私が持っていた日本語の本を処分した話は「読書と本の処分」という記事に書いたんですけど、文庫本と新書の多くは娘が住んでいるシェアハウスに持って行ってもらったんです。
そのシェアハウスの住人は日本人が多くて、日本人が集まることも多いと聞いていましから、誰かに読んでもらえるかもしれないと思いましてね。
持って行ってもらった本の話をしているうちに、娘が自分が子供の頃の最高の思い出の一つは、病気になって「ヴァレカイ」を観に行けなかった日に私が本を読んでくれたことだと言ったんです。
「ヴァレカイ」というのは、私達家族にとって特別な思い出と結びついている言葉です。
カナダのケベック州に拠点を置く「シルク・ドゥ・ソレイユ」というエンターテイメント会社がありますが、皆さんご存知でしょうか。「太陽のサーカス」という意味だそうですけど、サーカスと聞いて思い描くものとは一線を画す非常に芸術性の高いショーを上演することで有名でした。
「有名でした」と過去形にしたのは、聞くところによると新型コロナの影響で経営破綻したそうなんですよ。
この「シルク・ドゥ・ソレイユ」が世界を巡回して上演していた「ヴァレカイ」というショーがメルボルンにもやって来まして、大変素晴らしいという評判を聞いたので私達家族も観に行くことにしたんです。うちの娘は小学校の2年生でした。
ところが、何か楽しみにしているイベントがあると必ず病気になっていた娘は、「ヴァレカイ」を観に行く当日にガストロ(Gastro)になりましてね。ガストロというのは胃腸炎のことです。
下痢がひどくて行けなかったんですよ。私もあきらめるしかなくて娘と家に残り、夫と息子の2人だけが観に行ったんですけど。
下の写真は、この日病気になってがっくり来ている7歳の娘です。
「ヴァレカイ」と聞くと、夫と息子は素晴らしいエンターテインメントを思い出し、娘と私はガストロで惨めだったことを思い出すというわけで、「ヴァレカイ」と「ガストロ」はセットで記憶されているんです。
ところが、
この時、病気の娘に私がある本を一日がかりで読んでやったそうなんですよ。お母さんが自分のために本を読んでくれたというのも幸せだったらしいですけど、その本の内容が素敵だったので心に残っているらしいんです。
どういう本だったかは覚えていないそうです。女の子の話で、有名な日本の俳優だかタレントだかが書いた本だとお母さんが言ったと娘は言うんですけど。
有名な日本の俳優だかタレントだかが書いた女の子の話で、一日がかりで読むほど長くて、小学校の2年生が楽しめるストーリー。
一体どの本を読んでやったんだろうと気になって考えていたら、突然思い出しました。
それはね、黒柳徹子さんの「窓ぎわのトットちゃん」ですよ。
大ベストセラーになった本ですし、皆さんもきっと読んだことがおありでしょう。
最後までは読まなかったと思います。読み終える前に「ヴァレカイ」を観に行っていた夫と息子が帰って来ましたからね。「すごかったあ」「素晴らしかったあ」と言うのを聞いて、娘は大変ご機嫌が悪くなりました。
続きを読んで欲しいと頼まれた記憶もありますが、最後まで読んでやっていないと思います。
大人になった娘が今読んだら、きっと楽しむと思いますよ。日本語では読めませんから英語版を読むしかないでしょうけど、いつか読んでみて欲しいです。
「窓ぎわのトットちゃん」という本は、日本語版も英語版も両方持っていたんですけどね、誰かに貸したんでしょう。本は行方不明です。
あの日、病気の娘に本を読んでやったことなど私は忘れていましたが、娘には子供の頃の最高の思い出の一つとして記憶に残っていると知って、親の責任というものを再認識させられました。
小さいお子さんがいらっしゃる皆さんは、今は忙しくて大変でしょうけど、子供が子供でいる時期はあっという間に終わってしまいますし、終わってしまったらやり直しができないということを、時々思い出してみてください。
私は後悔することがたくさんあるんですけどね、「ヴァレカイ」を観に行けなくて惨めだった娘を一人ぼっちで寝させずに本を読んでやったことは、お母さんとしては良いことをしたなと思いました。
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