2025年12月18日

「ばけばけ」と小泉セツさん

近頃の我が家は、あまり楽しいことがありません。そんな暮らしの中で、私の最大の楽しみになっているのがNHKの朝ドラ「ばけばけ」です。

NHKの朝ドラを日本国外からどうやって観ているのかと言いますと、ちょっと秘密の方法を使っているのでございますよ。

「ばけばけ」の主人公のおトキちゃんは、「Kwaidan」(怪談)を書いたラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の妻であった小泉セツさんがモデルです。

朝ドラというのは放送時間が15分ですが、ドラマ部分は実質15分もありませんし、この「ばけばけ」は話の進行が遅くてですね、はっきり言わせてもらうとドラマの展開にちょっとイライラしていたんですよ。どうでもいいようなエピソードや不愉快な演出もあったりして。

でも、やっと面白くなって来ました。

最近一番受けたのは、おトキちゃんに恋心を寄せる松江中学の生徒(年齢的には高校生から大学生くらい)と、あるお寺にデートに行った時のエピソードです。今風に言うと「神回」の一つだったでしょう。

幽霊が出ると言われているお寺にデートに行くんですけど、おトキちゃんというのは、今風に言うと「怪談オタク」とも言えるちょっと変わった人です。幽霊とか墓場とか死者の魂とか、多くの人が気味が悪いとか怖いと思うようなことが好きなんです。

そういう人がですね、お寺に着くなり「おる!やっぱりおる!分かる!」と大喜びして、テンション上がりっぱなしなんですけど、おトキちゃんを演じる女優さんが見事なオタクぶりを演じました。

デートに誘った生徒は、おトキちゃんの様子にドン引きして一人でさっさと帰ってしまうんですが、この回はサイコーでしたよ。

そして、先週からは待ちに待った怪談エピソードが始まり、面白くなって来たんです。

ラフカディオ・ハーンをモデルにしたヘブン先生という人物が、毎日金縛りにあうようになります。これについて、おトキちゃんは「ええなあ」とうらやましがったりもします。そして、ヘブン先生はお寺でお祓いを受けることになります。

お祓いが終わった後、そのお寺に伝わる怪談を聞くことになるんですが、これがヘブン先生が怪談にハマるきっかけになるわけです。その怪談を語るお寺の住職を伊武雅刀さんが演じました。本物の住職のようでしたよ。

伊武雅刀さんが「宇宙戦艦ヤマト」のデスラー総統の声をやっていたということを知っている方がどのくらいいらっしゃるか知りませんが、この方の声はやはり素晴らしいし、しゃべりが上手いです。

伊武雅刀さんが語った怪談「水飴を買う女」は、時間の関係でお話が短かったですけど、それは仕方がないですね。

そして今週は、ついに待ちに待った場面がやって来ました。おトキちゃんがヘブン先生に自分は怪談が大大大大大好きで、たくさんの怪談を知っていると告白します。そして、いよいよ、おトキちゃんがヘブン先生に怪談を聞かせることになるのです。

朝ドラは15分ですから、すぐに終わってしまいます。そして、毎回いいところで「明日に続く!」になります。続きが早く観たくてしようがないです。


「ばけばけ」をきっかけに、私はラフカディオ・ハーンが書いた英語版の「Kwaidan」を読んでみました。昔の日本の幽霊話や伝説をまとめた本ですから、英語で読むとかなり違和感がありました。和訳で読んだ方がいい感じです。

それでも、ラフカディオ・ハーンが英語で書き残したおかげで今に伝わる物語がいくつもあるんだそうですね。ラフカディオ・ハーンが書き残せたのは、彼に話して聞かせた小泉セツさんがいたからですよ。彼の執筆活動を支えたこの優れたアシスタントなしでは作品を書き残せなかったんですから、物語も失われていた可能性があります。

セツさんは、ハーンに聞かせる物語を探していろいろリサーチをしたそうですが、「本を見る、いけません。ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考えでなければ、いけません」とハーンが言うので、物語を聞かせるためには「自分の物」にしてしまっている必要があったために、夢にまで見るようになったそうですよ。

そうしたことは、小泉セツさんの回想記「思ひ出の記」に書かれています。「思ひ出の記」は、青空文庫で読むことが出来ますよ。

「ばけばけ」では、アシスタントとしてのおトキちゃんの活躍も描かれるんじゃあないかと期待しています。今のところは、言葉の壁があってヘブンさんは物語を理解するのにかなり苦労していますけど、おトキちゃんの英語学習も描かれるでしょうか。

毎日とても楽しみな「ばけばけ」です。


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