や暴行事件などを起こした犯罪者にカウンセリングをしているそうです。先週は大変だったそうですよ。違法薬物中毒者で妻やガールフレンドに暴行を加えて逮捕された人達が対象だったからです。全員に知的障害があります。

こういう犯罪者達の社会復帰を支援する仕事というのは非常に難しいそうです。予算が足りていないので人材が不足しているのが最大の問題だそうですけど。

根本的な問題もありますよ。性犯罪者のうちでも小児性愛者というのは、カウンセリングで治せるようなものではないでしょう?社会復帰した途端に再び子供を襲った人もいるそうですしね。

私なんかは、そういう人達は隔離し続けるか科学的去勢のような強制的な措置が必要だと思うわけですけど、実際にこうした犯罪者と接して話を聞いている娘は、彼等は被害者でもあるんだと言うのです。親や家族や社会の誰かから虐待やいじめを受けて育ったんだと。

そして、知的障害のために様々なことを正しく判断することが出来ないし、他の犯罪者に搾取されたり被害を受けたりもしているんだと。

彼等は確かに犯罪を犯しましたが、だからもう隔離し続けるべきとか死んだ方がいいとか、そういう話には出来ないんだと。何とか社会復帰を支援したいけど十分なことが出来ていないのだと。

解決策の見えない重たい話をしながら、ヴィクトリア州の「性犯罪者隔離村」なるものの話になりました。

ヴィクトリア州西部にアララット(Ararat)という町があるんですけど、この町外れに「Hopkins Correctional Centre」(ホプキンス矯正センター)という施設があります。刑務所みたいな場所です。

ここに隣接した形で作られた「Corella Place」(コレラ・プレース)と呼ばれる隔離村があるんですよ。(ABC放送の記事を参照)

高齢者が集まって生活するシニア村というのがありますけど、それの性犯罪者版みたいな隔離村です。小さな家がたくさん集まっていて、性犯罪者達はそれぞれ独立して暮らしています。

刑期を終えても社会復帰をするには再犯のリスクが高すぎる場合、あるいは社会復帰への準備やリハビリのために、この隔離村で暮らすんだそうです。社会復帰後にリスクが高くなるとここに戻されたりもするそうですよ。

フェンスやゲートに囲まれていますが、逃げようと思えば逃げられます。ただし、足首に電子監視装置を装着されて24時間監視されているそうですから、たとえ逃げてもすぐに捕まります。

性犯罪者は再犯の確率が高いので、この隔離村を出て社会復帰した後も、もちろん一定期間は監視され続けるわけですが、24時間監視されていても再び犯罪を犯す人も多いわけですよ。性犯罪者の社会復帰支援には、本当に莫大な税金が使われているんですけど。

ABCの記事にも書いてありますが、「NDIS(National Disability Insurance Scheme)」というオーストラリアの障害者保険制度に当てられる予算のうちの多くが、障害のある一般の善良な市民の暮らしを支援するためではなくて、知的障害のある犯罪者の社会復帰支援に費やされているそうですよ。

娘が帰って来るたびに、終わりのない重たい会話が繰り返されています。


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