皆さん、網膜に「盲点」というのがあることは聞いたことがおありでしょう。視神経の束が接続している部分です。この部分には視細胞が無いので見えませんから盲点と呼ばれるわけですが。
網膜の中心部分には視細胞が密集していて黄色っぽく見えるので「黄斑」と呼ばれる部分がありますが、盲点は黄斑のすぐ近くにあります。
目の中に入ってきた映像が盲点で結ぶと見えないわけですけど、両方の目で見ているとそれぞれの盲点を補うので、視野に見えない部分があることに気づくことはありません。
でも、片方の目だけで見ると見えない部分があることが分かります。理科の授業で実験をしませんでしたか?実験と言うほどのことでもない簡単な方法です。
下の図のように2つのしるしを紙か何かに10センチくらい離して描きます。形でなくてもいいんですよ。文字でも何でもいいです。違いが分かりやすいようにここでは「丸」と「星」を描いています。
片方の目を隠して、隠した目の側のしるしを見てください。例えば、左目を隠したら左側にあるしるし「丸」を右目で見ます。30〜40センチほど離れて見ると「星」も見えているはずです。
「丸」を見ながらゆっくりと顔を近づけて行くと「星」が見えなります。目の中に入ってきた「星」の映像が盲点で結んだから見えなくなったということですね。
うちの夫の眼には、盲点のように何も見えない部分がたくさんあるのですよ。遺伝性の黄斑変性「スターガルト病」で黄斑周辺の細胞が徐々に死んでいるからです。
視細胞が死んでしまった部分が黒い斑点のように写る画像で見ると、両目とも黄斑周辺は黒い斑点だらけです。視細胞が死んでしまった部分では光を感じることも出来ませんから、黒い斑点は盲点と同じなんです。
網膜の中心部分が黒い斑点だらけなんですから、夫の視野の中心部分は黒っぽくなっていて何も見えない状態なんだそうですが、斑点の間にはまだ視細胞が生き残っている部分があるのですよ。
盲点の実験で、見えているものが見えなくなる部分があるというのに似ていますが、見えなくなっている視野の中に見える部分があるのです。焦点を合わせる位置をいろいろ変えることで見える部分を見つけることが出来るのだそうです。
そうした見える部分を駆使して物を見ているというんですから、疲れるでしょうね。まだ文字を読むことは出来ても本を読むのは大変過ぎるというのは、それが理由です。
薄暗いと上手く行きません。十分な明るさがないと見える部分が見つかりません。明る過ぎてもいけません。明るいとちゃんと見えているつもりになるんですよ。ところが、地面にある障害物が見えない部分に入っていると気が付きませんから、つまずいて転んだりするのです。
先月、友人と釣りに行った時にガソリンスタンドのコンクリートの地面に胸から転倒して肋骨を痛めたのは、それが原因でした。
あれ以来、薄暗い時はもちろん明るい昼間でも杖を使うことがあるんですけど、先日叔父さんに会いにメルボルンに行った時には、電車やトラム(路面電車)を利用するので念のためにと杖を持って行きました。
そうしたら、いいことがあったと喜んでいましたよ。
杖を持っているとね、親切にしてくれる人がいるんだそうです。トラムでは席を譲ってもらったそうですよ。
「見えていないことがある」のを除けば健康な夫が席を譲っていただくのはアレなんですけど、せっかく譲ってくださったので座らせてもらったと言っていました。
いつどこで何が見えていないか分からないので、不慣れな場所では不安がありますからね、こういう親切はありがたいことです。
自分も他人に親切にしようと思います。
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