珍しいアイルランド語の映画です。
今年の映画賞シーズンは、多くのアイルランド人俳優がノミネートされたり受賞したりしています。私は「イニシェリン島の精霊」(The Banshees of Inisherin)というアイルランド映画に興味があって観たいと思っています。
この映画では、何と出演俳優が4人もアカデミー賞にノミネートされているんですよ。作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、そして作曲賞までノミネートされているんですから見逃せません。
ところが、映画の予告編を見たらですね、英語がよく分からなかったんです。アイルランド英語には独特のアクセントがあって。
だから、ストリーミングで英語字幕付きで観れるようになってから観ようと思っています。同じ予告編を何度も観ているうちに聞き取れるようになったので大丈夫かもしれませんけど、やっぱりちょっと自信がないです。
アカデミー賞にノミネートされているアイルランド映画がもう一つあって、それが国際長編映画賞にノミネートされている「ザ・クワイエット・ガール」なんです。
すでに多くの賞を受賞している作品ですが、アカデミー賞にアイルランド語のアイルランド映画がノミネートされたのは初めてだそうですよ。
家庭に恵まれない子供はどこの国にも大勢いるわけなんですが、主人公のおとなしい少女カイトもそんな子供の一人です。
1981年の夏のお話です。
アイルランドの田舎に暮らすこの少女の家族は、両親は不仲、ろくでもない父親は子供達に愛情などありません。子だくさんで経済的に困窮していているのに母親はまた妊娠していて、心身ともに疲れ果てている様子ですから子供に愛情を注ぐゆとりなど無いわけで、子供達は皆んなネグレクト気味です。
この家庭には安心も喜びもありません。緊張と不安があるだけ。
母親の出産を前にして、この内向的な少女のカイトが母親の遠縁の夫婦に預けられるのです。そこで少女は初めて愛情のある家庭というものを経験します。
特に大きな事件があるわけでもなく、ただ少女の毎日の暮らしがゆっくりと描かれ、少女が心を開いていく様子や少女を預かった夫婦の心の変化や、少女と夫婦との間に絆が結ばれていく様子が描かれます。
しかし母親は出産を終え、夏休みも終わり、少女はあの暗い家庭に帰らなければなりません。
最後のシーンでは、涙が出ました。
子供は親を選ぶことが出来ません。この少女のように不幸な子供はいっぱいいるんですよね。でも、ある出会いが子供の人生を変えるきっかけになることもあります。カイトの人生が変わって欲しいと願わずにはいられませんでした。
アイルランドという国は、国民のほとんどが保守的なカトリック教徒のために、離婚も避妊も中絶もできなかったのですが、アイルランド社会も変わって来ています。
今では離婚も中絶も法的に認められていますし、2015年に行われた国民投票で同性婚を認めることが決まった時には、世界中が驚いたものですよ。
保守的と思われていたアイルランド国民の6割以上が同性婚に賛成したんですから。国民投票の結果を受けて、アイルランド議会は性別に関係なく結婚ができるように憲法を変更したんです。
アイルランドが出来るなら自分達の国でも出来ると、多くの活動家は思ったんです、あの時。
長年英国の植民地として苦しみ、19世紀の飢饉では多くの国民が餓死したり海外に移民したりして、国の人口が半分に減ったというのは有名な話です。
ヨーロッパの中でも最貧国の一つだったアイルランドですが、近年どんどん進歩的な国に生まれ変わり、大きな経済成長を遂げています。
そのアイルランドが、まだ不幸だった頃のお話「ザ・クワイエット・ガール」です。機会があればぜひ観てみてください。
オーストラリアにお住まいなら、SBSのオンデマンドで今すぐ観れます。
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