2023年2月6日

日本で大きくならなくて良かった

うちの夫の知り合いのLさんは中国系のマレーシア人で、普段は経理の仕事をしておられますが、イベントなどで食べ物を売る店を出したりお料理のデモンストレーションなんかもやっていらっしゃいます。そのアシスタントとして、うちの娘がいつも手伝いに行っています。

昨日の日曜日、グレン・ウェイヴァリー(Glen Waverley)という街で春節」(旧正月)をお祝いするイベントがありまして、お手伝いをすることになったからと娘が家に帰って来ました。

イベント会場周辺は駐車が困難だと言うので私が送って行ったんですけどね、まあものすごい人出でしたよ。あんなに大勢の中国人を見たのは初めてでした。会場周辺は大混雑で、車を停める場所なんて無くて、娘を下ろすのにも苦労しました。

それはともかく、

送って行く車の中でいろいろな話をしたんですが、先日から世界的にもニュースになっている日本の首相と首相秘書官の同性婚に関する発言についても話したんです。

日本の首相が「同性婚を認めると社会が変わってしまうから問題だ」と言ったらしいと聞いて、「そこがポイントなのに!」「社会を変えなくちゃあいけないのに!」と娘は大きな声を上げました。

次に秘書官が「同性カップルが隣りに住むのは嫌だ、見るのも嫌だ」と言ったそうだと聞いて、娘はショックを受けたようでした。娘は同性愛者ですからね、自分を見るのも嫌だと言われたのと同じことですから。

「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」とも言ったらしいと聞いて呆れていましたよ。

そして叫んだんです。

ああ日本で大きくならなくて良かった!ずっと日本にいたら、私はもう死んでるわ!

本当にそうかも知れないと思いました。

私達家族は、娘が幼稚園の頃から小学校の1年生を終わるまで日本に住んでいたんです。でも、私はうちの子供達に日本で教育を受けさせるわけには行かないと気づいたんです。

息子はハーフだということでいじめを受けていましたし、私自身のメンタルヘルスも日本に住んでいる間に悪化したんですが、住んでいた町では近くに相談できる医療機関も無くて。

それでオーストラリアに戻ることにしたんです。

オーストラリアの学校でもいじめはあるんですよ。うちの娘は、ハイスクールに入ってからある少女グループから、悪口を言われたり嫌がらせを受けたりしていました。

娘は小学校の頃に初めて本気で好きになったのが女の子だったことから、自分が同性愛者であることに気づき始めたそうですが、ハイスクールに入ってからはっきりと分かったのだそうです。自分が好きになるのは女の子だと。

ハイスクールの制服はスカートではなくズボンをはいていたことなどから「アンタは〇〇じゃあないのか」と同性愛者を罵る言葉を使ったいじめや嫌がらせが少女グループから続いたそうです。

うちの娘は、小学生の頃の抜毛症に始まって様々な不安症の症状に苦しみましたが、この同性愛に関する悩みやトラブルで症状は悪化して、摂食障害を患って食べることができなくなり、自傷を繰り返していた時期もあるのです。

娘は、私達家族が同性愛者に偏見が無いことも、家族が娘を愛していることも、何があっても自分をサポートしてくれるだろうということも、十分に分かっていましたけど、なかなか悩みを話してはくれませんでした。

最も状態がひどかった頃、ある日、お父さんとお母さんに言いたいことがあると言いましてね。

「私は女の子が好き!」と告白したんです。

「はい、分かりましたよ、女の子が好きなのね。あなたが好きになる人が女でも男でもお母さんはあなたがハッピーならそれでいいのよ、知ってるでしょ?」と言いましたら、「うん知ってる、でも一応言っておこうと思って」と言いました。

家族が100%自分を理解しサポートしてくれると分かっていても、そのくらい苦しんでいたんですよ。

もし日本に住んでいて、理解してくれない親戚や友達や学校の先生がいるかもしれない状況で、同性愛者であることを隠し続けなければならない暮らしをしていたら、娘は自傷行為では終わらずに命を断っていたかもしれません。

今では、病気だったことが信じられないくらいに元気になっています。友達も皆んな同性愛を含むLGBTGI+(性的少数者)に偏見が無い人達で、同性愛のこともオープンに話題にすることが出来て、娘は幸せそうです。

今日から大学院の勉強も始まりますしね、娘の暮らしは充実しているようですから、お母さんも嬉しいです。


しかし、世の中には、家族にさえ隠し続けるしか無くて、苦しむ人が大勢いますね。特に自分の性的指向に気づく中高生の頃には、多くの子供達が苦しみます。

苦しむ原因は、ありのままの自分を家族や友達に、あるいは学校の先生達に、受け入れてもらえないかもしれないという恐怖からですよ。同性愛者への偏見や差別を知っているからです。

特にひどいのは、同性愛者への偏見を持つ親の発言を聞いて育った子供達が、自分が同性愛者だと気づいた時です。

それでも勇気を出して告白する子供もいますけど、家を追い出されるケースもあると聞きます。ちょっと信じがたいです。こんなことを理由に子供を愛せなくなるんでしょうか。

首相の秘書官が「同性愛カップルを見るのも嫌だ」と発言したり、愛知県議が「気持ちが悪い」と発言したりするところからも、日本にはまだまだそういう認識の人達が大勢いるのだろうと思います。

だから、日本では家族にすら隠し続けるしかないと考える人が多いのでしょう。親を悲しませたくないという理由から隠し続ける人も多いと聞きますけど、愛する子供が同性愛者だと分かると親は悲しむんですか?

それこそ、根深い偏見があることを証明しているようなものです。


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