「ホィッスル・ブロウアー(Whistle Blower)」という言葉があります。日本語では通常「内部告発者」と訳されることが多いのですが、職場の不正を通報する人という意味では決して悪者ではありません。
この言葉を聞いて、私が必ず最初に思い浮かべるのは、ジェフリー・ワイガンド博士です。ご存じですか?
ワイガンド博士は、大手タバコメーカーのブラウン・アンド・ウィリアムソン(B&W)社の研究開発担当副社長だった1993年、同社がタバコの健康への影響の研究データを改ざんしたことを暴露しました。まさに内部告発者になったわけです。
アメリカCBSテレビの「60 Minutes(シックスティー・ミニッツ)」という番組で、ワイガンド博士がタバコ産業の不正やニコチンを含めたタバコの毒性や中毒性を告発するインタビューは有名です。
「インサイダー(原題:The Insider)」という映画にもなりました。まだ見たことのない方には、お勧めします。
ワイガンド博士はB&W社を解雇され、収入を絶たれて生活は一変します。B&W社による嫌がらせや家族に対する脅迫に耐えきれず妻が去り、幸せだった生活は崩壊します。しかし、博士は高校の化学の先生として新しいスタートを切りました。
内部告発者は、不正を告発することで大きな犠牲を払う事になる場合が多いです。
私達家族が家族ぐるみで親しくしているEさんは、昨年以来無職です。Eさんは、インダストリアル・エンジニアで、主にメルボルンの鉄道システムや駅の設計に関わってきました。
彼は、ある駅の改装工事の検査に行った時、法律で決められているはずの架線の安全対策が正しく施されていないことに気づきました。駅の工事は、一部で電車を運行しながら同時に工事を進める場合がほとんどですから、電車の利用客を事故から守るために、高圧電線周辺の安全対策が色々と決められているのだそうです。
Eさんは工事現場の責任者と話し合いましたが、その安全対策をしなくても危険ではないとの返事でした。工事を請け負う会社にとっては、その安全対策を実施するための高額な経費の節約という面もありました。
問題の安全対策が重要であると考えるEさんは、更に上の責任者と連絡を取りますが、真剣に取り合ってもらえなかっただけではなく、この問題については無視する態度であったそうです。
安全対策を疎かにする工事会社の方針を問題だと考えたEさんは、工事会社の親会社である大手建設会社に問題を報告しました。その後、Eさんには一切の仕事が来なくなったのです。
鉄道工事関係のあらゆる会社から完全に無視されており、エンジニアとしての仕事はもうできないと言っていました。
ここ数ヶ月は、自宅の改修やペンキ塗りや旅行などをしていたようですが、どうするのだろうと、友人としては心配しています。
うちの夫も、以前勤めていた日系企業で、ある社員に対する上司のパワハラを批判してクビになった経験があるんですよね。パワハラ以外にも社員の権利に関して問題があったらしくてね。
正直者はバカを見る、不正に立ち向かうと叩かれる?
悔しいけど、こういうのが現実なんでしょうか。
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