息子は、ハイスクール卒業後に、ビデオゲームのグラフィックスを作るアーティストになるために専門学校に行って勉強したんですが、そうした産業が盛んではないメルボルンでは就職が上手く行きませんでした。
さらに勉強を続けながらフリーランスのアーティストとして仕事をしていた頃、健康問題が発覚したんです。息子はハイスクールの頃から痔の問題を抱えていたんですよ。しかし、そのことは息子以外の誰も知らなかったんです。
本当に可哀想なことをしたと悔やんでも悔やみきれないのですけど、息子の痔の問題は私達が経済的に困窮していた頃に始まっていたんです。夫も私も精神的な病気で苦しんでいました。うちの娘も不安障害で具合が悪くなりました。
食べて行くことにも困っていた当時、娘の治療費だけは何とか工面しなくてはいけないと苦労している私達を見ていた息子は、自分の痔の問題など話すことが出来なかったそうです。手術をすることになれば高額な費用が必要になると思っていたから。
誰にも言わずに我慢しているうちに次第に悪化して、ついに医者に相談しに行ったのが2019年の12月でした。診察を受けて重症であることが分かった後、私達に教えてくれました。
専門医の診察の結果、クローン病の疑いがあったために何度も検査をすることになりました。やっとクローン病ではないと分かって手術をすることが決まった時に、新型コロナが始まったんですよ。
命にかかわらない手術は中止になり、息子の痔はさらに悪化して、一時は痛みのせいで寝たきり状態になりました。結局は手術費用を全額自己負担して民間の病院で3回も手術を受けることになったんですけど、回復には何年もかかりました。
このことは息子のメンタルヘルスに大きな影響を与えました。自信を失い、不安のために家から出ることすら難しくなっていた時期も長かったんですけど、本当にいろいろな小さな経験の積み重ねと心理カウンセリングのおかげで徐々に回復しました。
車の運転が出来るようになったきっかけは、私が回転する目まいで倒れて入院した時でしたよ。あの時は、引きこもり状態になっていた息子が救急車を呼んでくれたんです。うちの夫はすでに車の運転が出来なくなっていましたから、病院へ行くのに息子が運転するしかなかったんです。
運転が出来るようになり、自分で家から出ることも少しずつ増えて、趣味の山歩きに行ったりもするようになり、アルバイトにも行けるようになりました。
治験のアルバイトでお金を稼ごうとしたこともありました。いつも何か問題が起きて結局治験でお金を稼ぐことは出来ませんでしたが、あれも良い経験だったと思います。
治験を行っている会社の人達と電話で話をしたり、病院まで行って検査を受けたり、知らない人達とのやり取りの中で未知のことに取り組んだことは、全てが良い経験だったと思います。
アルバイトで貯めたお金で、今年は日本旅行に行くことも出来ました。息子の日本旅行は、鹿児島の南にある屋久島からスタートして東京で終了するまで、1ヶ月間の大旅行だったのですよ。そういう事が出来るまでに回復したわけですから、私は嬉しかったです。
旅行から帰って来てすぐに風邪を引いたり腰痛に悩まされたりしていましたが、先週は以前時々やっていたドリルビットを組み立てる内職をしていました。
そんな息子に、正社員として就職するチャンスが巡って来たんです。その仕事をするためには、フォークリフトの免許が必要なんです。それで、息子は免許を取りに行くことを決めて、教習所に申し込みをしたんです。
それを知ったうちの夫も私も、叫びたいくらいに嬉しかったのですよ。
息子はアーティストの仕事も再開して続けたいそうですが、グラフィックスを作る仕事はAI(人工知能)に取って代わられている現状があります。
現実的にアートの仕事だけでは暮らしていけないし旅行も出来ないと分かっていますから、正社員として雇用されるその仕事に挑戦してみようと思ったわけです。
フォークリフト免許は、うちの息子には難しいことではないと思いますから、教習所に行って講習を受ければ取得出来るでしょう。上手く行って欲しいと祈っています。
身体と心の両方が、ここまで回復するのに随分時間がかかりましたけど、棒に振ってしまった20代をこれから取り戻して欲しいというのが、私の希望です。

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