2024年6月3日

取り壊された家と壊れた心

土曜日に義母(うちの夫の母親)の家に行った話の続きなんですが、私には楽しみにしていたことが一つありました。

それは、同じ敷地内にある義弟家族が住んでいる家の建て替えの状況を見ることでした。

その家は、元々は古い小さな木造の家で「コテッジ」と呼ばれていました。部屋が2つ(寝室と居間)と小さなキッチンとバスルームがあるだけの小屋みたいな家でした。

私がオーストラリアに移民した頃、もう30年も前のことですけど、うちの夫がこの家に住んでいたんです。当時パニック障害で仕事が出来なくなっていた夫がリフォームを始めたところでしたが、私も一緒に住み始めてからは本格的なリフォームになりました。

私も手伝いましたけど、ほとんどの作業は夫が一人でやりました。

最初にキッチンとバスルームをリフォームしました。キッチンが狭かったので、キッチンの外にウッドデッキを作り、そこで食事が出来るようにしました。玄関も作りました。

お金が無いのでね、すべて自分達で作業したのですよ。そして、私達はこの家のキッチンで結婚式を上げたんです。突然の悪天候のためやむを得ずでしたけど。

息子が生まれる前には、居住スペースを広げるために大きな部屋を増築しました。壁も天井も板張りにしたのですが、天井に板を張るのは大変な作業でした。

娘が生まれる前にはさらに増築して、事務所を作ったり私達夫婦の寝室を作ったりしました。その時に日本式のお風呂場も作ったのですよ。

私達は20年ほど前にこの家から引っ越し、その後は賃貸に出されていましたが、10年ほど前から義弟家族が住んでいます。そして、義弟夫婦がこの家を建て替えることに決めたのです。

一部だけ残して、キッチンもバスルームもウッドデッキも玄関も日本式のお風呂場も取り壊しました。そこに彼等の好みの新しい家を建てているんですけど、もちろん自分達で作業なんてしていません。

この家は、私がオーストラリアに来てから住み始めた家でしたし、何年もかけて自分達でリフォームしたんですし、子供達が幼かった頃の思い出もありますし。

その家が取り壊されて無くなっているのを見たら、寂しい気持ちになるかもしれないと思っていました。

しかし、実際に見てみると私は何とも思いませんでした。悲しいとか寂しいという気持ちよりも、新しく建てている家がとても良いデザインだったので、完成が楽しみな気持ちでしたよ。

ところが…

うちの夫は、建て替えているのを見に行こうともしなかったんです。

見たくない様子でした。

英語で「ハートブロークン」(Heartbroken)という言葉がありますけどね、心が壊れた状態という意味の言葉ですが、うちの夫はそれだと思います。

何年もかけて大いに苦労しながら自分が建てた家が取り壊されているのを見るのは、そりゃあ悲しいでしょう。

特に日本式のお風呂場はね、私達には特別のものでした。家に継ぎ足すようにして建てたんですが、骨組みを作るのもコンクリートを流し込むのもタイルを張るのも、全部うちの夫が一人で作業したんです。それも仕事と両立させながらですよ。

そのお風呂場にあった日本式の浴槽は、現在義母が植木鉢として使っています。庭の端にポツンと置かれていて、ツバキの木が植えてありました。

あの浴槽はね、オーストラリア製の浴槽だったんですよ。日本式の浴槽を作って販売している会社があったんです。それを手に入れて、床も壁もタイル張りの日本式のお風呂を作ったんです。

二人でタイルを買いに行ったことを今でも覚えています。

うちの夫は、あの浴槽にツバキの木が植えてあるのなんて見たくないだろうと思いますよ。見たくない気持ちは分かります。悲しいですよね。

しかし、住んでいるのは義弟家族なんですから、自分達が住みやすい家に建て替えたいという彼等の気持ちも分かります。(それなのにバイロンベイという街に引っ越すつもりだというのは分かりません。)

うちの夫が建てた一部分はまだ残っていますから、完全に何もかも無くなってしまったわけではないですからね、そんなにがっかりしないで欲しいです。


建て替えている家は、とても素敵な家になると思いますよ。

壁の骨組みはもう出来ていて、ウッドデッキ部分は半分完成していましたが、さすがはプロの大工さんが作っているだけあって、階段なんてすごくいい感じでしたよ。

仕事が遅いので義弟はイライラしているようですが、クリスマスまでには完成するでしょう。


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