2024年12月5日

遺言執行者エグゼキュター

エグゼキュター(Executor)という言葉をご存知でしょうか。遺言執行者(Executor of a Will)のことです。ある人が亡くなった後に、亡くなった人の希望に従って個人的、財政的、法的なことを管理および処理するよう指名された人のことです。

遺言書の検認、債務等の整理、遺産受取人との連絡など仕事は多岐にわたります。葬儀の手配、住んでいた家の片付けや売却、飼っていたペットの新しい飼い主探しなんていう個人的なこともあるかもしれません。

弁護士に依頼する場合もありますが、一般人の場合は身内の誰かや信頼できる知人に任せることが多いようです。

もちろん、残す遺産が無いとか、死後に管理を誰かに頼まないといけないようなことが無い方には必要ありませんけどね。

うちの夫は、叔父さんから遺言執行者になってくれるよう頼まれたんです。

叔父さんに進行した舌がんが見つかったことは、先月から度々話題にしていますが、放射線治療と抗がん剤治療が始まって3週間目です。治療は6週間続く予定ですが、見つかった時に相当進行していたので切除手術は受けないことになりましたし、喉にもリンパ節にも転移しているんですし、この治療の効果についてはあまり楽観していません。

叔父さん本人もがんが治るとは考えていませんから、余命は長くないという覚悟を決めて準備を始めたということなんですけど。

叔父さんには兄と姉がいますが、兄であるうちの夫の父親は高齢だし、姉は認知症で施設に入っています。息子が一人いますが、その子がまだ幼い頃に離婚して以来会ったことも無くて関係が絶たれている状態です。

ですから、叔父さんにとっては身内の中で最も近くて親しい関係なのがうちの夫なのですよ。だから夫に遺言執行者になってくれと頼んだのです。

うちの夫にとっては初めての経験で、法律を勉強するところから始めなければなりませんが、こういうチャレンジが好きな人ですから快く引き受けたんですけど。

叔父さんの家はメルボルンから片道6時間もかかるような所にあるので、治療中は病院の近くに住んでいます。昨日仕事が休みだったうちの夫は、叔父さんと遺言書について話し合うために行って来ました。

叔父さんは先週会った時に比べるとさらに痩せていて、とても具合が悪そうに見えたそうです。治療の影響で顔の皮がむけていて、まだ口から柔らかい物を食べていますが飲み込むのに大変苦労していたそうですよ。

夫は、叔父さんに会う前に州政府の事務所に行って一般向けに書かれたヴィクトリア州の法律書を買って来たそうです。これから勉強するそうです。


遺言書の法的な効力について私はよく知らないんですけどね、うちの夫の親しい友人Lさんが亡くなった時には、弁護士に作ってもらったちゃんとした遺言書があったのに大変なトラブルになったんですよ。

Lさんは、奥さんがすでにお亡くなりになっていて一人暮らしでした。2人の子供達とは長年険悪な関係だったために全く連絡を取り合っていませんでした。子供達を憎んでいると言ってもいいほど嫌っていて、遺言書では2人の子供達を相続人から排除していたんです。

遺産はLさんが所属していた教会とLさんにとって重要だった慈善団体に渡すことに決めていました。最後の数年を支えた2人の友人(うちの夫ともう一人の友人)にも感謝のしるしとしていくらか残すということでした。

ところが、これに2人の子供達が不服を申し立てましてね。Lさんの家から勝手に物を持ち去ったりもして、遺産相続の調停はもめにもめて裁判をすることになりかけて、教会の方も慈善団体の方もそのようなトラブルに関与したくないということで相続を放棄したので、遺産のほとんどは2人の子供達に渡ったのです。

Lさんは天国でさぞ怒っているだろうと私達は話したものですよ。わざわざ遺言書に明記して希望していたことの真反対な結果になってしまったのですから。あの時は、遺言執行者を頼まれていた知人が大変な苦労をされたんです。

うちの夫の叔父さんも、自分の財産や骨董品等のコレクションを誰に相続して欲しいか、誰に相続して欲しくないか、という希望があるようです。奥さんはまだ健在ですからLさんの時のような揉め事にはならないと思いますが、叔父さんの希望通りの結果になるように夫には頑張ってもらいましょう。

叔父さんが死んだ後のことを話題にするのは、申し訳ないような気持ちになりますよ。死ぬ時に備えるというのは気が重いことだなと私が言いましたら、うちの夫は「そんなことはないよ、これも全て人生の一部だよ」と言いました。

人は生きて、そして死ぬ。あたりまえのこと。夫は身内や知人の死を何度も経験しているせいか、死をもっと身近に感じているようです。


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