「お母さん、私…(ちょっと元気のない声)今日晩ご飯を食べに帰ってもいい?」
「もちろんいいわよ」
「今日の晩ご飯は何?」
「キチンのエンチラーダ」
「おっ!エンチラーダ!じゃあこれから帰るから」
何かあったんだろうと思いました。高速道路を使えば車で30分くらいのところに住んでいるんですけど、帰りたいと思うようなことがある時にはいつでも帰って来ていいですよ。
ちなみに、エンチラーダというのはメキシコ料理で、肉や野菜やシーフードなどで作った具をトルティーヤで巻いて、トマトソースやチーズをのせてオーブンで焼いたものです。
これから帰ると娘は言いましたが、本当にすぐ帰って来ました。
「何かあったの?」
「ううん、べつに」
「どうかしたのかと思ったわ」
「今日は晩ご飯を作る材料が何もなかったの」
「は?(何だそれ…)」
家に帰って来るよりスーパーに行く方がよっぽど近いですけどね、まあいいですよ。エンチラーダは4人分準備していたし、娘が帰って来ると家族の会話が弾みますから。
昨日は久しぶりにケーキも焼いていたので、エンチラーダとサラダの晩ご飯の後にケーキのデザートも食べて大満足した娘は、うちの夫と一緒に映画も観てからご機嫌で帰って行きました。
何もなくて良かったですけど、実は何かあったのだとしても気分は晴れたでしょう。
臨床心理士になるために大学院で心理学を学んでいる娘は、研修中に行った心理カウンセリングの時間数が規定の時間数に達しましたので、大学院を卒業出来ることが確実になりました。
現在は就職活動中なのですが、今日は一つ面接があるそうです。
これまで3つの求人に応募したそうですが、面接の通知をもらったのは今のところここだけです。
どこかと言いますとね、「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」(Forensic Disability Services)なんですよ。娘は7月からここで研修を行っているんです。犯罪者にメンタルヘルスのサポートや治療を提供するサービスです。
「犯罪者相手の仕事はしないと決めたんじゃあなかったの?」とお母さんは言いました。
娘の話によると、「フォレンジック・ディサビリティー・サービス」にもいろいろ種類があって、施設も各地にいろいろあるんです。応募した仕事は、研修中にスタッフが襲われた医療刑務所みたいな施設での仕事とはかなり異なる内容だそうです。
かなり異なるとは言え、カウンセリングを行うのは犯罪者達であるというのは変わりはないんですよ。殺人犯とか幼児を強姦した幼児性愛者とかもいるんです。
結局それか…
まあ、面接を受けるだけですから。採用されるかどうかは分からないんですし、公立病院や民間のクリニックでの仕事にも応募しているそうですから。
研修を通して犯罪者相手のカウンセリングにも慣れて来て、自分はこの仕事が出来るという自信がついたことと、犯罪者のメンタルヘルスをサポートしたいという意欲があるんだそうですから、やりたい仕事をするのが一番いいですけど。
私だったら選びません、犯罪者を助ける仕事は。
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